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幽霊と宝の塔 (17) 悲しき過去
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「違う。信じられないのは無理もないが、俺はホンドレックだ。今から証拠を見せる」
そう言うと、彼は突然に後ろを向き、上着を脱ぎだします。
何だ? いったいどういう事なんだ。
ホンドレックを名乗る男の奇妙な行動に、アトリオは増々、戸惑いました。
しかし目の前の男が上半身を露わにした時、アトリオの目は、彼の背中に釘付けとなります。
「そ、それは!」
そこには目をそらしたくなるような、大きなヤケドの跡がありました。この傷をアトリオが忘れた事は、只の一日だってありません。
まだ、彼らが子供の頃の話です。
好奇心旺盛なアトリオは、鍛冶屋を営むホンドレックの父親の工房を、どうしても見たいと頼みました。しかし頑固者の父親がそれを許さないのを知っていたホンドレックは、父親が少し席を外した隙を見て、アトリオを工房へと招き入れたのです。
アトリオは、大いに喜びました。しかし、悲劇はすぐに訪れます。勝手を知らない彼が、あたりかまわず探索した結果、鍛冶作業で使う炎を飛散させる事態に陥ってしまったのでした。
それは愚かなアトリオの元へ、ワッと降り注ぎます。しかし彼が、大きな不幸に見舞われそうになった時、ホンドレックがアトリオを庇うように彼へと抱きついたのでした。
恐ろしい炎の群れは、ホンドレックの背中を、これでもかというほどに痛めつけます。すぐに彼の父親が戻って来た事もあって、命までは奪われませんでしたが、ホンドレックの背中には、一生消えない惨事の跡が残りました。
そして何より、アトリオに取って辛かったのは、誰も彼を責めなかった事です。
ホンドレックの父親は自分の管理不行き届きだと言い、ホンドレック自身も、父親の言いつけを破ったのが原因だと言いました。
その後、ホンドレックの傷が癒えるのには数年かかり、リハビリも厳しいものとなったのを、アトレオはつぶさに見ていたのです。彼はその時の借りを、いつか必ず返そうといつも心に誓っておりました。
アトレオの目の前に晒されたのは、正にその時の傷と寸分たがわぬものだったのです。
「お、お前は、本当にホンドレックなのか……。でも、俺が村を出てから、まだ五年しか経っていない。それなのにお前は、もう六十近い年寄りに見える。
どうしてなんだ。何かの呪いにでも、かかったのか?」
嬉しいはずの友との再会は、さらに多くの謎をアトリオに課す事となりました。
ホンドレックが衣服をなおし、再びアトリオと対峙すると、それを見ていたパーパスが、
「呪いか……」
と、呟きます。
「いいか、落ちついて良く聞けよ。お前はさっき、五年ぶりの再会と言ったがそれは違う。俺がお前に最後に会った日。つまり、お前が村を出て王宮へ旅立った日。それは、今から約四十年前の事なんだ」
ホンドレックが、謎解きの口火を切りました。彼の顔に、苦悶の表情が浮かびあがります。
「よ、四十年前?」
アトリオには、ホンドレックが何を言っているのか、まるでわかりません。
「そうだ。四十年前だ」
ホンドレックが、繰り返します。
「バカな事を言うな。そんなわけないだろう? もしそうだと言うなら、俺の三十五年分の記憶はどこへ行ったんだ? それにどうして、俺は年を取らない?」
親友の余りに突拍子もない言葉に、アトリオは当然の如く反発しました。
「アトリオよ。お前の言い分は、もっともだ。すぐにそれを信じよと言っても、それは無理な話であろう」
話が水掛け論になる気配を察し、パーパスが話に割って入ります。
「そうだよ。そんな事、信じられるわけがないだろう。どうしてもそうだと言うのなら、何か証拠を見せてくれ」
アトリオは、魔法使いに詰め寄りました。
「致し方あるまいか……。ワシは先ほど、おぬしに、真実を知る事が幸せとは限らないと言った。おぬしは、それでもかまわないと答えた。
その覚悟に、変わりはないか?」
パーパスは、憂いを帯びた顔つきで尋ねます。
そう言うと、彼は突然に後ろを向き、上着を脱ぎだします。
何だ? いったいどういう事なんだ。
ホンドレックを名乗る男の奇妙な行動に、アトリオは増々、戸惑いました。
しかし目の前の男が上半身を露わにした時、アトリオの目は、彼の背中に釘付けとなります。
「そ、それは!」
そこには目をそらしたくなるような、大きなヤケドの跡がありました。この傷をアトリオが忘れた事は、只の一日だってありません。
まだ、彼らが子供の頃の話です。
好奇心旺盛なアトリオは、鍛冶屋を営むホンドレックの父親の工房を、どうしても見たいと頼みました。しかし頑固者の父親がそれを許さないのを知っていたホンドレックは、父親が少し席を外した隙を見て、アトリオを工房へと招き入れたのです。
アトリオは、大いに喜びました。しかし、悲劇はすぐに訪れます。勝手を知らない彼が、あたりかまわず探索した結果、鍛冶作業で使う炎を飛散させる事態に陥ってしまったのでした。
それは愚かなアトリオの元へ、ワッと降り注ぎます。しかし彼が、大きな不幸に見舞われそうになった時、ホンドレックがアトリオを庇うように彼へと抱きついたのでした。
恐ろしい炎の群れは、ホンドレックの背中を、これでもかというほどに痛めつけます。すぐに彼の父親が戻って来た事もあって、命までは奪われませんでしたが、ホンドレックの背中には、一生消えない惨事の跡が残りました。
そして何より、アトリオに取って辛かったのは、誰も彼を責めなかった事です。
ホンドレックの父親は自分の管理不行き届きだと言い、ホンドレック自身も、父親の言いつけを破ったのが原因だと言いました。
その後、ホンドレックの傷が癒えるのには数年かかり、リハビリも厳しいものとなったのを、アトレオはつぶさに見ていたのです。彼はその時の借りを、いつか必ず返そうといつも心に誓っておりました。
アトレオの目の前に晒されたのは、正にその時の傷と寸分たがわぬものだったのです。
「お、お前は、本当にホンドレックなのか……。でも、俺が村を出てから、まだ五年しか経っていない。それなのにお前は、もう六十近い年寄りに見える。
どうしてなんだ。何かの呪いにでも、かかったのか?」
嬉しいはずの友との再会は、さらに多くの謎をアトリオに課す事となりました。
ホンドレックが衣服をなおし、再びアトリオと対峙すると、それを見ていたパーパスが、
「呪いか……」
と、呟きます。
「いいか、落ちついて良く聞けよ。お前はさっき、五年ぶりの再会と言ったがそれは違う。俺がお前に最後に会った日。つまり、お前が村を出て王宮へ旅立った日。それは、今から約四十年前の事なんだ」
ホンドレックが、謎解きの口火を切りました。彼の顔に、苦悶の表情が浮かびあがります。
「よ、四十年前?」
アトリオには、ホンドレックが何を言っているのか、まるでわかりません。
「そうだ。四十年前だ」
ホンドレックが、繰り返します。
「バカな事を言うな。そんなわけないだろう? もしそうだと言うなら、俺の三十五年分の記憶はどこへ行ったんだ? それにどうして、俺は年を取らない?」
親友の余りに突拍子もない言葉に、アトリオは当然の如く反発しました。
「アトリオよ。お前の言い分は、もっともだ。すぐにそれを信じよと言っても、それは無理な話であろう」
話が水掛け論になる気配を察し、パーパスが話に割って入ります。
「そうだよ。そんな事、信じられるわけがないだろう。どうしてもそうだと言うのなら、何か証拠を見せてくれ」
アトリオは、魔法使いに詰め寄りました。
「致し方あるまいか……。ワシは先ほど、おぬしに、真実を知る事が幸せとは限らないと言った。おぬしは、それでもかまわないと答えた。
その覚悟に、変わりはないか?」
パーパスは、憂いを帯びた顔つきで尋ねます。
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