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難敵襲来
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「ライル! トドメを多く刺した方が勝ちね! 負けたら、晩ご飯おごりだから」
それまでメタルスライムを避けていただけのヌーンが、喜々として声を上げる。
「おっしゃぁ! 負けるかよ」
地面をゆっくりと這いずり回るメタルスライムを、両者が競って串刺しにしていく。この魔物の表面金属はそれほど硬くないので、一流の刀工による剣ならば難なく斬り裂けるのだ。
「ちょっと、あんたたち。バカな事しないの!」
マルチェナの小言も聞かず、スライムカットに夢中になる子供のような二人。運よく光の針を逃れたり、カンナンの魔法障壁に体当たりしていたスライムたちは、とっくの昔に退散していた。
「イェーイ。私の勝ち―っ!」
ヌーンが、勝どきをあげる。
「ず、ずるいぞヌーン。お前、賭けの宣言をする前に二~三匹もう切ってただろう?」
ライルが、異議を唱えた。
「男らしくなーい。勝負は勝負よ」
「なんだよ、男らしくないって? 普段はジェンダーレスとか言ってるくせに!」
リーダーの抗議を受け付ける気など全く無く、早くも夕飯に何をおごってもらうかを考え始めるヌーン。
「困ったもんですねぇ」
カンナンが障壁を解いて、冒険者たちの安全を確認する。
「……でもさ、ライルじゃないけど、あいつらが良く出るエリアは、もう少し先だったよね、今までは」
ヌーンが、不思議そうに首をひねった。
「そうですね。少し違和感を覚えます」
カンナンも、納得のいかない様子である。
「全くだわ。私のライトニング・ニードルも、いつもよりは当たらなかったみたい。奴らのスピードが、速かったせいよ」
「腕が落ちただけじゃね?」
マルチェナの言い分を、ライルがからかった。
「あんたねぇ……!」
「一つ提案があるのですが……」
魔法使いの抗議を遮るように、カンナンが喋り出す。
「私たち以外の皆さん、ここで引き返した方が良いのではないですか?」
取りあえずの危機は去ったものの、残りの冒険者たちは、突然の来襲にすっかり怯えてしまっていた。短い相談の結果、ライルのパーティーメンバー以外は、メタルスライムの一撃を受けた冒険者を連れて、早々に引き返す事となる。
更に森の奥へと進むパーティー一行。
「結局、俺達だけか」
面倒な探索任務を担うメンバーが減ってしまい、ライルが文句をたれた。
「まぁ、この先はもっと厳しくなるから、こんなもんじゃない?」
ヌーンが、応える。
「っていうか、そもそもあんたが、くじ引きで、こんなハズレのエリアを引くのが悪いんでしょ?」
マルチェナが、文句を言う。
彼女の不満はもっともだ。このあたりは、先ほどのメタルスライムを皮切りに、扱いが割とやっかいなメタル系のモンスターが頻繁に現れる地域なのだ。
「まぁ、クジ運が悪いのは、マルチェナも同じだよね」
ヌーンが、ニヤニヤと笑う。
「私のクジ運が? 何で?」
マルチェナが、キョトンとする。
「だって、ライルみたいなダメ男を引いちゃったわけだからさ」
「ベ、別に私とライルはそういう……」
ヌーンの冗談に、少しばかり頬を赤く染めたマルチェナが断固として抗議した。
「ちょっと黙れ」
ライルの声が響く。
「はぁ? 黙れって、私とあなたの関係はそういうもんじゃないで……」
「違いますよ。やっかいな相手のお出ましのようです」
魔法使いの照れ隠しを僧侶が遮った。一同の間に緊張感が走る。確かに周りの茂みの向こうから、ガサガサという音が聞こえ始めていた。全員が、臨戦態勢に入る。
「ライトニング・ナイフ!」
マルチェナが杖を頭上に掲げ叫ぶと、先ほどの光の針よりもずっと大きい塊が四方へ飛んでいく。光の小刀が茂みに消えると同時に、グオッ、グオッという唸りのような音が、其処ここから聞こえ出した。
「やっぱり早いよ。出てくんのがさ」
ヌーンが、叫ぶ。
その声を合図にしたかのように、草むらからノソリノソリと魔物の一団が現れる。それは金属トカゲ、すなわちメタルリザードであった。
この魔物、先ほどのメタルスライムとは比較にならない強力なモンスターである。後頭部から背中、尻尾にかけて銀色光る金属質の甲羅で覆われており、それは手足の一部にも施されている。硬度はメタルスライムより数段硬く、名剣でもあっても、下の生身まで到達するのは難しい。
また電撃に対する耐性もかなりあり、相当強力な雷を落とさない限り、先ほどのメタルスライムのように、戦闘不能となる事はない。
それが十数匹の群れで現れたのである。ライルたちにとって、間違いなく手ごわい相手であった。
それまでメタルスライムを避けていただけのヌーンが、喜々として声を上げる。
「おっしゃぁ! 負けるかよ」
地面をゆっくりと這いずり回るメタルスライムを、両者が競って串刺しにしていく。この魔物の表面金属はそれほど硬くないので、一流の刀工による剣ならば難なく斬り裂けるのだ。
「ちょっと、あんたたち。バカな事しないの!」
マルチェナの小言も聞かず、スライムカットに夢中になる子供のような二人。運よく光の針を逃れたり、カンナンの魔法障壁に体当たりしていたスライムたちは、とっくの昔に退散していた。
「イェーイ。私の勝ち―っ!」
ヌーンが、勝どきをあげる。
「ず、ずるいぞヌーン。お前、賭けの宣言をする前に二~三匹もう切ってただろう?」
ライルが、異議を唱えた。
「男らしくなーい。勝負は勝負よ」
「なんだよ、男らしくないって? 普段はジェンダーレスとか言ってるくせに!」
リーダーの抗議を受け付ける気など全く無く、早くも夕飯に何をおごってもらうかを考え始めるヌーン。
「困ったもんですねぇ」
カンナンが障壁を解いて、冒険者たちの安全を確認する。
「……でもさ、ライルじゃないけど、あいつらが良く出るエリアは、もう少し先だったよね、今までは」
ヌーンが、不思議そうに首をひねった。
「そうですね。少し違和感を覚えます」
カンナンも、納得のいかない様子である。
「全くだわ。私のライトニング・ニードルも、いつもよりは当たらなかったみたい。奴らのスピードが、速かったせいよ」
「腕が落ちただけじゃね?」
マルチェナの言い分を、ライルがからかった。
「あんたねぇ……!」
「一つ提案があるのですが……」
魔法使いの抗議を遮るように、カンナンが喋り出す。
「私たち以外の皆さん、ここで引き返した方が良いのではないですか?」
取りあえずの危機は去ったものの、残りの冒険者たちは、突然の来襲にすっかり怯えてしまっていた。短い相談の結果、ライルのパーティーメンバー以外は、メタルスライムの一撃を受けた冒険者を連れて、早々に引き返す事となる。
更に森の奥へと進むパーティー一行。
「結局、俺達だけか」
面倒な探索任務を担うメンバーが減ってしまい、ライルが文句をたれた。
「まぁ、この先はもっと厳しくなるから、こんなもんじゃない?」
ヌーンが、応える。
「っていうか、そもそもあんたが、くじ引きで、こんなハズレのエリアを引くのが悪いんでしょ?」
マルチェナが、文句を言う。
彼女の不満はもっともだ。このあたりは、先ほどのメタルスライムを皮切りに、扱いが割とやっかいなメタル系のモンスターが頻繁に現れる地域なのだ。
「まぁ、クジ運が悪いのは、マルチェナも同じだよね」
ヌーンが、ニヤニヤと笑う。
「私のクジ運が? 何で?」
マルチェナが、キョトンとする。
「だって、ライルみたいなダメ男を引いちゃったわけだからさ」
「ベ、別に私とライルはそういう……」
ヌーンの冗談に、少しばかり頬を赤く染めたマルチェナが断固として抗議した。
「ちょっと黙れ」
ライルの声が響く。
「はぁ? 黙れって、私とあなたの関係はそういうもんじゃないで……」
「違いますよ。やっかいな相手のお出ましのようです」
魔法使いの照れ隠しを僧侶が遮った。一同の間に緊張感が走る。確かに周りの茂みの向こうから、ガサガサという音が聞こえ始めていた。全員が、臨戦態勢に入る。
「ライトニング・ナイフ!」
マルチェナが杖を頭上に掲げ叫ぶと、先ほどの光の針よりもずっと大きい塊が四方へ飛んでいく。光の小刀が茂みに消えると同時に、グオッ、グオッという唸りのような音が、其処ここから聞こえ出した。
「やっぱり早いよ。出てくんのがさ」
ヌーンが、叫ぶ。
その声を合図にしたかのように、草むらからノソリノソリと魔物の一団が現れる。それは金属トカゲ、すなわちメタルリザードであった。
この魔物、先ほどのメタルスライムとは比較にならない強力なモンスターである。後頭部から背中、尻尾にかけて銀色光る金属質の甲羅で覆われており、それは手足の一部にも施されている。硬度はメタルスライムより数段硬く、名剣でもあっても、下の生身まで到達するのは難しい。
また電撃に対する耐性もかなりあり、相当強力な雷を落とさない限り、先ほどのメタルスライムのように、戦闘不能となる事はない。
それが十数匹の群れで現れたのである。ライルたちにとって、間違いなく手ごわい相手であった。
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