ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (12) 家族団らん

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「かーっ、本当にそうだよな。こんな時に、さっさと家へ帰らなきゃいけないとは、神様はなんてひどい事をするんだろう!」

自分の都合ばかりをあらん限り優先させるドッジにかかったら、神様も形なしですね。

そんな友人に呆れ顔のニールでしたが、

”あれ?”

と、彼は突然の不思議な感覚に、歩を止めました。これは今日の朝、公園を通り抜けようとした時に味わったものと同じ……、いえ、あの時よりも少し強い感じがします。

ニールから二、三メートル先を歩く二人が、異変に気がつきました。

「おい、ニール。どうしたんだよ」

踵を返したドッジが、不思議そうに尋ねます。

「う、うん……。ねぇ、二人とも、何か、感じない?」

ニールが思わず、二人に問いかけます。

「何かって、何?」

マリアも、不思議そうに反問しました。

「いや、そう聞かれても困るんだけど……」

ニールが、戸惑いながら答えます。実のところ彼自身、この不思議な感覚の正体を掴みきれてはいないのです。

「おい。ニール、変だぞ。こんな人っ子一人いない公園で、何か感じるわけないじゃないか」

「そうよねぇ。風が吹いて、木々がざわめいているわけでもないし……」

ドッジはもちろんの事、頭の回転抜群のマリアですら、わけがわかりません。

「ご、ごめん」

ニールは、バツが悪そうに謝りました。

「なんだ、朝寝坊がまだ続いてるんじゃないのか? ま、その点、俺なんか、眠気の”ね”の字も感じてないけどな」

ガキ大将が、フフンと笑います。

「自習時間、あれだけ寝ていたら、眠気も吹き飛ぶでしょうね」

その答えに、マリアがチクリと針を刺しました。

「あ、あれはな。寝てたんじゃないぞ。シャ、シャーロット先生の無事を、目を閉じて神様に祈ってたんだ」

ドッジが、慌てて言い訳をします。

「へぇ。寝息を立てていた上、ヨダレまで垂らしてたクセに良く言うわよ」

マリアが、容赦なく追撃をしました。

「バ、バカ言うな。ヨダレなんか、垂らしてないぞ。そ、そりゃ、ケーキを思いっ切り食べる夢は見てたけどさ」

彼らの問答を聞いていたニールが、思わずプッと吹き出します。

「結局、寝てたわけね」

マリアが、勝ち誇ったように宣言しました。

「あっ、おまえ、引っ掛けやがったな!」

ドッジが、笑いながら走り出すマリアを追いかけます。

この愉快な友人たちのおかげで、ニールは色々な事でモヤモヤしていた気持ちが、少し晴れたような気がしました。

公園の出口で別れた三人は、それぞれのお家へと向かいます。ドッジがまっすぐ帰宅したかどうかは、怪しいものですけどね。


「へぇ、そいつは大変だったなぁ」

夕飯ギリギリの時間に帰宅したパパが、ママ特製のスープをすすりながら言いました。昼間起こったとんでもない事態の顛末は、家族三人の食卓を多いに賑わわせます。

特にポッテルがその場で薬を調合するくだりなどは、講談師さながらの身振り手振りで興奮気味に説明するニールでした。

魔法に悩む我が子ニールが、その魔法の話を喜々として語るのを複雑な気持ちで見守るママ。パパの方は、朝の話などもうすっかり忘れてしまったように見えました。

夕食後、大目に出された宿題の残りを片付けたニールは、シャーロット先生の事を思いつつも、大好きな小説を普段よりもたくさん読み、その後、暖かいベッドにもぐりこみました。
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