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第三章

むかしばなし

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遠い・・・遠い・・・。


ずっと、ずっと昔。



魔力の『底』を持たない
少女がいた。


少女は両親から引き離され

『賢者』の称号を与えられて

国王自ら腕輪を贈られた。



『隷属の腕輪ブレスレット』を。




研究所では

『実験台』として。



戦場では

魔法使いたちの『魔力のタンク』として

・・・そして『慰み者』として。



人として扱われない日々。




そんな少女に
『愛しい相手』が現れた。


お互い思いあっていたが
それを表に出すことは出来なかった。



その頃には

魔法使いたちの中には

少女に同情する者たちや
慈しむ者たちが
現れ始めていた。



しかし
少女自身も
愛しい相手も
魔法使いたちも

どうすることも出来なかった。





そして
王たちもまた
魔法使いたちに手を出せなかった。


少女の最大の魔法は『感情』だった。


一度
研究所で感情を爆発させてしまった時は

その場にいた研究所職員の大半が
即死・発狂した。

迂闊にも
『両親や家族の公開処刑』を話した
研究所職員がいたのだ。





そんなある日
ある『特殊な魔石』を持った少年が現れた。


その少年は言う。

「この魔石に、世界中に散らばる『聖魔法』を移しなさい。魔石が『聖石』になれば、壊れた『魔力の底』が修復されるでしょう」


少年が魔石を腕輪ブレスレットに当てると、腕輪ブレスレットは一瞬で砂と化した。




少女側に立つ魔法使いや騎士たちは
少女と『愛しい相手』と共に
王城から転移した。





そして『隠れ里』が出来た。



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