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後編
「…そう、分かった。お幸せに」
私はそれだけ答える。それを聞いた彼らは喜んで、抱き合っていた。
嬉しそうだね。私とそんなに別れたかったの?私よりもその人がいいの?
出会った頃はあんなに優しくしてくれたのに。一人で生きようと決意した私が心配だからって、何度も何度も関わってきたくせに。
面白い映画の話題で盛り上がったこともあったのに、運命の人を見つけた途端、私は用なしなの?
…もう、いいや
「どうしたの?そんなに慌てて」
私は喜び合ってる二人から離れて、鉄柵に腰掛けた。すると二人はこっちに気が付いて、危ないよって近寄ってくる。
「こないで」
でも私は止めた。近づかないでほしかったからだ。さっきまでイチャついてたのに、今では顔が青い。それが面白くて、少し笑っちゃった。
もう疲れちゃった。この世界で男同士の恋愛を成就させるための当て馬でいるのは
こんな世界でも、私を見捨てないで、そばにいてくれる人がいるかもしれないって思って、今まで頑張ってきたけど、もう疲れた。
BLの世界で生きてる女性たちは、ほとんどがレズとか腐女子になるらしいけど、私は同性愛者になれないし、腐女子にもなれなかった。
同じ女性と付き合ってみたことがあったけど、どうしても恋愛対象として見れなくて、うまくいかなかった。
腐女子になればこの世界も楽しく過ごせると思って、BL作品をいくつか試しに見てみたけど、面白いとか、尊いとか思えないし、ハマることはなかった。腐女子のサークルに参加してみたけれど、何が面白いのか分からないし話についてこれずにすぐやめた。
BL漫画に登場する女キャラは、元恋人だった男に振られた後、腐女子になって同人誌書いたりとかするらしいけど、私はそんな気は一切起きなかった。
過去を振り返ってぼーっとしていると、何をするつもりだって、婚約者…いや、元婚約者が言う。
「落ちるつもり」
それに対して私はそれだけ返す。そしたら元婚約者と部下の人が、馬鹿なことはやめろ、だとか冗談だよな、とか言ってきた。
「やめないし、冗談じゃない」
別にいいでしょ、ここから落ちたって。
私はもうあなたとは関係のない、赤の他人なんだから。死のうがどうしようが、私の勝手じゃない。
あぁ、こんな風に人の幸せも祝福してやれない嫌な女だから、今までも捨てられたのかな。今となってはどうでもいいけど。
仮に元婚約者と結婚まで行っても、お母さんみたいに駆け落ちされて終わりになっていただろうなって容易に想像できる。
この世界に私の居場所は、最初からなかったのだ。
「じゃあね、ばいばい、大好きだったよ」
最後にそう言い残し、後ろに倒れこむ。
あっという間に屋上から離れていく。
「…あはは!」
落ちていく最中、私は笑い声が漏れた。落ちる直前に見た二人の真っ青な顔を思い出して笑ってしまったのだ。思えばこんなに笑ったのは久しぶりかもしれない。
あーあ、これで私の人生は終わりか。
良いことない人生だったな。
あの二人、私が死んだらどうするのかな。
泣いたりするのかな。それとも邪魔者がいなくなったって喜ぶのかな。
まぁ、最後にあの二人の青ざめた間抜け面をみることができたから、それで良しということにしよう。
あ、もう地面だ。
あと少しで地面に激突するのを見て、私は目を閉じて、体が地面に叩きつけられるのを感じて、意識が途切れた。
こうして、BLの世界における、当て馬だった私の人生は幕を閉じたのだった。
次に生まれ変われたら、最後までそばにいて、愛してくれる人に出会えたらいいな。
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