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お祝い
しおりを挟む反省から立ち直れないのか、松にしがみついたまま離れなかったが、いつのまにか寝てしまった。
テン爺も見つかったことを知ると「今日はもうくんな!でも明日もやるから来いよ!」と言ってくれた。
家の布団に転がしても起きない。
安心するが、2人顔を合わせると涙が込み上げて来た。
「よかった、ほんとよかった…」
「牡丹、ごめん…」
「ううん、松のせいじゃないわ… この辺りから出たことがないから、行かないって思ってた私のせいよ…」
「それも違うよ、これから気をつけよう、しっかり行っちゃいけないところ教育して、そうしたら桜はいい子だから、大丈夫だよ」
「そうね…しっかりしなきゃね…」
「…桜の誕生日なのに、大変だったな……あれ、ご馳走作ろうとしてたんだろ?」
台所を指さすと、切かけの野菜達が無造作に置かれていた。
「え、えぇ、今日くらいはって思って…」
「俺も手伝うよ、起きたらびっくりさせてやろう」
「…ありがとう」
2人で台所に並び、ご馳走づくりに励んだ。
暗い気持ちだったが、松が元気づけようと牡丹にたくさん話しかけて準備を進めた。
「…ぱぱ…まま…」
2時間ほどして日が傾き始めていた頃、申し訳なさそうに目を覚ました。
「お! おはよう桜」
「おはよ…」
見渡すと、花で飾り付けられたちゃぶ台の上にご馳走がたくさん並んでいて目がすぐに輝いた。
「ごちそ! なんで??」
「桜、お誕生日、おめでとう!」
「桜は一歳になったんだよ! おめでとー!」
牡丹と松はすっかり元気になり、桜をお祝いした。
「いっさい…!」
「そう! おめでとう桜!」
「いっさい! ごちそう! たべたいー!」
布団から勢いよく出て「はやく、はやくたべよ!」と、尻尾をブンブン振って喜んでいるところを見ると、2人はほっとしたのだった。
「はい、じゃあいただきますしましょ!」
「あい! いただきまーす!」
「いただきます!」
言い終わるとすぐにご馳走にがっついた。
「おいし!」
満面の笑みで平らげていくと、急に真面目な顔になった。
「あのね、ぱぱ、まま、さくら、もうぜったい、いかないからね、あんしんしてね!」
「うん、桜はいい子だって分かってるから、大丈夫だよ」
「そうね、学んで大人になっていくのよ、だから大丈夫!」
「うん! まなぶ! おいらんなる!」
「その勢いよ!」
そう言うと、残りのご飯をぺろっと食べ切りパーティーは終了した。
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