ツクチホSS

はるば草花

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一万です。(ふるふる続き)

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今日もクロさんのところにやってきたよ。

いつも優しい笑顔で歓迎してくれるから、つい長居しちゃうんだよね。

嫌われちゃいやだから気をつけようと思ってるんだけど。


「なあ、フル。もうすぐ一万になるんじゃねえの?」

「あ、うん。そうなんだ。知ってくれてたんだ」


僕のところの訪問者数がもうすぐ一万人になるんだ。ずっと先のことだと思ってたから夢のようだ。

それをクロさんが気づいてくれてたなんて嬉しいな。


「キリ番とかあるの?」

「ううん。管理人さんは、すっごくしたいんだけど、そこまで技量がないからってことでやってないよ」

「そうなんだ」

「だけど、いつになるのかって、ドキドキしてる」

「俺も。一万になった時はすげー感動した」

「そうなんだぁ」


今のクロさんは百万を越えてるけど、そんなクロさんでもそんな時があったんだ。

僕も頑張れば、少しはクロさんに近づけるかな?




そして、後ほんの少しで一万となるところまできた。

…いまだに信じられなくて不安になってきた。

一万になるまえに、誰もこなくなるとか、ないよね?

キリ番もなにもないけど、僕にとっては大事な記念の数字だから、せめて精一杯歓迎しよう。

じっと一万になるのを待つ。

9998、9999…………ドキドキ。

一万!!

笑顔だ、僕!


「ご訪問ありがとう………?!?」


深い香り漂う大輪の白い薔薇が、僕の視界をおおう。


え?薔薇が訪問者???

疑問に思っていると、その薔薇が動く。


「クロさん!」


ふえ?薔薇じゃなかったけど、なんでクロさん?


「一万おめでと。キリ番とかねえなら、俺が来たって問題ないだろ?」


白い薔薇は花束だったようで、渡されて嬉しいけど、僕の顔が埋もれてるよ。


「…でも、どうして…」

「どうやって一万になる頃がわかったって?だてにここに何度も来てないし、訪問者が時間帯によってどれくらい来るかは知ってるから、だいたい予測できた。一万ぴったりだったろ?」


自信満々のクロさん。すごすぎです。


「クロさん…」

「ん?」

「うれ、しい…です」

「え、わっ」


胸がいっぱいになった僕は、涙が溢れてきた。


「…そんなに?」

「だって…、う…、僕なんて、本当に一万になるのかなって、自分のことなのに信じられなかったから、…実際一万になって、すごく感動したのに、その上大好きなクロさんが来てくれたんだもの。感動が、溢れちゃいますよっ」


どこにあるのってくらい、涙が次々と溢れる。


「それだけ喜んでくれると俺も嬉しい」


クロさんは優しく僕の頬を撫でてくれる。

そして僕の涙を舐める。


「え?!」

な、舐めた?!


「フルはかわいいなあ」

「え、え、え」


か、顔近い!クロさんはすんごい美形だから、ドキドキするよ。涙は止まっちゃったよ。


「じゃ、ケーキも買ってきてあるから、お祝いしよう」

「ははははははいっ」


クロさんが僕の手をとったことに、さらに動揺してしまう。真っ赤になったであろう顔を見られまいと俯く。

だけど、すでに見られていたのか、クロさんの笑いが聞こえた。

もう僕顔を上げられないよ!


「あ、クロさん」

「ん?」

「…ありがとうございます」

「そっか。よかった」


ちらっとクロさんの顔を見れば、嬉しそうに、愛しいものを見るような表情をしていて、僕はのぼせたようになってしまった。


一万ちょうどはクロさんだったけど、それまで来てくれた皆さんもありがとうございます。

これからも、よろしくお願いします。ぺこっ。



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