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マドンナ視点
「直接お会いしたかったです」
長子継承へと舵を切った我が国。
わたくしは次期女王となるべく研鑽の日々を過ごしております。
元々王太子妃となるべく学んでいたため、基礎学習は済んでおります。
いまは旧体制を打ち破るべく、他国の政治などから取り込める知識や法律、経営学を研究しているのです。
「マドンナ王女殿下、少し休憩しましょう」
そう声をかけてきたのは、隣国の第二王子殿下。
あのとき外交で滞在していたお父様と共に駆けつけてくださった方です。
隣国は王妃となられたお母様の生国であり、学友としてそして一番の親友として親交を続けてこられた間柄の御子息でもあります。
わたくしが政略で婚約しなければ、国交を理由に第二王子殿下……アドベルトと婚約していたのです。
わたくしが次期女王となるため、王配になってくださることとなりました。
休憩に入ると、わたくしたちはプライベートの時間に入ります。
公私を明確に区切るため、わたくしたちは敬称を使い分けています。
とは言っても、互いを『殿下』と敬称なしになるだけですが。
「マ・ドンナ、私の淑女」
愛し気な表情でそう呼んで、わたくしが差し出した手の甲に口を近付けるアドベルト。
許しがなければ接触しないのよ。
この呼び方は、マドンナ様から得た知識。
彼女とはわずかな邂逅でしたが、彼女から得られた知識は計り知れないものでした。
『王を戴かない国』
そんな国が異世界には存在する。
すべては得られなかったけど、仕組みは把握できた。
そして税率と医療や福祉。
庶民のための学校。
算術ができて識字率が上がれば、選択できる職種が増える。
そして上からの指示で動くのではなく、自身で考えて先を読み動く。
「マドンナ様の置き土産を取り入れてみてはいかがでしょうか」
新しい国、新しい政策。
試す価値はあるでしょう。
ただ、『マドンナ様の知識』に触れたのはわたくしひとり。
そのため、こうしてわたくしが草案として書き上げたものを実現可能か否かを話し合い、手を加えたり削ぎ落として我が国に合った形に組み立てます。
実証実験は、臣籍降下した旧王家が封じられた旧王領地のひとつ。
領民も初めは反発も見られましたが、成功するに従って生活が安定して暮らしが良くなることを実感したのでしょう。
いまでは『公爵家による直接的な領地経営がなくとも』繁栄されています。
公爵家ですか?
消費税などの税金は経営者から預かってからまとめて納められます。
ですが、経営に関わる書類は経営者から直接国へ届きます。
税率は国で決められているため、勝手に引き上げることはできません。
各領地では自領の生産物や特産品で領外との輸出入をするために商会を運営します。
もちろん、領民から適切な金額で卸してもらいます。
それにいくらか上乗せして他領や王都に開いた商会で販売するのです。
その売り上げが各貴族の収入となります。
旧王家の皆さんは、そのことを知らなったようです。
公爵家となった初年度に新たな政策検証が行われたことで収入が減りました。
とはいえ、公爵領になった旧王領地にも商会があり、領内の生産物を領内で流通させていました。
王都から役人が派遣され、領内で滞っていた流通を領地外へ。
そして王都に出店させることで領地経営は回復しつつあります。
学校はまず孤児院から始まりました。
学ぶことで出来ることが広がり、好奇心から始まった勉学は彼らに『ただ搾取されるだけの存在から脱する知識』へと変えることに成功しました。
成功例があれば、学校の存在は受け入れられました。
一般的に算術や識字のみを教える学校だけではありません。
農作業の知識や経営学、料理に至る専門的な知識を教える学部が新設されました。
基礎知識のみ学費は免除な上に昼食も無料で提供されます。
王都では、学生寮併設の専門学校も開校しました。
学費は必要ですが、寮費や生活費は無料です。
ただし、成績が定められたラインを下回れば即退寮。
王都内には下宿屋もあるため、そこで生活しながら通学を続けることは可能です。
「直接お会いしたかったです」
彼女から齎された知識は、私たちの生活に浸透し始めています。
わたくしを救い、間違いを正し、国は大きく転換してわたくしの時代で王政を終了しました。
わたくしたちの成功を知った各国から使節団が訪れて、国の仕組みを学んで帰国されます。
その中で、王政は変わらないものの領地経営に少しずつ取り入れられているようです。
「直接お会いしたかったです」
彼女から齎された知識は、私たちの生活に浸透し始めています。
わたくしを救い、間違いを正し、国は大きく転換してわたくしの時代で王政を終了しました。
わたくしたちの成功を知った各国から使節団が訪れて、国の仕組みを学んで帰国されます。
その中で、王政は変わらないものの領地経営に少しずつ取り入れられているようです。
「お礼を言いたかった」
それを願っているのはわたくしだけではありません。
もちろんそれが叶わないのは誰もが理解しております。
うしろに倒れかけたわたくしがお父様に支えられた瞬間に見た、微笑んでわたくしを見下ろす優しいお顔。
慌てて右手を伸ばした。
「ありがとう! ありがとうございました!」
わたくしの声が届いたのか、微笑んで手を振ってくださった。
そして「これからも前を向いて生きて」との声が返ってきた。
薄れていく姿に「はい!!」という決意の声を張りあげた。
だからわたくしは、いいえわたくしたちはこの世界をかえていきます。
それがマドンナ様へできる唯一の恩返しだと思うから。
〈了〉
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