ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (53) 最後のアクション

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「ニール、行け!!」

タックルをした際に、自分も一緒に倒れてしまったドッジが、地面に這いつくばりながらも叫びます。

「ミリナ、ファリナ。ボクと一緒に来て!」

ニールが両手を広げ、精霊たちを呼び寄せました。

「二人とも、ニールの言う事を聞け!」

ようやっと片膝をついたドッジが、大声で怒鳴ります。

今度ばかりは、二人の精霊たちも「命令しないで、ドッジ」なんて事は言いません。すぐさまニールの元へ馳せ参じ、彼の髪の毛にしっかりと掴まります。

準備は整いました。本当に一か八か、賭けのようなオペレーションが始まります。

下手をするとボクも……。

ニールは、ほんの一瞬ためらいましたが、ここまで協力したくれたドッジやマリア、そして迷わず来てくれたミリナとファリナの気持に応えるべく、全速力で砂場へ向かって駆け出しました。

「ほんっとに、何て子かしら。もう、許さないわ。親や学校に知らせて、たっぷり叱ってもらいますからね!」

ようやく立ち上がった中年女性が、大声を張り上げ唾を飛ばします。

「体当たりしたのは、確かに俺が悪かった。どうにでもしてくれよ」

こちらも体を起こしたドッジが、女性に言いました。

「まぁ、開き直るのね。本当に、どういう教育を受けているのかしら!」

憤懣やるかたない女性は、ドッジをねめつけます。

その時、マリアがドッジと女性の間に立ちはだかりました。

「おばさん。怒るのは分かるけど、結果を見てからにした方がいいんじゃないんですか? もしかしたら、恥をかく事になるかも知れませんよ」

マリアが、毅然と言い放ちます。

彼女だって、怒りまくっている大人が恐くないはずありません。ですが、信じる仲間たちが侮辱されているのです。とても黙っているわけにはいきませんでした。

「んまぁ! 本当にもう、なんて子たちなの? 揃いも揃って!」

女性の怒りは、頂点に達します。ですが、その鬼のような形相を目の当たりにしても、マリアとドッジは一歩も引きませんでした。

もちろんこの時、一体この先に何が起こるのか二人は知りません。でもニールが”一生のお願い”をするような事態なのです。彼らは揺るぎない自信をもって、目の前に立ちふさがる正義の暴君に抗いました。

一方、そんな事が自分の後ろで起こっているとは、露ほども知らないニール。只ひたすらに、砂場の真ん中へと急ぎます。

「ミリナ、ファリナ。到着したら、すぐにあの子の心を捉えて!」

ニールが、作戦を指示します。

「わかったわ」
「わかったわ」

二人が、声を揃えます。ニールの態度から、本当にこれは尋常な事態ではないと、彼女たちは承知していました。

男の子は、凄まじい勢いで自分の方へやって来るニールに気づきましたが、状況を飲み込めず、おもちゃのシャベルや熊手を握ったままポカンとした表情でいます。変に動かれるより、これはニールに取って好都合でした。

現場に到着したニールは「ミリナ、ファリナ、お願い!」と、二人に乞います。

「まかせて」
「まかせて」

二人はすぐさまニールの頭を離れ、男の子の目の前に飛び出しました。

「さぁ、坊や。私たちと遊びましょ」

一見穏やかな彼女たちの言葉ですが、そこには魔法の力がこもっています。男の子は、一瞬で精霊たちの虜になりました。

ニールは、その機会を逃しません。彼は男の子の胴体を掴み、無理矢理に担ぎます。悠長に、彼と伴走する時間はないのです。
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