上 下
73 / 85
第四章

第4話

しおりを挟む



ユルグは時々
探索サーチ魔法で
ルーナとカミュを探していた。

ルーナの
魔力の『底』が修復されて
『人並み』の量になったため

発見率が
一気に低くなった。



「またやってるの?」

「しつこい男は嫌われるぞ」


仲間たちには
からかわれるが

それでも・・・



「ユルグ。貴方も『あの日』から早く解放されるといいですね」



『事情』を知っているオラフが

仲間に聞こえない声量で
ユルグに話しかける。


「俺は解放される気はないさ」

それだけの事をしたんだ。






これからも
ルーナの姿を見る度に

ユルグは
『自身の犯した罪』を思い出す。



報酬目当てで
『隠れ里』を見つけたことを。


その結果
平和に過ごしていた
里の者を皆殺しにして

弟をも死なせた。



口封じのために
殺されるはずだったユルグは

弟の死と引き換えに
恩赦を与えられて
『国外追放』となった。


国王から
弟の『功労金』を与えられて。


その金を使って
流れ流れて
ついた町。

そこで
特技の探索サーチ魔法で
『失せ物探し』を始めた。



そして
『運命のいたずら』か。

カミュとルーナに
会った。


『聖遺物』を
探しているという。


ユルグは
二人に付いていくことにした。

「面白そう」と
自分自身のココロを誤魔化して。




本当は
『罪滅ぼし』のつもりだった。


でもそれは
ただの『自己満足』でしかないことに
気が付いた。



彼らには
仲間が三人いた。


ユルグの『事情』を知らないハズの
彼らはいう。


「『自己満足』でもいいんじゃない?」と。

「『何もしない』よりマシでしょ?」と。

「動くのに『理由』が必要ですか?」と。



あとから入った二人は
声を揃えていう。

「「考えるより動け」」と。



『自己満足』だと言われてもいい。

『罪滅ぼし』だと言われてもいい。





二人のために
「動きたい」と


そう思ったのは
『本心』なのだから。

しおりを挟む

処理中です...