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落ちた。10
しおりを挟む「そんな不細工な顔しないのー。フェレントはあれでもまともなほうなんだよ?この世界以外の常識を知らないだけで、むしろ優しい男なんじゃないかな?」
「それが人を殺そうとするのかよ」
「それは俺もすごい吃驚したよー。そこまで俺のこと好きだったなんて思わないでしょ?」
それには同意の貴広は頷く。というか変な男にひっかった王子に同情する。
「なに、その目。失礼なこと考えたでしょ。まあ、俺もそう思うけど!」
「もう王子には睨まれなくてすむのか?」
「もう終わったよ。今回はキヒロちゃん頑張ったからご褒美あげる。ね、キヒロちゃんはエルバラのこと好き?」
「へ…?」
突然の質問にも貴広は顔を赤くして、答えをしめしてしまう。まだ会って間もないとか、そんなことを考える前になってしまったのだ。
「ふふん、やっぱりねー。エルバラもキヒロちゃんのこと大事にしているようだったし、よかったね。主従ともにハッピーになれる」
「な、な、なに言って…、え、主従って…?え?」
「じっくり考えるといいよ」
意味心なこと言ったウィリダだったが、その後の説明もなく、買い物に付き合わされたりと振り回される日々に戻ったと貴広は思った。
肝心のことを言わないのはウィリダが楽しんでいるからで、貴広は知らぬままに事は進んでおり、
「はいはーい。キヒロちゃんおでかけよー」
「突然人の部屋入んな」
朝起きたばかりでぼんやりしている貴広はウィリダの顔を見て気分が下降した。
「ほら早く仕度ー」
「くそっ」
急かされるままに貴広は仕度をし、そして目的も聞かされぬままに馬車に乗り込んだ。
「ここらへんって来たことないよな?」
長い道のりでたどりついた場所は、普通の街の入り口と思われる所だったが、どことなく感じる違和感が初めてではないかと思わせる。
「キヒロちゃんは初めてだねー」
「ここに何か用でも…」
貴広が街道のほうを見ていればさらに別の馬車が2台やってきた。なんとなく見ていれば自分達の手前で止まる。
そして中から現れたのはフェレント王子だった。
「え?逢い引きとか?」
「変な言い方やめてよねー」
「今回は違うが、ウィリダとなら何度と逢い引きしたいな」
「そういう話はちゃんと信頼を手に入れてから言ってよね」
「…なら、なんの…?」
王子様が愛しのウィリダと逢い引きでもなくてこんな田舎そうな所に用なんてありえない気がする。
不思議に思っている貴広に声がかかる。
「キヒロ!無事か?」
「…エルバラ?!エルバラこそ大丈夫なの?」
もう1台の馬車から降りてきたエルバラ。格好は今まで会った中では一番まともそうではあったが、エルバラは奴隷なのだ。ウィリダは問題なしーとか言っていたが、エルバラは奴隷で命令に背いてはどうなるか分からない。
「あわ?!エルバラ?」
「よかった…」
エルバラに抱きしめられた貴広は驚き慌てる。
心の底から安堵したようなエルバラの声に、込められた力に、自分は心配されていたのだと分かり、なんともいえない満たされた感覚になる。
「いちゃいちゃは説明の後にしてねー」
ウィリダの声が聞こえるとエルバラは身体を離し貴広の手を握った。エルバラが警戒しているのがその熱から伝わる。
「…説明か、願いたい」
「そんな睨みながら聞かれたら虐めたくなるでしょ。まあ、いいや、はい、フェレント説明」
説明を丸投げたウィリダに貴広は驚きはしない。フェレント王子に同情である。
「え、ああ、わかった。キヒロ、君のことは誤解していたようで申し訳なかった。ただこの先ウィリダの側にいるのは許さない。なのでここから出てもらう」
「それ、は…」
ウィリダの側になんていたくないと即決できる貴広でも、出ていけという言葉はきつい。この世界のことをほとんど知らないのだ。
「追放のようになるけど、そのかわりエルバラをあげよう。エルバラは解放する。反逆の罪は不問ということになった。この先も、ある程度のことなら目を瞑っていてあげよう。私としては興味のないことだしな。そして…」
説明はどういう意味なのか、貴広には理解できないことが多かったが、フェレントは質問を受け付ける気がないかのように一気に話し、そして腕を上げ貴広の前に手をかざす。
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