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魔女と奇妙な男 (16) レアロンの黒歴史
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「でもレアロンの口のきき方って、師匠とクレオンさんとじゃだいぶ違いますよね。同じ友だちなのに」
ネリスが、素朴な疑問をぶつけます。
「まぁ、奴がコリスの使い魔って事もあるんだけど、とにかくコリス大好き野郎だからなぁ、あいつは。シュジコンと言ってもいい」
「シュジコンって?」
「主人大好きコンプレックスだよ。
こいつは内緒なんだけどさ。前にコリスが凄い剣幕でレアロンを叱りつけた事があったんだ。そうしたら、あいつどうしたと思う?」
「さぁ、怒鳴り返したとか……」
その場面を想像すると、普段きつく当たられているネリスとしては、少し溜飲が下がります。
「とんでもない。あのバカ、コリスと主従契約しているのにもかかわらず、家出しちまいやがったんだ」
レアロンの、知られざる一面が暴露されました。
「家出!?」
「そう、家出。常識じゃ考えられないだろう?
で、僕とコリスがあちこち探し回った末に、とある洞窟で見つけたんだけどさ。あいつ、コリスの顔を見るなり涙をポロポロとこぼして、ゴメンナサイを連呼したんだよ」
「……あのレアロンが……」
余りに意外過ぎて、ネリスはポカンとするばかりです。
でも内緒にしている話を、事もあろうにネリスへ話しちゃって大丈夫なんでしょうか。いいんです。だってクレオンは、敢えてこの話をしたんですからね。
何故かと言えば、彼がネリスの気持ちをとっくに見抜いていたからです。屋敷の中にあって、自分だけが家族じゃないっていう寂しい心の内です。秘密の共有というのは、仲間意識を高めますよね。そこで、レアロンには犠牲になって貰ったというわけです。
お昼休みを終え、ネリスはいつもの仕事に戻ります。クレオンは表向き、監査に来たという事になっていますから、一応そういった見回りをしたあと、コリスのオフィスへと向かいました。
午後の勤務を終え、薬の相談所へ行く時間になったので、ネリスはコリスの元へ赴き退社の許可を得ます。クレオンもそこに居たので、二人は一緒に魔女の薬工場を後にしました。
「じゃぁ、ネリス君。しばらくは一人で相談所へ行ってくれ。僕は他に用事があるから」
いつもは調査と称して、つかず離れずくっついて来るクレオンが笑顔を見せます。
「え? それってサボリですかぁ」
ここ数日、絶えず監視下に置かれているネリスの心は、開放の予感に踊りだしました。でもあからさまに喜ぶわけにもいかないので、一応こういう聞き方をします。ちょっとしたお返しでもあるんですけどね。
「こらこら、君と一緒にしないでくれよ。この街へ来るのも久しぶりなんで、今日はこの街の視察をしようと思ってさ」
クレオンの顔は、ハツラツとしています。
「なんだ、やっぱりサボリじゃないですか」
ネリスが、呆れた顔をしました。
「そう言うなって。僕みたいな大人の男がさ、来る日も来る日も、お稚児さんの見張りをしてるんだぜ。
リフレッシュも立派な仕事です。あっ、コリスには内緒でな」
ウインクするクレオンを見ながら、ネリスは、
「もう、お稚児さんとは失礼な。ダメですよ。師匠に言いつけますから」
と、ちょっとおどけて言いました。
「そいつぁ、困るよ。そうだ。黙っていてくれたら、掃除をサボった件、上の婆さん連中には黙っておいてやろう」
ネリスはニヤリと笑いながら、
「では、交渉成立という事で」
と、言いました。
何という幸運でしょう。窮屈な監視を逃れられる上に、うっかりやってしまった失敗も帳消しになるのですから。どうやら、ネリスとクレオン。似た者同士なのかも知れませんね。
今日は、何か良い事ありそうだぞぅ。
ネリスはウキウキしながら、自転車をこいでアルバイト先へと向かいました。その後姿を少しのあいだ見送っていたクレオンは、一つ溜息をつき街の方へと消えて行きました。
ネリスが、素朴な疑問をぶつけます。
「まぁ、奴がコリスの使い魔って事もあるんだけど、とにかくコリス大好き野郎だからなぁ、あいつは。シュジコンと言ってもいい」
「シュジコンって?」
「主人大好きコンプレックスだよ。
こいつは内緒なんだけどさ。前にコリスが凄い剣幕でレアロンを叱りつけた事があったんだ。そうしたら、あいつどうしたと思う?」
「さぁ、怒鳴り返したとか……」
その場面を想像すると、普段きつく当たられているネリスとしては、少し溜飲が下がります。
「とんでもない。あのバカ、コリスと主従契約しているのにもかかわらず、家出しちまいやがったんだ」
レアロンの、知られざる一面が暴露されました。
「家出!?」
「そう、家出。常識じゃ考えられないだろう?
で、僕とコリスがあちこち探し回った末に、とある洞窟で見つけたんだけどさ。あいつ、コリスの顔を見るなり涙をポロポロとこぼして、ゴメンナサイを連呼したんだよ」
「……あのレアロンが……」
余りに意外過ぎて、ネリスはポカンとするばかりです。
でも内緒にしている話を、事もあろうにネリスへ話しちゃって大丈夫なんでしょうか。いいんです。だってクレオンは、敢えてこの話をしたんですからね。
何故かと言えば、彼がネリスの気持ちをとっくに見抜いていたからです。屋敷の中にあって、自分だけが家族じゃないっていう寂しい心の内です。秘密の共有というのは、仲間意識を高めますよね。そこで、レアロンには犠牲になって貰ったというわけです。
お昼休みを終え、ネリスはいつもの仕事に戻ります。クレオンは表向き、監査に来たという事になっていますから、一応そういった見回りをしたあと、コリスのオフィスへと向かいました。
午後の勤務を終え、薬の相談所へ行く時間になったので、ネリスはコリスの元へ赴き退社の許可を得ます。クレオンもそこに居たので、二人は一緒に魔女の薬工場を後にしました。
「じゃぁ、ネリス君。しばらくは一人で相談所へ行ってくれ。僕は他に用事があるから」
いつもは調査と称して、つかず離れずくっついて来るクレオンが笑顔を見せます。
「え? それってサボリですかぁ」
ここ数日、絶えず監視下に置かれているネリスの心は、開放の予感に踊りだしました。でもあからさまに喜ぶわけにもいかないので、一応こういう聞き方をします。ちょっとしたお返しでもあるんですけどね。
「こらこら、君と一緒にしないでくれよ。この街へ来るのも久しぶりなんで、今日はこの街の視察をしようと思ってさ」
クレオンの顔は、ハツラツとしています。
「なんだ、やっぱりサボリじゃないですか」
ネリスが、呆れた顔をしました。
「そう言うなって。僕みたいな大人の男がさ、来る日も来る日も、お稚児さんの見張りをしてるんだぜ。
リフレッシュも立派な仕事です。あっ、コリスには内緒でな」
ウインクするクレオンを見ながら、ネリスは、
「もう、お稚児さんとは失礼な。ダメですよ。師匠に言いつけますから」
と、ちょっとおどけて言いました。
「そいつぁ、困るよ。そうだ。黙っていてくれたら、掃除をサボった件、上の婆さん連中には黙っておいてやろう」
ネリスはニヤリと笑いながら、
「では、交渉成立という事で」
と、言いました。
何という幸運でしょう。窮屈な監視を逃れられる上に、うっかりやってしまった失敗も帳消しになるのですから。どうやら、ネリスとクレオン。似た者同士なのかも知れませんね。
今日は、何か良い事ありそうだぞぅ。
ネリスはウキウキしながら、自転車をこいでアルバイト先へと向かいました。その後姿を少しのあいだ見送っていたクレオンは、一つ溜息をつき街の方へと消えて行きました。
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