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■ 若返り契約の秘密
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ある時、天使が地上で出会った悪魔に問うた。
「なぁ、悪魔が人間とかわす契約の中に”年老いた者を若返らせる”というのがあるだろう?
あれって、君たちにとっては損な取引きだと思うんだけど……」
「どうしてさ」
悪魔が、不思議そうに尋ね返す。
「だって願いと引きかえの魂は、契約者が死んだあとにしか得られないのだから、若返った分、受け取る時期がかなり遅くなるじゃないか」
と、天使は再び問うた。
「あぁ、なるほどね。
確かにそういう場合もあるけどさ。大抵は、割とすぐに回収できるんだ」
「え? なんで」
意外な答えに、天使は三度問う。
「そこが、人間の愚かしいところなんだよ。
一度でも老齢を経験した者は、年を取ったあと、自分がどれだけ惨めな目にあうかを知っている。まぁ、金があるかないかで多少の差はあるんだが、そう大きくは変わらないんだ。
つまりはさ、若返って数年はいいけれど、将来において確実にやって来る、耐えがたい惨めな日々を思い出して、だんだん恐怖することになるんだよ。
それは時を経るごとに強くなって、やがては恐ろしさから逃れるため、彼らは自分の命を絶ってしまうんだ。だから契約前の残りの寿命と大して差がない内に、俺たちは魂を得られるというわけさ」
話を聞いた天使は、しゃべり終わった悪魔と共に深いため息をつく。
「これだから、人間ってヤツは……」
奇しくも同じ言葉を発した二人は、お互いを見やり苦笑した。
【終わり】
「なぁ、悪魔が人間とかわす契約の中に”年老いた者を若返らせる”というのがあるだろう?
あれって、君たちにとっては損な取引きだと思うんだけど……」
「どうしてさ」
悪魔が、不思議そうに尋ね返す。
「だって願いと引きかえの魂は、契約者が死んだあとにしか得られないのだから、若返った分、受け取る時期がかなり遅くなるじゃないか」
と、天使は再び問うた。
「あぁ、なるほどね。
確かにそういう場合もあるけどさ。大抵は、割とすぐに回収できるんだ」
「え? なんで」
意外な答えに、天使は三度問う。
「そこが、人間の愚かしいところなんだよ。
一度でも老齢を経験した者は、年を取ったあと、自分がどれだけ惨めな目にあうかを知っている。まぁ、金があるかないかで多少の差はあるんだが、そう大きくは変わらないんだ。
つまりはさ、若返って数年はいいけれど、将来において確実にやって来る、耐えがたい惨めな日々を思い出して、だんだん恐怖することになるんだよ。
それは時を経るごとに強くなって、やがては恐ろしさから逃れるため、彼らは自分の命を絶ってしまうんだ。だから契約前の残りの寿命と大して差がない内に、俺たちは魂を得られるというわけさ」
話を聞いた天使は、しゃべり終わった悪魔と共に深いため息をつく。
「これだから、人間ってヤツは……」
奇しくも同じ言葉を発した二人は、お互いを見やり苦笑した。
【終わり】
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