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以下、緊張感のない俺のモノローグ~

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 英語っぽい、けど英語でない何かを話すジュンの交渉は難航してるらしかった。
 ジュンが話してる軍人さん、なんかジュンと雰囲気似てるな、兄弟とか? 顔はあんまり似てないけど。

 正直言って、俺はジュンを過小評価していた気がする。
 ちょっと針金で鍵穴をいじっただけで手枷が外れてくれた俺はラッキーだったわけだが、魔法が使えないとか言いながらビー玉を水晶玉代わりに魔術使って牢破りって、いくらなんでもチート過ぎる。
 やっぱりヒーローは伊達じゃないな。
 この先も出来ればチートモードで……って、お前いったい何処から……!?

 見た目は40くらいのおっさん、俺たちの背後をどうやって取れたのかは知らないけど。
 ジュンの肩掴んで背中をぎゅーって、こいつらカップルかよ!!!
 下を向いて動かないジュン。
 恥ずかしいのか? くそッ、誰かこの状況を説明してくれ!
「動けない……!」
 もし二人が感動の再会をしていたならば、声をかけるのは野暮だろう。
 ジュンは拳を握りしめ、プルプル動いている。腕に添うようにおっさんの腕がピッタリくっついて、ジュンの手首にはおっさんの杖の先が……あっ
 杖を持っていない、おっさんの左手がいやらしく動いて、それからジュンの首筋に口づけをする。
「やめて……!」
 俺は夢中でおっさんを、ジュンの身体から離れさせようと肩を掴んだ。
「俺のダチに何してんだよ」
 手ぇ出したら殺られる。完全に俺の勘だがそれはわかる。
 だから俺は夢中でおっさんに眼をとばした。
 案の定軍人さんの凄まじい殺気が俺に刺さるけど、ジュンの命が懸かってるから俺だって譲れない。
 色の変わる水晶の持ち主。俺の予想が正しければ、コイツがラスボス……!
「桜牙くんやめ「ジュンが嫌がってんだろ」
 ジュンは抵抗しなかったんじゃない、きっとコイツの杖から、人間を殺す光線でも出るもんだから抵抗出来なかったんだろう。
 ……沈黙。
 時間が止まったみたいに、誰も何もしない。何この間。
 ……もしかして俺の勘違い?
「あの、ジュン、もしかしてーー」
 本当にコイツと付き合ってんのか?
 聞きたかったけど超デリケートな内容、ジュンを傷付けることは言いたくなかった。
 代わりに何か言おうとした時。
「OK。……君が王子の協力者ですか。お話があります」
 いつの間にか俺の首もとに迫っていた軍人さんの剣。それを戻すよう命令するのが、ジェスチャーでなんとなくわかる。
「王子と家来の君を、今日のディナーに招待します。それまでどうぞ城内にておくつろぎください」
 俺は気にせず喋ったけど、通じないはずの日本語を理解し流暢に返答したラスボス(総督、だっけ)に、俺はろくな返答が出来なかった。
 初めから晩飯ご馳走する気なら、なんで牢屋に閉じ込めた!?
つかそれ以前。
「俺、家来じゃねぇし……」
ジュンは総督から解放されてからも、終始無言だった。
「なんか、暴れてごめんな。一個聞いてもいい?」
「……ありがとう。ちゃんと説明するから」
「さっき俺が喋ったおっさんが総督。で合ってるよな?」
 言い換えるなら、おまいら付き合ってないよな? という確認。
 いや。その言い方だと俺がジュンのこと狙ってるみたいじゃねぇか。ジュンに恋人がいるのは別にいい。たとえ歳上の男とかでも自由に恋愛すればいい。
 だけど。どう転んでも、俺は近いうちにジュンとは別れることになるんだろう。それは寂しい気もするけど……。
「アクア総督。この国の最高権力者だ。でも心配しないで、桜牙くんの帰国は交渉すれば何とかなると思う。その為の晩餐だもの」
 ジュンは目に溜まった涙を吹いて、不安そうな表情からにわかに笑ってみせた。
 俺は帰国できるかもしれない。けど、ジュンがこれからどうなるかはわからない。
 自分の前途が全く見えない中、まるで俺のためみたいに笑ってみせるヒーローは強い。
「最高権力者ですか。私は褒められているのかな? それとも王室と血の繋がりのない私への嫌味かい?」
「っ! まさか」
 総督が日本語を使うのをジュンは驚いている。
 わからないけど、試している? 総督がどれほど日本語を理解できるか。何のためだ?
 一つ思い当たることはあった。総督の狙いがわからない今、何か作戦があるわけじゃないが俺たちの会話はできれば聞かれたくない。
 あとは、総督が日本語を話す方法か……。
「だが、この状況ももうじき変わる。私は晴れて王族になる。……そこで聞き耳をたてているのはわかっているよ、王女」
 総督の声に左の角から出てきたのは(なんで総督が女の子に気づいたかは謎)クリーム色のふわっとした、フランス生まれのマリーさんが着ていそうなドレスを着た女の子。
 ジュンの名前を叫んで一直線にドレスの裾を持ち上げ走っていく、金髪のマリーさん。
 あくまで平静を取り繕い、マリーさんの前で膝間付いたジュン。
 マリーさんもとい女の子に何か言って、手の甲に口づけをするジュンは、女の子と目も合わせずに、目を瞑った。
 ジュンの手は震えている。俺は直感した。

ーー運命は、残酷だ。


    
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