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出会いは最悪だった
しおりを挟むさて、牢獄で取り調べを受けた女、名をメイというその者はことの重大さを知らなかった。
ただ注意を受けて2、3日泊まっていけばいい。
悪くても公開の鞭打ちを10回受けるだけ。
本気でそう思っていたらしい。
しかし、通されたのは拷問部屋。
サクサクッと服を脱がされて下着姿で壁に押しつけられて、天井から吊り下げられた鎖についた手錠をはめられた。
ガラガラという音と共に鎖が上がっていき、メイの腕も持ち上がっていく。
「いや、いやあ!」
足がギリギリ届くまで引き上げられた身体、壁を向いていて振り向くこともできない。
後ろに引っぱられた髪、直後に聞こえたジャキンッという音で、腰まであった髪が切られたのだと気づいた。
しかし脳が理解する前に、背に激痛が走り息が詰まった。
繰り返される背の痛み。
鞭打ちを受けているのだ。
そう理解できたのは、背中に走る痛みに別の感触が走ったからだ。
ツーッと流れる感触。
痛みを堪えるために閉じている口が開く。
声を出してはいけない。
声を出したら脳が痛みを理解してしまう。
メイは幼いときから暴力と共に育った。
大人は気に食わないとメイを殴った。
仕事で失敗して注意受けたらメイを蹴った。
ただ何となくとの理由で突き飛ばした。
偶然その場にいたというだけで……首を絞めた。
身体はすでに痛みに慣れた。
脳はすでに痛みを別の感情に切り替えるようになった。
メイは負けん気から耐えるようになっていた。
同じように暴力を受けてきた幼馴染みは半数が死んだ。
残りも暴力を快楽に置き換えるようになった。
彼ら、彼女たちの未来は……大人の性の捌け口だ。
メイは必死に感情を押し殺してきた。
そして……自分を金で売るようになった。
幼くして性の捌け口にされた幼馴染みたちは、薬漬けにされて薬のために身体を売っている。
『あんな風にならない』
そう思って生きてきた。
避妊薬を使ってきた自分はまだ妊娠をしていない。
だからこそ、貴族の愛人になれると知って喜んだ。
…………それなのに。
私は鞭が止まり、聞かれたことを素直に話す。
貴族を謀った。
知らなくてもその片棒を担いだことに違いはない。
さらに私が持っていた偽造書類。
そんなもので私は未来を失った。
なんでこんなことに。
そう後悔してもすでに遅い。
「知らなかった」ことを声高々に訴えたところで、その程度の知識で貴族を相手にしようとしていた事実は覆らない。
そして今、私は神殿で修道女見習いとして早朝から神ではなく人に仕えている状態。
しかし、私はこれでもマシだと言える。
だって、あのとき私の証言で捕まった人たちは処刑されたり、炭鉱に送られた。
そんな中、素直に話した私は罪一等を減ずる処分が妥当と判断された。
神殿に、私が連れて行った女もいた。
彼女は実家が没落した理由は自分にあるとして罪を悔いていた。
そのため『神に仕えて罪を償いたい』という希望を叶えてもらったらしい。
出会いは最悪だったが、互いに支え合い生きていけることを神に感謝している。
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