ツクチホ短編まとめ

はるば草花

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落ちた。3

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「だけど、あんたが使ったハルラス?のほうがすごいと思うけど…」

「まあね。確かにすごいよ。だけど使える人間は限られてるし、制限もあるんだ。でもとにかくキヒロちゃんがそんなに面白いんだったら、もっとたくさん遊べるね」

「はあ……」

「なにその微妙な顔。つまりは、利用価値があるんだから待遇も変わるよ?外にも連れてってあげる」

「外…に…」

「そうそう。行きたいんでしょ?」


貴広はこくりと頷いた。
屋敷の中は檻の中のようで嫌だ。


「ちょうど、今度城で宴があるから連れてってあげる」

「お城…」

「大丈夫!俺はけっこう偉いから、俺の所有物に変なことするやつなんていないし」

「それなら…?」


平凡に生きてきた貴広としては、そんなセレブの集まりなんて気後れしてしまうが、ウィリダが偉いというなら、ひとまず安心である。

こんな男に安心なんて変な気分であるが。


「ちなみに印つけたから逃げても見つけられるよ?」

「あんたから逃げられる気はしないよ」

「そう?まあ、キヒロちゃんは外で他の連中を知ったほうがいいかもね」


その言葉の意味は言わず、ウィリダはやっとベッドから降りた。

それから前と同じ生活に戻るが、少し変わったことがあり、屋敷の人の貴広を見る目が変わった。

前は微妙に厄介なものとしての扱いだったのが、使い手だと知って、やや怯えたような目だ。中にはさらに忌々しそうに見てくる者や、興味津々といった目を向けてくる者がいた。

一週間ほどして城へと行くことになった。

屋敷で着ていたものより少し高そうな服をあたえられる。


「じゃあ行きましょうかー」


ウィリダと共に馬車で移動する。

それでもこの世界初めての外出なので、貴広は窓の外を興奮気味に見る。


「そんなに面白いー?」

「そりゃ…。屋敷から見えていた景色のまんまだけど、近くで見るとまた違って面白い」


遠くからはのどかな景色とというだけで、近くだと家や人がはっきりと見え、この世界も普通に生活する人々がいるのだと分かって、どこか安心した。

一見して、もとの世界の外国かと思える程度に普通の暮らしをしている。


「そうなの?俺は見慣れてるからなんにも思わないんだけど…、どこらへんが面白い?」

「どこっていうか、知ってる世界との違いが?」

「へー、その違い教えてよ。退屈しのぎに」


外国の暮らしに見えるとは言っても、似ているようで違っていて、分からないものもある。

よく分からない道具があって、ウィリダはマロウをおびき寄せるものだとか言ってるけど、それでは意味がわからない。


そうして暇することなく数時間が経過して貴広達は城に到着した。宮殿と城がくっついたような建造物で、どっからどこまでが建造物なのか遠目では分からないほど巨大である。

いくつもの建物が繋がってもいるようだ。

色々見た感じは、ぱっと見は洋風で、少し中華も混ざっているようだ。


「キヒロちゃん。俺からはぐれないように気をつけてねー」

「…わかってる」


城からはウィリダを迎える為にたくさんの人が出てきて頭を下げる。

ウィリダは本当に偉い人物なのだと貴広は実感した。それでも信じがたいが。

部屋に案内され、ひとまずそこで宴の開始まで待つ。


「…もうなんか、すでに疲れた。ここにいちゃ駄目かな?」


これでもかと豪華で広い城の中を歩いて圧倒された。


「ふはっ。意味ないじゃん。これからだよー?もう少し始まるまで時間があるから休んどきなよ」

「んー…」


貴広は言われるまでもなく長椅子の上で身体を横にしている。

お茶や果物を食べたりして、1時間ほどしてやっと案内の人間が呼びにやってきた。


「……………」

「キヒロちゃん、目がうつろー」


連れてこられた広間は、またさらに豪華ですさまじく広い。

そしてウィリダみたいな貴族な衣装?を着た人々がいっぱいいる。


「大丈夫だよー。俺と一緒にいれば。とにかくほら、なにか食べなよー」

「そんな鋼鉄の胃してない…」


ウィリダには次々と人が話かけるが、ウィリダは軽い挨拶だけで、軽いのにはっきり断って追い払う。

それでもこんな場が慣れない貴広は精神が削れていく。来たことに後悔?とっくにしてる。
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