ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (47) うららかな午後

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「お、ところでニール。今日は顔色が冴えてるな。何か、いい事でもあったのか?」

話題をそらそうと、ドッジが話をニールに振ります。

「でしょう? 私もそう思ったんだけど、ニールは、何もないって言うのよね」

ニールの変化が気になるマリアは、渡りに船とばかりにドッジへ話を合わせました。

「そ、そうかなぁ」

普段は互いに争っている二人の連携攻撃に、ニールは慌てます。

「ん~、あ、そうそう。もしかしたらさ」

ニールが、何か思いついたように喋りだしました。二人は、彼の二の句に注目します。

「さっき、またあの公園を通って来たんだ。でも、頭痛は全くしなかったんだよ。そんな兆しすらない。多分、マリアの言った通り、寝不足で片頭痛になってたんじゃないかって思うんだ。

それで安心してたんで、様子が良く見えたのかも……」

半分は本当で、半分はウソの話ですね。

それを聞いたドッジは、

「おぉ、そうか。何ともなかったか。そりゃ、めでてぇなぁ。まぁ、マリアの言う通りって所が玉に瑕だけどな」

と、ニールの肩をバンバンと叩きます。少し痛かったニールですが、半分嘘をついている後ろめたさから、ただ苦笑いをするだけでした。

「ちょっと、玉に瑕とはなによ。玉に瑕とは……!」

またしても、いつもの合戦が始まろうとしますが、またしても、いつもの通りニールがそれを止めます。そんなやりとりの中で、ニールの調子の話は立ち消えになりました。

キーンコーン、カーンコーン。

始業の鐘が鳴り、今日もメリドル教頭が担当するホームルームが始まります。

「おっ、ドッジ。今日は早いな。この調子でな」

メリドルはこう言うと、出席簿を広げます。

「任せて下さいよ、先生。俺はもう、生まれ変わったんですから」

元気の良い返事をするドッジに「しっかり頼むぞ」と、エールを送るメリドルでしたが、そもそもドッジのお家に届いた手紙、それはメリドルの指示で出されたものでした。

彼は遅刻しそうな生徒たちを毎日観察し、様々な事柄を鑑みて、保護者に注意喚起をする役目も担っているのです。

ありゃぁ、母親に相当しぼられたな。

メリドルの直感がそう囁き、その情景を想像しながら、彼は心の中でクスクスと笑いました。メリドルはPTA担当の役割も担っておりましたので、役員であるドッジのお母さんの事もよく知っているのです。

彼はニールがキチンと着席している事を確認しつつ、クラスの出欠を取っていきました。

さて、今日は既に木曜日。この変則授業もあと二日です。せっかく慣れてきた事もあって、皆、色々な先生たちの授業を名残惜しそうに拝聴しました。もっとも、半分、夢の中で聞いていた生徒も何人かはいましたけどね。

給食が終り、午後の授業が終わり、生徒たちは三々五々に散っていきます。ここ何日か、魔法と頭痛の件で憂鬱だったニールも、今日は晴れ晴れとした表情で下校の途についていました。もちろん、マリア、ドッジと一緒です。

さぁ、これまで鬼門となっていた公園の前まで、三人がやって来ました。

「ねぇ、ニール。本当に、もう大丈夫なの?」

朝、ニールが公園を通り抜ける姿を実際に見ていないマリアが、少し心配そうに彼の顔を伺います。

片頭痛説を言い出したのはマリア本人なわけですが、よくよく考えてみれば”公園の中だけで異常が発生する”というのは、どうにも変な話です。彼女は頭の中で検証をくり返し、自説の問題点を見つけ出していたのでした。
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