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第三章
ある男の『告白』
しおりを挟む世界から隔絶しているとはいえ
戦争などの争いから
『隠れ里』を守るために
外に出る一族がいる。
彼らは
賢者たちと共に王城を出た
騎士たちの末裔だった。
ある年
外に出た男性が
半年経っても
隠れ里へ戻ってこなかった。
男性の許嫁だった女性が
村長の許可を得ず
彼を探しに村を出た。
彼女は探した。
愛しい彼を。
彼を見つけたのは
王都だった。
調査が長引き
帰りが遅くなっていただけだった。
彼は驚いていたが
彼女と夫婦となった。
そんな二人を不幸が襲った。
彼女の姿を見初めた国王に
彼女が連れ去られたのだ。
彼は取り戻そうとしたが
周りから止められてしまった。
下手に手を出せば
地区に住む老若男女全員が処刑される。
彼も
住人が処刑された地区で
『家具付』の家を手に入れた一人だった。
そして
彼女が『王子』を生んだ。
荒んだ彼は
盗賊を生業とした。
時は過ぎ
彼女が亡くなった。
彼女の息子は
王城から身一つで放り出された。
国王には
すでに跡継ぎがいる。
それに
国王は『彼女』を気に入っていただけで
『息子』は
彼女の『付属物』程度でしかなかった。
彼は
身を明かさず
『彼女の忘れ形見』に声をかけた。
子供は
『盗賊』なら
子供一人でも生きていけると考え
ついて行った。
彼は子供と過ごすうちに
あることに気が付いた。
子供が身に纏う『気』が
隠れ里独特のものだった。
初めは
『彼女の忘れ形見』だからと思っていたが
どうも『それだけではない』ようだ。
疑問が『確信』になったのは
子供がケガをした時だった。
王城内にある魔導研究施設で
爆発事故が起きた。
甚大な被害を出した
大事故だったにも関わらず
巻き込まれた子供は
かすり傷程度で済んだ。
城壁に沿って並ぶ
露店を冷やかしていて
爆発に巻き込まれたらしい。
爆風は
子供を『水路』に落とした。
隠れ里に住む者には
『賢者の加護』がある。
だが
彼みたいに外に出た者が
『外の者』と子供を作った場合
その子供には『賢者の加護』はない。
だが
彼女の忘れ形見には
間違いなく『賢者の加護』がある。
子供の父親が
彼なのは
間違いなかった。
カミュ。
貴方も『私たちの子』よ。
応援ありがとうございます!
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