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11.
「…ん…」
涼香が掠れた声を零しながら、重い瞼を開けた。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、静寂に包まれるスイートルームを、白く照らしている。
「……、ひっ!」
身体を起こし周囲を見渡すと、そこには信じられない光景が広がっていた。
ひんやりとシーツの冷たさを直に感じる自分の身体は、あられもない無防備な裸。
そしてその隣には、同じく生まれたままの姿の恵が、深い眠りについていた。
涼香は昨夜の熱い夜を思い出し、火照る頰を両手で覆う。
「私…昨日、この人と…っ」
昨夜の激しい情事……自分の奥深くを貫いた余韻や、恵が漏らした、まるで獣の呻きの様な喘ぎ声が鮮明に思い出され、涼香は沸き立つ羞恥心に襲われて、堪らず頭を両手で抱えた。
「(…こんなこと、あって良い筈が無い!)」
昨夜のことは、何かの間違いだ。あの場、そして…この人が宿した熱に浮かされて、一夜の夢を見ただけなんだ。
逃げよう、一刻も早くここから逃げなければ。
跳ねる様にベッドから降りた涼香は、慌てて床に散らばったブラウスとスカート、そして眼鏡を必死に回収した。指先が震えボタンがうまく留まらない。でも彼が目を覚ます前に、一刻も早くここを去らないと。
元々簡素だったメイクはそのままに、乱れた髪を指で簡単に梳く。
全ての自宅を終えても一息吐く間もなく、鞄を取って扉へと向かおうとした時、涼香は一瞬だけ、ベッドで微睡む恵の背中に視線を送った。
『とても綺麗です』
「…………」
自分の目を真っ直ぐ見て、言ってくれた言葉。
トップ俳優としての演技だったとしても、あの言葉が涼香の冷たい心をほんのりと温め、この場を去ろうとする意志を溶かそうとしてくる。
しかし………
涼香の脳裏に、拭いきれないかつての自分の“叫び”が聞こえてくる。
『止めて…止めて……見ないで!』
『“今”の私を…お願い……』
「…っ、…」
あの日、あの時……日陰の中でひっそりと、目立たずに、地味に生きていくと決めたのだ。
「(私は…この人の“光”に、照らされては、いけない……)」
涼香は絆されかけた自分を強く律し、極力音を立てないよう、重い扉を開けてスイートルームを後にすると、足早にエレベーターへと駆け込んだ。
エントランスを出て、一応周囲を見渡してみる。
スモークガラスの車も怪しい人影も無いのを確認すると、涼香はようやくホッと一息吐き、彼女が生きる“日常”へと溶け込むように、人がまばらの通りを歩いて行った。
涼香が掠れた声を零しながら、重い瞼を開けた。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、静寂に包まれるスイートルームを、白く照らしている。
「……、ひっ!」
身体を起こし周囲を見渡すと、そこには信じられない光景が広がっていた。
ひんやりとシーツの冷たさを直に感じる自分の身体は、あられもない無防備な裸。
そしてその隣には、同じく生まれたままの姿の恵が、深い眠りについていた。
涼香は昨夜の熱い夜を思い出し、火照る頰を両手で覆う。
「私…昨日、この人と…っ」
昨夜の激しい情事……自分の奥深くを貫いた余韻や、恵が漏らした、まるで獣の呻きの様な喘ぎ声が鮮明に思い出され、涼香は沸き立つ羞恥心に襲われて、堪らず頭を両手で抱えた。
「(…こんなこと、あって良い筈が無い!)」
昨夜のことは、何かの間違いだ。あの場、そして…この人が宿した熱に浮かされて、一夜の夢を見ただけなんだ。
逃げよう、一刻も早くここから逃げなければ。
跳ねる様にベッドから降りた涼香は、慌てて床に散らばったブラウスとスカート、そして眼鏡を必死に回収した。指先が震えボタンがうまく留まらない。でも彼が目を覚ます前に、一刻も早くここを去らないと。
元々簡素だったメイクはそのままに、乱れた髪を指で簡単に梳く。
全ての自宅を終えても一息吐く間もなく、鞄を取って扉へと向かおうとした時、涼香は一瞬だけ、ベッドで微睡む恵の背中に視線を送った。
『とても綺麗です』
「…………」
自分の目を真っ直ぐ見て、言ってくれた言葉。
トップ俳優としての演技だったとしても、あの言葉が涼香の冷たい心をほんのりと温め、この場を去ろうとする意志を溶かそうとしてくる。
しかし………
涼香の脳裏に、拭いきれないかつての自分の“叫び”が聞こえてくる。
『止めて…止めて……見ないで!』
『“今”の私を…お願い……』
「…っ、…」
あの日、あの時……日陰の中でひっそりと、目立たずに、地味に生きていくと決めたのだ。
「(私は…この人の“光”に、照らされては、いけない……)」
涼香は絆されかけた自分を強く律し、極力音を立てないよう、重い扉を開けてスイートルームを後にすると、足早にエレベーターへと駆け込んだ。
エントランスを出て、一応周囲を見渡してみる。
スモークガラスの車も怪しい人影も無いのを確認すると、涼香はようやくホッと一息吐き、彼女が生きる“日常”へと溶け込むように、人がまばらの通りを歩いて行った。
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