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外典 ドラゴンハンター
ep.6 ヒエラルキー
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メロディアナとパーシアスを、それぞれの故国に帰した一行。
シグルズ「ああは言ったが、僻地の領主や半分貴族の力じゃ、世の中変えるにゃ厳しいだろうな。」
シェイミー「それは世界を変えた英雄様の経験談かしら?」
シグルズ「…何も変えられちゃいねぇさ。
革命だの、平等な世界だの、ご大層な目標なんざ俺には無かったし…
俺も半分貴族…只たまたま親父が貴族だったってだけのゴロツキだからな。」
シェイミー「?」
ヴァナヘイム国・オルファス邸…
「…なんだと、義母上に⁉︎
それで無事なのか⁉︎兄上!
……
そうか…
……
俺も父上に進言したが、何も変わらん…」
伝話鳥を通してパーシアスと話すエルキュールに、少年が近づく。
「…兄様?」
エルキュール「‼︎
すまん、切るぞ。」
少年「…エルキュール兄様、母上が何か?」
エルキュール「いや…何でもないんだ、アポロン」
アポロン「…母上はどうして兄様達にだけ冷たいのでしょう?
エルキュール兄様もパーシアス兄様も、強く優しい立派な騎士なのに…
僕は兄様達を誇りに思います。」
エルキュール「そうか…ありがとうな、アポロン。」
「皆さんこんにちは。
世界のニュースをお伝えするアルキュオネ情報局です。
ヴァナヘイム・ムスペルヘイムの国境周辺にて大規模な魔法石の鉱脈が発見され、両国ではその領有権を巡る対立・緊張状態が続いております。」
アースガルド官邸・議長室…
オーディン「…由々しき事態だな。
共に革命を成した同盟国同士が争うなど…」
アリハマ博士「ククク…建前はね…
本音は、いずれかの国が魔法石を大量に保有して増長するのを懸念しているのだろう?」
オーディン「……」
アリハマ博士「まぁ、『共通の敵』が鉱脈を制圧でもすれば、同盟国同士争っている場合ではなくなるのだろうがねぇ…ククク…」
オーディン「……」
ヴァナヘイム・ムスペルヘイムの国境…
パーシアス「やれやれ…いつまで睨めっこが続くんだろうね。
……
ん?」
ふと、大地を複数の影が走り、空を見上げた。
…鳥の群れか?
「……
…‼︎
全員、鉱脈に隠れろォッ‼︎」
パーシアスが叫んだ次の瞬間、無数の矢がヴァナヘイム・ムスペルヘイム両軍の頭上に降り注いだ。
グレゴリウス帝国軍が翼ある獣を駆り、空から襲撃してきたのである。
パーシアスは、逃げ遅れた兵の槍を拾い、渾身の力で空に投げつけた。
「ぐっ…‼︎
…こッ、この…呪われし力から…貧しき人々を解放できるなら…私は喜んで罪を背負い、この命を捧げよう‼︎」
槍に貫かれた帝国魔導師はそう叫ぶと、雷撃魔法によって地上の兵の大半を道連れに力尽き、騎乗していた翼ある鹿の背からパーシアスのもとに墜落する。
「…この呪われし力から貧しき人々を解放する、と言ったね…
君は、自分の末路を知りつつ戦いに身を投じたのかい…?」
パーシアスの問い掛けに帝国魔導師が答える事は無かった。
パーシアス「…敵ながら、その志に敬意を表する。
せめて安らかに眠れ…」
帝国軍の圧倒的な力を前に、ヴァナヘイム・ムスペルヘイム両軍は、鉱脈を放棄し撤退するより他なかった。
その後、鉱脈奪還の為に共同戦線を展開する。
ヴァナヘイム首都・オルファス邸…
アポロン「父上・母上、僕は魔導師になりたいと思います!」
デウス「何だと⁉︎」
ヘラ「何を言い出すのです⁉︎
高貴な血筋である貴方が、下賤な魔導師になど、なってはいけません!」
アポロン「何故ですか⁉︎
あのパーシアス兄様さえ退ける程の力…
友軍のものになれば、きっと兄様達のお役にも立てるはず…!」
「彼奴らの身など、案ずる必要はありません!
…それに、我が国の魔法石は失われました。
新たに発掘した魔法石も…」
ヘラは言いかけて口籠った。
隣国の、僻地とは言え領主の娘を魔導師にしようとし、人質にまでした事が露呈するのを恐れた為である。
ヘラ「いずれにせよ貴方が魔導師になるなど許されませんし、なる事など出来ません!」
その夜…
アポロンは屋敷をこっそり抜け出す。
「ヴァナヘイムに魔法石が無いなら、隣国ムスペルヘイムに…」
腹違いの兄であるパーシアス・エルキュールの教えにより、少年ながら武芸に長けていたアポロンは、異形化奇病を退けながら、1人ムスペルヘイムを目指す。
数日前まで越境を厳しく制限されていた国境だが、帝国という共通の敵を前に再び同盟を結んだ今や、比較的容易に行き来できるようになっていた。
やがて、ムスペルヘイムの魔法供給施設・タルタロスに辿り着く。
だが…
ムスペルヘイム兵「貴族の方を魔導師になど、する訳にはまいりません!」
一目で貴族とわかるアポロンの身なりでは門前払いだった。
そこで、ムスペルヘイム領・エティオフの街にて、自らの衣服を平民の子供のものと交換してもらい着用する。
再びタルタロスを目指すと、複数の馬で巨大な馬車を引く商人に出くわした。
「坊や、1人かい?親御さんは?」
アポロン「…魔導師になる為に、家を出て来ました。」
商人「⁉︎
そいつぁ丁度いい。
これから魔導師候補達を連れて、タルタロスに向かう所さ。
坊やも乗って行きな。」
アポロン「ありがとうございます!」
馬車に乗ると、ぎゅうぎゅう詰めに人が押し込まれていた。
その中の、1人の少女がアポロンに声を掛ける。
「あんた、変わってるね。
名前は?
あたしはデルピュネ。」
アポロン「…アポロンです。」
デルピュネ「人買いに進んでついて来る奴なんて、普通いないよ。」
アポロン「…人買い?」
デルピュネ「知らないの?
貧乏な家の子や親のいない子供が、働き手として売られるんだよ。」
アポロン「そんな…
じゃあ君も、この人達もみんな…?
…でも、魔導師になれば、凄い力を手に入れる事が出来るんだよ!」
デルピュネ「…マドウシ?何それ?」
アポロン「魔法を使える人の事さ。」
デルピュネ「…マホウ?」
アポロン「今でこそ当たり前のようにその力を利用してるけど、革命以前はグレゴリウス王家にしか使えなかったんだ。
魔法の力を使えない暮らしなんて、今じゃ不便で考えられないだろ?」
デルピュネ「…ごめん、何言ってるかわかんない。」
アポロン「えっ?……」
2人の会話が噛み合わないのも無理はなかった。
未だ、魔法の力が供給された生活を送れるのは、貴族など一部の裕福な者達だけなのだ。
気まずい沈黙の果て、馬車はタルタロスに到着する。
タルタロス塔内…
淡い光を放つ宝石の様な鉱物が祭壇に祀られていた。
ムスペルヘイム兵「順番に並んで、あの祭壇に祀られた石に触れてもらう。」
アポロン「あれが…魔法石…?」
一方その頃…
ヴァナヘイムとムスペルヘイムの同盟により、パーシアスは気兼ねなくメロディアナに逢いにエティオフに訪れていた。
そこで、アポロンが着ていたはずの衣服を纏った子供を見かける。
パーシアス「坊や、素敵な服を着ているね。
それ、どうしたんだい?」
子供「交換してもらったんだ。
その子、『貴族のカッコじゃマドウシになれないから』だって。」
パーシアス「魔導師⁉︎」
その時、パーシアスの肩の上で伝話鳥が鳴いた。
「兄上、大変だ!
アポロンが家出した!
何でも、魔導師になりたいとかゴネてたらしいぞ。」
それは、エルキュールからの連絡だった。
パーシアス「そういう事か…!
エルキュール、大至急エティオフに来れるかい?
…それと、彼らにも連絡しよう。」
かくしてエティオフに、エルキュールと、シグルズ達一行が呼び出された。
エルキュール「アポロンのやつ、なんで魔導師なんかになりたいなんて…」
メロディアナ「…きっと、お兄様達が大好きなのですね…
だから力になりたいと思って…」
パーシアス「ヴァナヘイムには、もはや魔法石が無い…だから遥々ここまで来た訳か…」
メロディアナ「だとすれば、行き先はきっとタルタロス…ムスペルヘイム国の魔法供給施設です。」
エルキュール「よし、行こう!」
シグルズ「…待ちな、お前らは留守番だ。」
エルキュール「馬鹿言え、留守番などしてられるか!」
パーシアス「…いや、その通りだ。
ここは、彼らにお願いしよう。
その為に呼んだんだ。」
エルキュール「兄上⁉︎」
シェイミー「そうよ。
せっかく国交が正常化したのに、貴方達が賊に加担して魔法石を奪ったりしたら、それこそ戦争のきっかけになるでしょ?」
パーシアス「そう言う事だ。
(シグルズに自分の鉾槍・ハルパーを渡す)
これを持って行くといい。
君達は弟の顔を知らないだろうけど、これを持ってれば、向こうが気付くはずだ。
弟を…アポロンを頼む…!」
シグルズ「ああ、任せろ。」
再びタルタロス塔内…
祭壇に向かう列は徐々に進み、アポロンの前に並んだデルピュネが魔法石の前に立った。
兵士「この石に触れながら、燃え盛る炎を想像してみろ。」
デルピュネが魔法石に触れると、魔法石は激しい炎を放った。
炎は、上部に設置されたダクトに吸い込まれる。
デルピュネ「なっ!…何コレ…?」
アポロン「すっ…凄い…!」
兵士「今度は石に触れずに、手をかざして同じ様に念じてみろ。」
デルピュネが念じると、彼女の掌から激しい炎が放たれ、再びダクトに吸収された。
兵士「ほぅ…!
お前、魔導師の素質があるな。」
デルピュネ「…じゃあ、これが…マホウってやつ…⁉︎」
だが次の瞬間、デルピュネは激しい頭痛に襲われて頭を抱え、その場に膝をつき身体が震えだす。
アポロン「デルピュネ⁉︎」
兵士「いかん…魔力は強大だが耐性が及ばん様だな。
おい、連れて行け!」
アポロン「一体どこへ⁉︎
大丈夫なんですか⁉︎」
兵士「おい待て小僧、次はお前の番だぞ!」
デルピュネの身を案じたアポロンだったが、兵士に制止された。
その時である…
兵士「侵入者だ!
手空きの者は正面入口に来てくれ!」
タルタロス正面入口…
シグルズ「さて、今回はウダウダやってる暇は無ぇ。
正面突破で行くぜ!」
シェイミー「…だから、なんで楽しそうなの?」
シグルズ・メリュジーヌ・シェイミーの3人は、ムスペルヘイム兵を蹴散らしながら塔内を探索し、少年と出会う。
少年「それは…パーシアス兄様のハルパー?」
シグルズ「じゃあ、お前がアポロンか?
俺様はシグルズ=ヴォルスング。」
アポロン「⁉︎
兄様達が言ってた、革命戦の英雄⁉︎」
シグルズ「その兄貴達に頼まれて、お前を探しに来たんだ。」
シェイミー「それはそうと貴方、魔法石に触ってないわよね?」
アポロン「僕はまだ…でも、デルピュネって女の子が魔法石に触れて…魔法を使ったら突然震えだして…どこかに連れて行かれたんです!」
メリュジーヌ「…異形化奇病化の前兆が現れて隔離されたか…」
アポロン「異形化奇病⁉︎」
メリュジーヌ「そうじゃ…異形化奇病とは、汝がならんとした魔導師の成れの果てぞ。」
アポロン「そんな…魔導師が…異形化奇病に…⁉︎」
アポロンはデルピュネを探すべく走り出した。
「ちょッ…待てよ!」
シグルズ達も後を追う。
やがて、堅牢な扉が幾つもあるフロアに辿り着き、ムスペルヘイム兵の死体を発見した。
アポロン「‼︎
この人は…デルピュネを連れて行った…」
シグルズ「…どうやら、そいつに殺られたみてーだな。」
シグルズの視線の先には少女が居た。
だが、異形化し、半身が竜の様な姿になっている。
シグルズは剣を構えた。
だが、その前にアポロンが割って入る。
「待って、あの子がデルピュネです!」
メリュジーヌ「…だが、もはや異形化奇病じゃ。」
シェイミー「…可哀想だけど、ああなったらもう二度と元には戻らないわ。」
アポロン「そんな…!」
デルピュネは、自分を庇うアポロンに背後から襲いかかった。
「危ねぇ!」
シグルズはアポロンを庇って傷を負う。
デルピュネは勢いそのまま逃走した。
アポロン「だっ…大丈夫ですか⁉︎」
シグルズ「ほんのかすり傷だ。
…ンな事より、聞け坊主。
俺らの仲間に、お前と同じ貴族のボンボンが居てな…
ちょうど今のお前みてーに異形化奇病になりかけた奴を庇ったんだが、庇った相手に殺られちまった…」
メリュジーヌ(…死んでおらぬがな。)
「感情論でくたばる奴なんざ、そこまでの器だ。
けどな…オルファス家を背負って立つお前には、生きてやるべき事があんだろうが。
誰も異形化奇病に殺させねぇ為に…
誰も異形化奇病にならねぇ世の中にする為によ。
そいつはたぶん、兄貴達にも出来ねぇ…お前にしか出来ねぇ事だぜ。」
シグルズはそう言って、ハルパーをアポロンに渡す。
アポロン「兄様達にも出来ない事を…この僕が…⁉︎」
その時である。
周囲の、堅牢に見えた扉が開き、その中から続々と異形化奇病が姿を現わした。
アポロン「異形化奇病がこんなに…⁉︎」
シェイミー「発症した魔導師達の隔離室だったのね。」
シグルズ「さっきの奴が鍵を破壊したみてーだな。」
襲い来る異形化奇病を返り討ちにするが、その隙に逃げたものも多数いた。
その戦いにおいて、メリュジーヌの能力を目の当たりにしたアポロンは、大いに驚く。
「君は、異形化奇病になっても元に戻れるの⁉︎
一体どうやって…⁉︎」
メリュジーヌ「異形化奇病ではない。
我は竜…自然界の力を司る、太古の種族の生き残りじゃ。
そして魔法石とは、我が一族の魂が封じ込められし亡骸…
我らはその魂を解放し、力を受け継ぐべく旅をしておる。」
アポロン「そんな…魔法石の正体が…竜の亡骸…⁉︎
竜だなんて…おとぎ話の中だけの生き物かと思ってた…」
塔内の異形化奇病を駆逐しつつ、魔法石の祀られた祭壇に辿り着く。
シェイミー「あの子が竜の力を受け継ぐには、その竜と戦わなきゃいけないの。
貴方は危ないから下がってなさい。」
アポロン「いえ、僕も武勲を誇る騎士の一族・オルファス家の男ですから!」
シグルズ「ククク…言うねぇ。
じゃあ俺様が特別に教えてやる。
戦時中、命を懸けて~なんて言う奴はごまんと居たが、大概が何も成し遂げられずに死んでいった。
何かを成し遂げたのは、見苦しく足掻いても生き延びた奴だ。
命を賭ける覚悟なんざ糞食らえ、生き延びる為に何でもする覚悟を持て。
それが強くなる秘訣だ。」
アポロン「は…はいッ!」
メリュジーヌ「では、始めるぞ。
…忌まわしきアグエル文明により封印されし我が眷族よ…
その戒めを今、解き放たん。」
すると魔法石は砕け散って光の粒子となり、大蛇の姿を象った。
「我はピュトン…
我が戒めを解き放てし眷族よ…
汝が力を我に示せば、盟約に従い我が力を授けん。」
メリュジーヌ「心せよ、あれに巻かれれば動きを封じられる。」
シェイミー「…でしょうね。」
メリュジーヌ「単に物理的に、という事ではないぞ。
あれの身体が描く円の内側が、魔力による呪縛の結界となる。
皆が結界に封じられれば、全滅は免れん。」
シグルズ「なら、俺が囮になる。
お前らなら全員、間合いの外から攻撃できんだろ?」
アポロン「そんな、危険過ぎます!
何があっても生き延びろって、自分で言ったじゃないですか!」
シグルズ「悪りぃな、俺様はスリルが楽しくて仕方ねぇのさ。
ま、そう簡単には死なねぇがな!」
「ふむ…ならばこれを…
盟約に従い受け継ぎし双頭蛇の力と、其を振るうに相応しき姿を解き放たん…」
そう唱えたメリュジーヌは双頭の蛇へと姿を変え、光輝く息吹をシグルズに吹きかけた。
シグルズ「お?身体が軽りぃ…この馬鹿デケェ剣も…!」
ピュトンはその巨体に見合わぬ素早さで、1人前衛に立つシグルズを結界に取り込もうするが、後衛の援護と相まって、辛うじてこれを回避。
ピュトンの強靭な体力を、徐々にだが着実に削り取っていき、やがて…
「見事なり…盟約に従い我が力を汝に授けん。」
ピュトンはそう言うと、砕け散って無数の光の粒子となり、メリュジーヌに吸収された。
かくしてメリュジーヌは呪縛魔法の力を得る。
塔の出口付近…
おびただしい数の、兵士と魔導師の屍が転がっている。
その先ではデルピュネが暴れており、生き残った兵士達が外への経路を死守するが、今にも突破されようとしていた。
「もうこれ以上、君の手を汚させはしない…!」
アポロンはシグルズ達と共に戦いを挑み、その果てに、手にした鉾槍でデルピュネを貫く。
その場に崩れ落ちるデルピュネを抱き止めたアポロンは、泣きながら言った。
「ごめん…
僕たち貴族が贅沢に暮らす影で、君達は…こんな…」
アポロンの腕の中でデルピュネは、灰となって風に消えた。
タルタロスの塔を脱出し、パーシアス・エルキュール達と合流した一行。
エルキュール「アポロン、無事だったか!」
アポロン「…僕は大丈夫です…
でも…大勢の人が命を落としました…
僕たち貴族のせいで…」
パーシアス「…そうか…お前も見てしまったんだね…
魔法の正体を…魔導師達の行き着く先を…」
アポロン「…兄様…!
僕は…世界に魔法を使う事の怖さを伝えたい…!
貴族の為に魔導師に…異形化奇病にされる人のいない、本当に平等な世界を築きたい…!
だから兄様…僕に力を貸してください!」
エルキュール「あぁ、もちろんだ!」
パーシアス「私とエルキュールだけでは出来そうになかったけど、お前なら…!」
続く…
シグルズ「ああは言ったが、僻地の領主や半分貴族の力じゃ、世の中変えるにゃ厳しいだろうな。」
シェイミー「それは世界を変えた英雄様の経験談かしら?」
シグルズ「…何も変えられちゃいねぇさ。
革命だの、平等な世界だの、ご大層な目標なんざ俺には無かったし…
俺も半分貴族…只たまたま親父が貴族だったってだけのゴロツキだからな。」
シェイミー「?」
ヴァナヘイム国・オルファス邸…
「…なんだと、義母上に⁉︎
それで無事なのか⁉︎兄上!
……
そうか…
……
俺も父上に進言したが、何も変わらん…」
伝話鳥を通してパーシアスと話すエルキュールに、少年が近づく。
「…兄様?」
エルキュール「‼︎
すまん、切るぞ。」
少年「…エルキュール兄様、母上が何か?」
エルキュール「いや…何でもないんだ、アポロン」
アポロン「…母上はどうして兄様達にだけ冷たいのでしょう?
エルキュール兄様もパーシアス兄様も、強く優しい立派な騎士なのに…
僕は兄様達を誇りに思います。」
エルキュール「そうか…ありがとうな、アポロン。」
「皆さんこんにちは。
世界のニュースをお伝えするアルキュオネ情報局です。
ヴァナヘイム・ムスペルヘイムの国境周辺にて大規模な魔法石の鉱脈が発見され、両国ではその領有権を巡る対立・緊張状態が続いております。」
アースガルド官邸・議長室…
オーディン「…由々しき事態だな。
共に革命を成した同盟国同士が争うなど…」
アリハマ博士「ククク…建前はね…
本音は、いずれかの国が魔法石を大量に保有して増長するのを懸念しているのだろう?」
オーディン「……」
アリハマ博士「まぁ、『共通の敵』が鉱脈を制圧でもすれば、同盟国同士争っている場合ではなくなるのだろうがねぇ…ククク…」
オーディン「……」
ヴァナヘイム・ムスペルヘイムの国境…
パーシアス「やれやれ…いつまで睨めっこが続くんだろうね。
……
ん?」
ふと、大地を複数の影が走り、空を見上げた。
…鳥の群れか?
「……
…‼︎
全員、鉱脈に隠れろォッ‼︎」
パーシアスが叫んだ次の瞬間、無数の矢がヴァナヘイム・ムスペルヘイム両軍の頭上に降り注いだ。
グレゴリウス帝国軍が翼ある獣を駆り、空から襲撃してきたのである。
パーシアスは、逃げ遅れた兵の槍を拾い、渾身の力で空に投げつけた。
「ぐっ…‼︎
…こッ、この…呪われし力から…貧しき人々を解放できるなら…私は喜んで罪を背負い、この命を捧げよう‼︎」
槍に貫かれた帝国魔導師はそう叫ぶと、雷撃魔法によって地上の兵の大半を道連れに力尽き、騎乗していた翼ある鹿の背からパーシアスのもとに墜落する。
「…この呪われし力から貧しき人々を解放する、と言ったね…
君は、自分の末路を知りつつ戦いに身を投じたのかい…?」
パーシアスの問い掛けに帝国魔導師が答える事は無かった。
パーシアス「…敵ながら、その志に敬意を表する。
せめて安らかに眠れ…」
帝国軍の圧倒的な力を前に、ヴァナヘイム・ムスペルヘイム両軍は、鉱脈を放棄し撤退するより他なかった。
その後、鉱脈奪還の為に共同戦線を展開する。
ヴァナヘイム首都・オルファス邸…
アポロン「父上・母上、僕は魔導師になりたいと思います!」
デウス「何だと⁉︎」
ヘラ「何を言い出すのです⁉︎
高貴な血筋である貴方が、下賤な魔導師になど、なってはいけません!」
アポロン「何故ですか⁉︎
あのパーシアス兄様さえ退ける程の力…
友軍のものになれば、きっと兄様達のお役にも立てるはず…!」
「彼奴らの身など、案ずる必要はありません!
…それに、我が国の魔法石は失われました。
新たに発掘した魔法石も…」
ヘラは言いかけて口籠った。
隣国の、僻地とは言え領主の娘を魔導師にしようとし、人質にまでした事が露呈するのを恐れた為である。
ヘラ「いずれにせよ貴方が魔導師になるなど許されませんし、なる事など出来ません!」
その夜…
アポロンは屋敷をこっそり抜け出す。
「ヴァナヘイムに魔法石が無いなら、隣国ムスペルヘイムに…」
腹違いの兄であるパーシアス・エルキュールの教えにより、少年ながら武芸に長けていたアポロンは、異形化奇病を退けながら、1人ムスペルヘイムを目指す。
数日前まで越境を厳しく制限されていた国境だが、帝国という共通の敵を前に再び同盟を結んだ今や、比較的容易に行き来できるようになっていた。
やがて、ムスペルヘイムの魔法供給施設・タルタロスに辿り着く。
だが…
ムスペルヘイム兵「貴族の方を魔導師になど、する訳にはまいりません!」
一目で貴族とわかるアポロンの身なりでは門前払いだった。
そこで、ムスペルヘイム領・エティオフの街にて、自らの衣服を平民の子供のものと交換してもらい着用する。
再びタルタロスを目指すと、複数の馬で巨大な馬車を引く商人に出くわした。
「坊や、1人かい?親御さんは?」
アポロン「…魔導師になる為に、家を出て来ました。」
商人「⁉︎
そいつぁ丁度いい。
これから魔導師候補達を連れて、タルタロスに向かう所さ。
坊やも乗って行きな。」
アポロン「ありがとうございます!」
馬車に乗ると、ぎゅうぎゅう詰めに人が押し込まれていた。
その中の、1人の少女がアポロンに声を掛ける。
「あんた、変わってるね。
名前は?
あたしはデルピュネ。」
アポロン「…アポロンです。」
デルピュネ「人買いに進んでついて来る奴なんて、普通いないよ。」
アポロン「…人買い?」
デルピュネ「知らないの?
貧乏な家の子や親のいない子供が、働き手として売られるんだよ。」
アポロン「そんな…
じゃあ君も、この人達もみんな…?
…でも、魔導師になれば、凄い力を手に入れる事が出来るんだよ!」
デルピュネ「…マドウシ?何それ?」
アポロン「魔法を使える人の事さ。」
デルピュネ「…マホウ?」
アポロン「今でこそ当たり前のようにその力を利用してるけど、革命以前はグレゴリウス王家にしか使えなかったんだ。
魔法の力を使えない暮らしなんて、今じゃ不便で考えられないだろ?」
デルピュネ「…ごめん、何言ってるかわかんない。」
アポロン「えっ?……」
2人の会話が噛み合わないのも無理はなかった。
未だ、魔法の力が供給された生活を送れるのは、貴族など一部の裕福な者達だけなのだ。
気まずい沈黙の果て、馬車はタルタロスに到着する。
タルタロス塔内…
淡い光を放つ宝石の様な鉱物が祭壇に祀られていた。
ムスペルヘイム兵「順番に並んで、あの祭壇に祀られた石に触れてもらう。」
アポロン「あれが…魔法石…?」
一方その頃…
ヴァナヘイムとムスペルヘイムの同盟により、パーシアスは気兼ねなくメロディアナに逢いにエティオフに訪れていた。
そこで、アポロンが着ていたはずの衣服を纏った子供を見かける。
パーシアス「坊や、素敵な服を着ているね。
それ、どうしたんだい?」
子供「交換してもらったんだ。
その子、『貴族のカッコじゃマドウシになれないから』だって。」
パーシアス「魔導師⁉︎」
その時、パーシアスの肩の上で伝話鳥が鳴いた。
「兄上、大変だ!
アポロンが家出した!
何でも、魔導師になりたいとかゴネてたらしいぞ。」
それは、エルキュールからの連絡だった。
パーシアス「そういう事か…!
エルキュール、大至急エティオフに来れるかい?
…それと、彼らにも連絡しよう。」
かくしてエティオフに、エルキュールと、シグルズ達一行が呼び出された。
エルキュール「アポロンのやつ、なんで魔導師なんかになりたいなんて…」
メロディアナ「…きっと、お兄様達が大好きなのですね…
だから力になりたいと思って…」
パーシアス「ヴァナヘイムには、もはや魔法石が無い…だから遥々ここまで来た訳か…」
メロディアナ「だとすれば、行き先はきっとタルタロス…ムスペルヘイム国の魔法供給施設です。」
エルキュール「よし、行こう!」
シグルズ「…待ちな、お前らは留守番だ。」
エルキュール「馬鹿言え、留守番などしてられるか!」
パーシアス「…いや、その通りだ。
ここは、彼らにお願いしよう。
その為に呼んだんだ。」
エルキュール「兄上⁉︎」
シェイミー「そうよ。
せっかく国交が正常化したのに、貴方達が賊に加担して魔法石を奪ったりしたら、それこそ戦争のきっかけになるでしょ?」
パーシアス「そう言う事だ。
(シグルズに自分の鉾槍・ハルパーを渡す)
これを持って行くといい。
君達は弟の顔を知らないだろうけど、これを持ってれば、向こうが気付くはずだ。
弟を…アポロンを頼む…!」
シグルズ「ああ、任せろ。」
再びタルタロス塔内…
祭壇に向かう列は徐々に進み、アポロンの前に並んだデルピュネが魔法石の前に立った。
兵士「この石に触れながら、燃え盛る炎を想像してみろ。」
デルピュネが魔法石に触れると、魔法石は激しい炎を放った。
炎は、上部に設置されたダクトに吸い込まれる。
デルピュネ「なっ!…何コレ…?」
アポロン「すっ…凄い…!」
兵士「今度は石に触れずに、手をかざして同じ様に念じてみろ。」
デルピュネが念じると、彼女の掌から激しい炎が放たれ、再びダクトに吸収された。
兵士「ほぅ…!
お前、魔導師の素質があるな。」
デルピュネ「…じゃあ、これが…マホウってやつ…⁉︎」
だが次の瞬間、デルピュネは激しい頭痛に襲われて頭を抱え、その場に膝をつき身体が震えだす。
アポロン「デルピュネ⁉︎」
兵士「いかん…魔力は強大だが耐性が及ばん様だな。
おい、連れて行け!」
アポロン「一体どこへ⁉︎
大丈夫なんですか⁉︎」
兵士「おい待て小僧、次はお前の番だぞ!」
デルピュネの身を案じたアポロンだったが、兵士に制止された。
その時である…
兵士「侵入者だ!
手空きの者は正面入口に来てくれ!」
タルタロス正面入口…
シグルズ「さて、今回はウダウダやってる暇は無ぇ。
正面突破で行くぜ!」
シェイミー「…だから、なんで楽しそうなの?」
シグルズ・メリュジーヌ・シェイミーの3人は、ムスペルヘイム兵を蹴散らしながら塔内を探索し、少年と出会う。
少年「それは…パーシアス兄様のハルパー?」
シグルズ「じゃあ、お前がアポロンか?
俺様はシグルズ=ヴォルスング。」
アポロン「⁉︎
兄様達が言ってた、革命戦の英雄⁉︎」
シグルズ「その兄貴達に頼まれて、お前を探しに来たんだ。」
シェイミー「それはそうと貴方、魔法石に触ってないわよね?」
アポロン「僕はまだ…でも、デルピュネって女の子が魔法石に触れて…魔法を使ったら突然震えだして…どこかに連れて行かれたんです!」
メリュジーヌ「…異形化奇病化の前兆が現れて隔離されたか…」
アポロン「異形化奇病⁉︎」
メリュジーヌ「そうじゃ…異形化奇病とは、汝がならんとした魔導師の成れの果てぞ。」
アポロン「そんな…魔導師が…異形化奇病に…⁉︎」
アポロンはデルピュネを探すべく走り出した。
「ちょッ…待てよ!」
シグルズ達も後を追う。
やがて、堅牢な扉が幾つもあるフロアに辿り着き、ムスペルヘイム兵の死体を発見した。
アポロン「‼︎
この人は…デルピュネを連れて行った…」
シグルズ「…どうやら、そいつに殺られたみてーだな。」
シグルズの視線の先には少女が居た。
だが、異形化し、半身が竜の様な姿になっている。
シグルズは剣を構えた。
だが、その前にアポロンが割って入る。
「待って、あの子がデルピュネです!」
メリュジーヌ「…だが、もはや異形化奇病じゃ。」
シェイミー「…可哀想だけど、ああなったらもう二度と元には戻らないわ。」
アポロン「そんな…!」
デルピュネは、自分を庇うアポロンに背後から襲いかかった。
「危ねぇ!」
シグルズはアポロンを庇って傷を負う。
デルピュネは勢いそのまま逃走した。
アポロン「だっ…大丈夫ですか⁉︎」
シグルズ「ほんのかすり傷だ。
…ンな事より、聞け坊主。
俺らの仲間に、お前と同じ貴族のボンボンが居てな…
ちょうど今のお前みてーに異形化奇病になりかけた奴を庇ったんだが、庇った相手に殺られちまった…」
メリュジーヌ(…死んでおらぬがな。)
「感情論でくたばる奴なんざ、そこまでの器だ。
けどな…オルファス家を背負って立つお前には、生きてやるべき事があんだろうが。
誰も異形化奇病に殺させねぇ為に…
誰も異形化奇病にならねぇ世の中にする為によ。
そいつはたぶん、兄貴達にも出来ねぇ…お前にしか出来ねぇ事だぜ。」
シグルズはそう言って、ハルパーをアポロンに渡す。
アポロン「兄様達にも出来ない事を…この僕が…⁉︎」
その時である。
周囲の、堅牢に見えた扉が開き、その中から続々と異形化奇病が姿を現わした。
アポロン「異形化奇病がこんなに…⁉︎」
シェイミー「発症した魔導師達の隔離室だったのね。」
シグルズ「さっきの奴が鍵を破壊したみてーだな。」
襲い来る異形化奇病を返り討ちにするが、その隙に逃げたものも多数いた。
その戦いにおいて、メリュジーヌの能力を目の当たりにしたアポロンは、大いに驚く。
「君は、異形化奇病になっても元に戻れるの⁉︎
一体どうやって…⁉︎」
メリュジーヌ「異形化奇病ではない。
我は竜…自然界の力を司る、太古の種族の生き残りじゃ。
そして魔法石とは、我が一族の魂が封じ込められし亡骸…
我らはその魂を解放し、力を受け継ぐべく旅をしておる。」
アポロン「そんな…魔法石の正体が…竜の亡骸…⁉︎
竜だなんて…おとぎ話の中だけの生き物かと思ってた…」
塔内の異形化奇病を駆逐しつつ、魔法石の祀られた祭壇に辿り着く。
シェイミー「あの子が竜の力を受け継ぐには、その竜と戦わなきゃいけないの。
貴方は危ないから下がってなさい。」
アポロン「いえ、僕も武勲を誇る騎士の一族・オルファス家の男ですから!」
シグルズ「ククク…言うねぇ。
じゃあ俺様が特別に教えてやる。
戦時中、命を懸けて~なんて言う奴はごまんと居たが、大概が何も成し遂げられずに死んでいった。
何かを成し遂げたのは、見苦しく足掻いても生き延びた奴だ。
命を賭ける覚悟なんざ糞食らえ、生き延びる為に何でもする覚悟を持て。
それが強くなる秘訣だ。」
アポロン「は…はいッ!」
メリュジーヌ「では、始めるぞ。
…忌まわしきアグエル文明により封印されし我が眷族よ…
その戒めを今、解き放たん。」
すると魔法石は砕け散って光の粒子となり、大蛇の姿を象った。
「我はピュトン…
我が戒めを解き放てし眷族よ…
汝が力を我に示せば、盟約に従い我が力を授けん。」
メリュジーヌ「心せよ、あれに巻かれれば動きを封じられる。」
シェイミー「…でしょうね。」
メリュジーヌ「単に物理的に、という事ではないぞ。
あれの身体が描く円の内側が、魔力による呪縛の結界となる。
皆が結界に封じられれば、全滅は免れん。」
シグルズ「なら、俺が囮になる。
お前らなら全員、間合いの外から攻撃できんだろ?」
アポロン「そんな、危険過ぎます!
何があっても生き延びろって、自分で言ったじゃないですか!」
シグルズ「悪りぃな、俺様はスリルが楽しくて仕方ねぇのさ。
ま、そう簡単には死なねぇがな!」
「ふむ…ならばこれを…
盟約に従い受け継ぎし双頭蛇の力と、其を振るうに相応しき姿を解き放たん…」
そう唱えたメリュジーヌは双頭の蛇へと姿を変え、光輝く息吹をシグルズに吹きかけた。
シグルズ「お?身体が軽りぃ…この馬鹿デケェ剣も…!」
ピュトンはその巨体に見合わぬ素早さで、1人前衛に立つシグルズを結界に取り込もうするが、後衛の援護と相まって、辛うじてこれを回避。
ピュトンの強靭な体力を、徐々にだが着実に削り取っていき、やがて…
「見事なり…盟約に従い我が力を汝に授けん。」
ピュトンはそう言うと、砕け散って無数の光の粒子となり、メリュジーヌに吸収された。
かくしてメリュジーヌは呪縛魔法の力を得る。
塔の出口付近…
おびただしい数の、兵士と魔導師の屍が転がっている。
その先ではデルピュネが暴れており、生き残った兵士達が外への経路を死守するが、今にも突破されようとしていた。
「もうこれ以上、君の手を汚させはしない…!」
アポロンはシグルズ達と共に戦いを挑み、その果てに、手にした鉾槍でデルピュネを貫く。
その場に崩れ落ちるデルピュネを抱き止めたアポロンは、泣きながら言った。
「ごめん…
僕たち貴族が贅沢に暮らす影で、君達は…こんな…」
アポロンの腕の中でデルピュネは、灰となって風に消えた。
タルタロスの塔を脱出し、パーシアス・エルキュール達と合流した一行。
エルキュール「アポロン、無事だったか!」
アポロン「…僕は大丈夫です…
でも…大勢の人が命を落としました…
僕たち貴族のせいで…」
パーシアス「…そうか…お前も見てしまったんだね…
魔法の正体を…魔導師達の行き着く先を…」
アポロン「…兄様…!
僕は…世界に魔法を使う事の怖さを伝えたい…!
貴族の為に魔導師に…異形化奇病にされる人のいない、本当に平等な世界を築きたい…!
だから兄様…僕に力を貸してください!」
エルキュール「あぁ、もちろんだ!」
パーシアス「私とエルキュールだけでは出来そうになかったけど、お前なら…!」
続く…
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