私が目覚めたのは断罪劇の真っ最中でした

アーエル

文字の大きさ
6 / 7
マドンナ視点

何が起きているの?




わたくしが女生徒に危害を加えたなどという、やってもいない罪を被せられて婚約破棄を告げられました。

「わたくしはそのようなこと、やってなどおりませぬ!」

わたくしはやってもいない罪を認めることなど出来るはずがない。
それはすなわち公爵家の不名誉にもなるからです。
しかし、誰ひとりとして信じることも庇うこともしてくださらない。
頼りとなる父は外交で出ているため、本日のパーティーに不参加。
公爵家の派閥の方たちは、相手が王太子という立場だからでしょうか。
目が合っても顔を背けられます。
我が家の寄子もまた、公爵家の総領娘を護ることもなさいません。
この会場に参加している皆様から見捨てられたことを嫌でも実感します。

そんな悲しみで胸が張り裂けそうなわたくしの口から、思ってもいない言葉が飛び出しました。

「今北産業、説明ぷりーず」

わたくしの身に何が起きたというのでしょう。
ですが自身を「マドンナ」と名乗ったは、教皇レーベン様の言葉を黙って聞かれています。

「はあ? 浮気を正当化してるのかよ、クズだな」

レーベン様だけでなくこの場にいる方々に『異世界の常識』をこの国の偏った常識と照らし合わせて次々と論破していかれます。
王太子殿下の主張がまかりとおるのであれば、わたくしたち貴族は異父・異母のきょうだいで婚姻をしている可能性はございます。
が甥や姪と関係を持っている可能性もございます。
その事実を指摘されて、背筋が凍る思いをしました。

当公爵家も血筋を辿れば王族に行き着きます。
我が国でも数少ない、品行方正を実行しています。
…………一部の寄子当主夫妻の顔色も悪いですね。
寄親の決めたことが守れない御一家とは、今後の付き合いを考えないとダメですね。

そして次に、国の上層部でも限られた重要なお立場の方しか知らないであろういびつなこの国の外交をあからさまにされただけでなく、堂々と批判もなされた。

「黙れ、マドンナ!」

レーベン様から魔力がはっしされたのが分かりました。
ですが、驚くことが起きたのです。
魔力はわたくしの目の前でのです。
まるで目標を探すように、わたくしのまわりを漂っています。
つまり……わたくしの代わりにわたくしの潔白を明らかにされた方の名は『マドンナではない』ということです。
そしては表舞台から隠されて下げられているため、標的から外れているのです。

驚きはそれだけではございませんでした。

「お前には南国のハーレムにでも入ってもらおうか」

「やなこった」

レーベン様のお言葉に短く反論なさったのです。
驚かれたレーベン様にマドンナ様はこうも仰ったのです、「レーベン、お前が行って来い」と。
その瞬間、行き場をなくしてわたくしのまわりを漂っていた魔力がレーベン様に向かって飛んでいきました。

「…………はい、わかりました。私が参ります」

顔から感情が失われたレーベン様は、頭を下げて恭順の意思を示されます。
レーベン様がマドンナ様のしもべとなった瞬間でした。

「これまでに関わった連中も一緒に出荷させろよ。
これがこの国最後の出荷だ、取りこぼしは許さない」

出荷という名のです。
国王陛下も宰相様も大臣の肩書を持つ方々も関わっておりました。

「国王と宰相、外務大臣に防衛大臣。
まつりごとに関わる者は罪一等つみいっとうげんじて出荷を免除。
ただし一生涯をかけて国に奉仕という形でその罪をつぐなうものとする」

わたくしは恥ずかしながらまつりごとに携わっている方々も出荷するものだと思っておりました。
ですが、彼らは一生涯を国に捧げるという形であがなわせると決められたのです。
のちにそのことを知った国王になられたお父様は「王になるに相応しいお方だった」と仰られました。
国のために罪をげんじていまの職務をまっとうさせる。
それは生き地獄でもあるそうです。
犯した罪をまわりは知っております。
すべての評価の影にはその罪が見え隠れし、「あのような罪を犯したくせに」と言われ続けるのです。

騒ぎを起こした当事者たちは、マドンナ様が農役夫のうえきふを望んだにも関わらず、レーベン様が農奴のうどに引き下げてしまいました。
彼らの恨みはすべてレーベン様が受けることになったのです。
レーベン様はご自身の立場が引き下げられたことによる恨みをぶつけたのでしょう。
自我を封じなかったがために逆に激しく恨まれてしまい、ハーフエルフのレーベン様は呪いとそれに伴う痛みで苦しみながら残りの生涯を生き続けるでしょう。

「いまこれより、王家は彼ら公爵家に引き継がれるものとする!」

この言葉に従い、我が公爵家は王家となり、国王陛下と王妃殿下は公爵家へと臣籍降下なさいました。
王子殿下や王女殿下も公爵子息・令嬢となりましたが婚約は継続となり、国内外へと散っていかれました。


あなたにおすすめの小説

「毒が効かない体になるまで毒を盛られた令嬢は、復讐なんて望まない——ただ、助けもしないだけ」

歩人
ファンタジー
侯爵令嬢エレーナは、義母と義妹に3年間毒を盛られ続けた。「病弱な姉」として 社交界から消し、財産と婚約者を奪う計画——しかしエレーナには、前世の記憶から 来る毒物の知識があった。毒の種類を特定し、密かに解毒しながら「弱った姉」を 演じ続け、証拠が積み上がるのを待つ。卒業の夜会で義妹が勝ち誇るその場で、 エレーナは3年分の診断書を差し出す。「復讐? いいえ。ただ、もう助けないだけ」

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

何もしなかっただけです

希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。 それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。 ――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。 AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

「黙れ」と一度も言わなかった令嬢が、正論だけで公爵家を詰ませた件

歩人
ファンタジー
伯爵令嬢リーゼロッテは法学を修めた才媛だが、婚約者の第一王子レオンハルトに 「お前は退屈だ」と婚約を破棄される。彼女は一言も反論せず深く礼をした。 しかしその裏で、王子が横領した予算や成果の偽装を全て法廷記録から文書化していた。 謁見の間での公開弁論。声を荒げず、淡々と事実と法を並べていくリーゼロッテに、 王子は「黙れ」と叫ぶしかない。 「それが殿下の唯一の反論ですか?」——正論だけで公爵家を詰ませた令嬢の物語。