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魔女と奇妙な男 (24) 再び化け物と
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まず一つ目。生身の体で、自転車のネリスをいとも簡単に追いかけてきた事。二つ目。二人が同時に現れた場面がない事。三つ目。ネリスが誰かにつけられ始めたのは、クレオンが町に現れてからという事。
まさか……。
ネリスの心に、どす黒い影が漂い始めます。
化け物とクレオンさんは、同一人物ってことなのかも……。
二人の雰囲気は違いましたが、同じ人物が時によって、全く違う雰囲気を醸し出すのは良くある話です。それに化け物の噂はクレオンが現れる少し前からあったものの、そもそもクレオンがこの街にやって来たのが本当にいつなのかは、コリスさえ知りませんでした。もしかすると今よりもずっと前から、彼が街に居た可能性だってあるのです。
だけど決定的な違いもありました。それは何といってもあの姿形です。両者とも大柄ですが、暗がりの中とはいえ、あれは絶対にクレオンの姿ではありませんでした。
じゃぁ、やっぱり二人は違う人物なのかな。
ネリスの頭の中は、洗濯機の水流のようにグルグルと回っています。
やがていつものように、魔女の薬相談所へ行く時間がやって来ました。ネリスはコリスに挨拶をし、これまたいつものように自転車をこいで店へと向かいます。今も後を付けられている感覚はありません。まだおもては明るいし、工場から店までは人通りの多い道のりです。
昨晩の雰囲気から、化け物は人に姿を見られたくない様子でしたので、いま襲ってくるような真似はしないだろうと、ネリスは自分の心に言い聞かせました。
そして彼女の予想通り、店までの道中はこれといった異変もなく、普段通りの勤務をこなして屋敷への帰途へと着きます。
さて、パン屋さんの角を曲がり、ちょっと細い道へ入ろうとしたその時です。少し離れた所で大きな音が鳴りました。何か物が壊れるような響きです。
「化け物が出たぞぉ!」
誰かが叫び、それに呼応したかのように大勢の人の声が聞こえてきます。ネリスは、ハッとしました。そういえば住人こそ襲われていませんでしたが、街の多くの場所で物が壊される事態が深刻になっており、近所の人達が自警団を作って見回りをしていると、お店の先輩に聞かされていたのです。
昨日の恐怖感が、再びネリスの心を包みました。でも今日のネリスは、昨日までのネリスとは違います。彼女は精一杯落ち着いて、辺りに化け物の姿がないかと探しました。
きゃっ!
彼女の数メートル先を、黒い影が凄い速度で通り過ぎます。
あいつだ!
間違いありません。昨晩ネリスを、身の毛もよだつ地獄のどん底へと突き落したあの黒い影です。ただ、向こうはネリスには全く気が付いていないようでした。
どうしよう!
ネリスは、迷います。
昨日とは立場が逆転していました。相手は今、逃げている最中で、自分は追おうと思えば追える身の上です。まして今ネリスは、自転車に乗っています。加えて今日は、彼女一人ではありません。後ろの方に、幾つもの小さい明かりが見えました。自警団の人達が、こちらへ向かっているのです。
ただこのままでは、彼らは化け物に逃げられてしまうでしょう。ネリスの頭の中で”追え!”という声と”余計な事はするな!”という声が激しくぶつかり合いました。
まさか……。
ネリスの心に、どす黒い影が漂い始めます。
化け物とクレオンさんは、同一人物ってことなのかも……。
二人の雰囲気は違いましたが、同じ人物が時によって、全く違う雰囲気を醸し出すのは良くある話です。それに化け物の噂はクレオンが現れる少し前からあったものの、そもそもクレオンがこの街にやって来たのが本当にいつなのかは、コリスさえ知りませんでした。もしかすると今よりもずっと前から、彼が街に居た可能性だってあるのです。
だけど決定的な違いもありました。それは何といってもあの姿形です。両者とも大柄ですが、暗がりの中とはいえ、あれは絶対にクレオンの姿ではありませんでした。
じゃぁ、やっぱり二人は違う人物なのかな。
ネリスの頭の中は、洗濯機の水流のようにグルグルと回っています。
やがていつものように、魔女の薬相談所へ行く時間がやって来ました。ネリスはコリスに挨拶をし、これまたいつものように自転車をこいで店へと向かいます。今も後を付けられている感覚はありません。まだおもては明るいし、工場から店までは人通りの多い道のりです。
昨晩の雰囲気から、化け物は人に姿を見られたくない様子でしたので、いま襲ってくるような真似はしないだろうと、ネリスは自分の心に言い聞かせました。
そして彼女の予想通り、店までの道中はこれといった異変もなく、普段通りの勤務をこなして屋敷への帰途へと着きます。
さて、パン屋さんの角を曲がり、ちょっと細い道へ入ろうとしたその時です。少し離れた所で大きな音が鳴りました。何か物が壊れるような響きです。
「化け物が出たぞぉ!」
誰かが叫び、それに呼応したかのように大勢の人の声が聞こえてきます。ネリスは、ハッとしました。そういえば住人こそ襲われていませんでしたが、街の多くの場所で物が壊される事態が深刻になっており、近所の人達が自警団を作って見回りをしていると、お店の先輩に聞かされていたのです。
昨日の恐怖感が、再びネリスの心を包みました。でも今日のネリスは、昨日までのネリスとは違います。彼女は精一杯落ち着いて、辺りに化け物の姿がないかと探しました。
きゃっ!
彼女の数メートル先を、黒い影が凄い速度で通り過ぎます。
あいつだ!
間違いありません。昨晩ネリスを、身の毛もよだつ地獄のどん底へと突き落したあの黒い影です。ただ、向こうはネリスには全く気が付いていないようでした。
どうしよう!
ネリスは、迷います。
昨日とは立場が逆転していました。相手は今、逃げている最中で、自分は追おうと思えば追える身の上です。まして今ネリスは、自転車に乗っています。加えて今日は、彼女一人ではありません。後ろの方に、幾つもの小さい明かりが見えました。自警団の人達が、こちらへ向かっているのです。
ただこのままでは、彼らは化け物に逃げられてしまうでしょう。ネリスの頭の中で”追え!”という声と”余計な事はするな!”という声が激しくぶつかり合いました。
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