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再会編(ヒューSIDE)
後始末②
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今度はすんなりと面会がかなった。昨日あれだけ待たされたのは何だろう。
「襲撃事件の方、進展はあったかな?」
「それが、誤解だと。貴方にいきなり斬りつけられたと……」
「……へえ。じゃあ、あの場で死にたかったとそう言ったんだね?」
「は? いや」
「自分たちの罪も認めず、僕が悪いと? 死ぬより酷い目にあいたいのかな。わかった。収容所に案内して。僕が拷……話し合いをするから」
「いや、それは……」
「僕は加害者なんだろう? 出頭しようと言っているんだよ。僕が大人しくしている間に案内したほうがいいよ。ねえ、ミハーラに聞いてない? 襲撃事件は僕に任すと。あんたは大人しく、ワイバーンの方の報酬を黙って用意すればいい。僕の求めているのはそれだけだ」
「ミハーラ、統括ギルド長、のことか? いや、聞いてない……が?」
「もう、ちゃんと伝えておいてよ。もしもし? ミハーラ? ギルドマスターがミハーラの指示聞いてないって」
俺は通信機……いや、もうスマホでいいんじゃないかな。スマホを取り出して、ミハーラにつなぐ。
『せっかちが過ぎるな。ヒュー』
ため息とともにミハーラの声が聞こえる。何に対してのせっかちだよ。俺がせっかちだったら、デッザはもう跡形もないよ。
「今ギルドにいるんだけど、事件のこと聞いたら、僕が悪いとか言ってるんだって。やっちゃっていいよね?」
『……目の前にいるのか。わかった。悪いがギルドマスターに変わってくれないか』
スマホをギルドマスターに渡した。ギルドマスターは「魔道具?」と呟いて受け取って、恐る恐る耳にあてた。
通信機とメルトに渡した魔道具のイヤーカフは魔導回路のコンセプトが全く違う。
通信機は前世の電話やインターネットをもとにして作ったが、イヤーカフは念話の魔法を組み込んだ、よりファンタジーなものだ。魔力さえあれば起動できるし、俺限定だけど、相手が見ているものも見える。GPS機能的な回路も組み込んである。
通信の魔道具は魔石が電池の代わりをしている。スマホ型は魔力を充填できるようにしているから魔力切れはない。現状この一台しか、携帯型はないけどね。
ギルドの通信網は俺が作ったけど、据え置き型で大きいから、使ったことのあるはずのギルドマスターも驚いたのか?
音声はハンズフリーにしているから俺にも聞こえる。
『彼は冒険者だが、他国の王族だ。失礼のないようにしなさい。彼に何かがあると戦争になる。わかりましたね? 襲撃した者たちはある程度彼に任せ、先の依頼、ワイバーンの調査結果を至急、私の元に通信で送りなさい。竜騎士団に報告しなければならないはずです』
「は、はい……わかりました」
スマホを返してもらって、にこりと笑う。
それからは早かった。
副ギルドマスターに襲撃者が拘束されている収容所に案内された。
冒険者ギルドの取り調べと言えば簡単に面会ができた。
俺を見て全員きょとんとした。
まあ、あの時は大人の姿だったからね。
「さて、僕の大事な大事な伴侶に手を出したんだから、覚悟はできているよね?」
威圧をかけた。覚えがあるだろう? この圧力は。
「か、はっ」
バタバタと椅子から彼らが転げ落ちた。両手を縛られているから、受け身も取れてなかった。
「僕が、いきなり斬りつけた? 僕が本気なら、こうだ」
近くにあったテーブルに手を添えて重力魔法を展開する。バキバキと音を立てて、上から見えない手に押し潰されたように、ぺしゃんこになる。
「ああ、もっと効率的な方法もある」
テーブルが一瞬燃え、あとには灰しか残らなかった。
「いいか? 僕は我慢してるんだよ。僕の贈った魔道具を狙ったんだろう?」
俺は魔石を出し、そこにメルトの目を借りて見た、映像を書き込む。
映写の魔道具を出して壁に向けて映し出した。
そこには、鍛錬場の扉の前に並び、下卑た表情をした、彼らの姿、声が映った。
『お手合わせしたついでに手合わせ料としてその魔道具をもらおうか?』
『まあ、この人数とやりあったら生きていられるかわからねえけどな』
『殺す前に啼かせるのもいいんじゃないか?』
『ガタイの良いメイルをヤルのもいいかもな』
じりじりとメルトを囲むように近づく彼ら。
そこに俺が映り込んで切れる。
立ち合いの収容所の監視職員が、驚いた顔で立っていた。
俺は映写機を仕舞った。
「さて、一人を囲んで、今から襲います―って気満々の凶器の剣を抜いているお前達を見て、殺さなかっただけ、ありがたいと思ってほしいものだけど」
青い顔で転がっている彼らは容易く陥落した。
副ギルドマスターと、立ち合いの警備兵はぽかんとした顔をしていたけど。
「あとは任せていいかな? 明日、報酬を受け取りに行くから用意しておいて。ああ、あとこいつらとつるんでるギルド職員も2名ほどいるはずだから、そいつの名前も聞いたほうがいいよ。本部へ報告するべきだね」
副ギルドマスターにそう言って、俺は収容所を出た。
「結局、殴りも、殺しも出来なかったな。まあ、いいや。次に同じことをしたらその時は潰せばいい。街ごとでも国ごとでも」
独り言ちて、宿に向かった。
部屋の前で鍵を外す。結界は維持したほうがいいだろう。防音にもなっているから、ちょうどいい。
部屋に入ってまた施錠する。用心するに越したことはない。
異常がないか確認してメルトの眠るベッドに向かった。
俺は浄化の魔法を使ってから服を脱いでメルトの横に滑り込む。
すうすうと寝息を立てているメルトの頭をゆっくりと撫でる。スリープの魔法は解除した。
そっと、メルトのイヤーカフに指で触れた。何もなくてよかった。
よく、あの時連絡してくれた。メルトは強いから何とかなったかもしれないけど、メルトにはトラウマがあるから、いつも通りにできたかわからない。
大人の姿になって、メルトを抱き寄せた。肌を寄せ合っているだけなのに、お互いの魔力を感じて、気持ちがいい。
俺のほうが魔力が多いから、メルトは耐え切れなくて、意識を落としてしまうんだろう。慣れてしまえばもう少し耐えられると思う。魔力回路も太くなって上限が上がるはずだ。
そうなればメルトは魔法を使える。生活魔法をまず覚えてもらって、それから得意な属性を探そう。多分、無属性の身体強化が得意になると思うけど遠距離攻撃の手段が欲しいだろうと思う。剣のスキルに斬撃があるけど、もっと汎用性のあるのがいい。
メルトが使いたい魔法は何だろうな。
考えているうちに俺は眠ってしまった。
「襲撃事件の方、進展はあったかな?」
「それが、誤解だと。貴方にいきなり斬りつけられたと……」
「……へえ。じゃあ、あの場で死にたかったとそう言ったんだね?」
「は? いや」
「自分たちの罪も認めず、僕が悪いと? 死ぬより酷い目にあいたいのかな。わかった。収容所に案内して。僕が拷……話し合いをするから」
「いや、それは……」
「僕は加害者なんだろう? 出頭しようと言っているんだよ。僕が大人しくしている間に案内したほうがいいよ。ねえ、ミハーラに聞いてない? 襲撃事件は僕に任すと。あんたは大人しく、ワイバーンの方の報酬を黙って用意すればいい。僕の求めているのはそれだけだ」
「ミハーラ、統括ギルド長、のことか? いや、聞いてない……が?」
「もう、ちゃんと伝えておいてよ。もしもし? ミハーラ? ギルドマスターがミハーラの指示聞いてないって」
俺は通信機……いや、もうスマホでいいんじゃないかな。スマホを取り出して、ミハーラにつなぐ。
『せっかちが過ぎるな。ヒュー』
ため息とともにミハーラの声が聞こえる。何に対してのせっかちだよ。俺がせっかちだったら、デッザはもう跡形もないよ。
「今ギルドにいるんだけど、事件のこと聞いたら、僕が悪いとか言ってるんだって。やっちゃっていいよね?」
『……目の前にいるのか。わかった。悪いがギルドマスターに変わってくれないか』
スマホをギルドマスターに渡した。ギルドマスターは「魔道具?」と呟いて受け取って、恐る恐る耳にあてた。
通信機とメルトに渡した魔道具のイヤーカフは魔導回路のコンセプトが全く違う。
通信機は前世の電話やインターネットをもとにして作ったが、イヤーカフは念話の魔法を組み込んだ、よりファンタジーなものだ。魔力さえあれば起動できるし、俺限定だけど、相手が見ているものも見える。GPS機能的な回路も組み込んである。
通信の魔道具は魔石が電池の代わりをしている。スマホ型は魔力を充填できるようにしているから魔力切れはない。現状この一台しか、携帯型はないけどね。
ギルドの通信網は俺が作ったけど、据え置き型で大きいから、使ったことのあるはずのギルドマスターも驚いたのか?
音声はハンズフリーにしているから俺にも聞こえる。
『彼は冒険者だが、他国の王族だ。失礼のないようにしなさい。彼に何かがあると戦争になる。わかりましたね? 襲撃した者たちはある程度彼に任せ、先の依頼、ワイバーンの調査結果を至急、私の元に通信で送りなさい。竜騎士団に報告しなければならないはずです』
「は、はい……わかりました」
スマホを返してもらって、にこりと笑う。
それからは早かった。
副ギルドマスターに襲撃者が拘束されている収容所に案内された。
冒険者ギルドの取り調べと言えば簡単に面会ができた。
俺を見て全員きょとんとした。
まあ、あの時は大人の姿だったからね。
「さて、僕の大事な大事な伴侶に手を出したんだから、覚悟はできているよね?」
威圧をかけた。覚えがあるだろう? この圧力は。
「か、はっ」
バタバタと椅子から彼らが転げ落ちた。両手を縛られているから、受け身も取れてなかった。
「僕が、いきなり斬りつけた? 僕が本気なら、こうだ」
近くにあったテーブルに手を添えて重力魔法を展開する。バキバキと音を立てて、上から見えない手に押し潰されたように、ぺしゃんこになる。
「ああ、もっと効率的な方法もある」
テーブルが一瞬燃え、あとには灰しか残らなかった。
「いいか? 僕は我慢してるんだよ。僕の贈った魔道具を狙ったんだろう?」
俺は魔石を出し、そこにメルトの目を借りて見た、映像を書き込む。
映写の魔道具を出して壁に向けて映し出した。
そこには、鍛錬場の扉の前に並び、下卑た表情をした、彼らの姿、声が映った。
『お手合わせしたついでに手合わせ料としてその魔道具をもらおうか?』
『まあ、この人数とやりあったら生きていられるかわからねえけどな』
『殺す前に啼かせるのもいいんじゃないか?』
『ガタイの良いメイルをヤルのもいいかもな』
じりじりとメルトを囲むように近づく彼ら。
そこに俺が映り込んで切れる。
立ち合いの収容所の監視職員が、驚いた顔で立っていた。
俺は映写機を仕舞った。
「さて、一人を囲んで、今から襲います―って気満々の凶器の剣を抜いているお前達を見て、殺さなかっただけ、ありがたいと思ってほしいものだけど」
青い顔で転がっている彼らは容易く陥落した。
副ギルドマスターと、立ち合いの警備兵はぽかんとした顔をしていたけど。
「あとは任せていいかな? 明日、報酬を受け取りに行くから用意しておいて。ああ、あとこいつらとつるんでるギルド職員も2名ほどいるはずだから、そいつの名前も聞いたほうがいいよ。本部へ報告するべきだね」
副ギルドマスターにそう言って、俺は収容所を出た。
「結局、殴りも、殺しも出来なかったな。まあ、いいや。次に同じことをしたらその時は潰せばいい。街ごとでも国ごとでも」
独り言ちて、宿に向かった。
部屋の前で鍵を外す。結界は維持したほうがいいだろう。防音にもなっているから、ちょうどいい。
部屋に入ってまた施錠する。用心するに越したことはない。
異常がないか確認してメルトの眠るベッドに向かった。
俺は浄化の魔法を使ってから服を脱いでメルトの横に滑り込む。
すうすうと寝息を立てているメルトの頭をゆっくりと撫でる。スリープの魔法は解除した。
そっと、メルトのイヤーカフに指で触れた。何もなくてよかった。
よく、あの時連絡してくれた。メルトは強いから何とかなったかもしれないけど、メルトにはトラウマがあるから、いつも通りにできたかわからない。
大人の姿になって、メルトを抱き寄せた。肌を寄せ合っているだけなのに、お互いの魔力を感じて、気持ちがいい。
俺のほうが魔力が多いから、メルトは耐え切れなくて、意識を落としてしまうんだろう。慣れてしまえばもう少し耐えられると思う。魔力回路も太くなって上限が上がるはずだ。
そうなればメルトは魔法を使える。生活魔法をまず覚えてもらって、それから得意な属性を探そう。多分、無属性の身体強化が得意になると思うけど遠距離攻撃の手段が欲しいだろうと思う。剣のスキルに斬撃があるけど、もっと汎用性のあるのがいい。
メルトが使いたい魔法は何だろうな。
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