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バルファ旅行記すりー前編
すりー前編8
しおりを挟む「もしや、魔法具?」
「そうだ。これくらいの価値のものなら売ってることもある。多くはないし高いが」
「へー…」
俺はその魔法具を見てみるが、何がどんな機能かさっぱり分からない。魔法具の勉強ももっとしないとな。
店主を呼んだ誠那は、魔法具を2つ選んで買っていた。
「高いんじゃないのか?」
店を出てから誠那に話しかけた。店には人がいたんで気兼ねなく話せなかったんだ。
「…これくらいなら、それほどでもない。道具屋だから物での交換もできたしな」
「セイナは金持ちか? というか何を引き替えにしたんだ?」
「金持ちには入るかもな。向こうで金持ちとして学校に在籍しているだろ? お前と同じだ。渡したのは宝石。親から常に緊急用として持たされてる。こっちでも向こうでもどの国でも通用して便利だからな」
緊急用というのは、危険があった時に何かに使う用なのだろう。こっちの世界でカードとかないしな。
「そうか。…俺はこっちでは金なしだけど…」
「そうとも言えない。今はないが、どちらでも宝石なら通用するから……。ああ、そのことはかなりの秘密事項だったか」
「…なんだ?」
秘密ってなんだおい。親友に秘密なんてあっちゃ駄目なんじゃないのか?
「あー…。どちらの世界の上の連中でも知らない、一部しか知らない話なんだ」
「………それを、何故、知ってる?」
考えてみれば、誠那は規格外なことが多すぎる。危険だから向こうにいたというのは分かるが、一体どうやって? 向こうで協力者がいるんじゃないか?
「初めの賢者は知ってるだろう?」
「ああ」
2つの世界が繋がることに関わった人達のことで、ようは繋がった扉から初めてこのバルファに来た人達と、その人達が帰れるように協力したバルファの人達のことだ。
「その人達だけでの独自ルールがあってな。それでこっちの世界の1人が宝石大好きでな。それでこっそり向こうからも宝石を持ってきて対価として金や魔法具を渡しているらしい。俺の場合向こうでの暮らしの保証の代わりにこっちでの対価を色々払っている」
「つまり、政府とか無視で独自に貿易しちゃってるわけか…」
現在どちらの側にせよ、厳重な管理をしている扉なのに、あっさりそんなことしてるとばれると大変だな。個人的だとしても。とはいえ初めの賢者なだけに咎めにくいかもしれないが。
「しかし、そうなるとセイナは初めの賢者の知り合いか?」
「あー、まあ…」
歯切れが悪いな。
「込み入った事情なくらい俺でも分かる。無理して話すことではないぞ?」
「話したくないってことは…、あるが、それは身内の恥な感覚で言いたくないだけなんだよな…」
「…よく分からないが、身内の話は他人が聞いたらたいしたことなくても、身内としては非常に気まずいよな」
父さんの趣味とか、別に悪くはないが、息子としては複雑で言いたくないって気持ちはものすごくよく分かる。
「そうなんだ。つまりはそういう感じなんだ」
「分かった。追求はしない」
聞かないことが逆に友情ってことだろ。
こんな思考ができるなんて俺の友達経験値もだいぶ上がってるんじゃないか?
……………ん?
「オミ?どうし…、おい?」
誠那の声が聞こえるが俺はどうしても見つけたものが気になってふらふらと近づく。
おー…。すごい。
「オミ、どうした?………もしや、これが欲しいのか?」
「ああ」
俺の前には露天商があり、そこには木彫りのよく分からない人形?のようなものがいくつも並べられていた。
「…これは、巡礼者に土産として買ってもらう為のものだな」
「そうか。意味とかあるのか?」
「いや、ない。いつのまにか、この辺りの土産として定着しているが、神殿との関係はいっさい無いし、この土地の文化にも関係していない。五十年くらい前に出てきた歴史の浅いものだ」
「ご当地土産物だな。よし、俺も土産にしよう。向こうの世界には持って帰れないが、城のラルクス達に守ってもらえばいいよな」
「……本気か? オミ、土産が欲しくなる気持ちは分かる。だが、これを選ぶ必要はないだろう。他にも土産はいくらでもあるぞ。とくにここは土産が多いし」
いやに真剣な顔だな。真面目なこいつのことだから、土産も真剣に考えろという意味なんだろう。大丈夫だ。ちゃんと考えてる。
「ああ、そりゃバルファのものならなんでも愛せる気はするが、できればバルファだって実感できるものがいいだろう?」
中等部の頃は海外に行くと無駄に意味もなくブランド物を買っていた俺だが、もう高等部なんだ。適当に土産を選んだりしないさ。
「それなら余計に、木彫りの置物なんてどこにでもあるだろう?」
「いや、たしかに木彫りは土産の定番かもしれないが、この様式は向こうでは見たことがない」
この木彫り、獲物を捕らえたところの幻獣をモデルにしているんじゃなかろうか。それを独創的にアレンジしてある。
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