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前編
どいつもこいつもそいつもあいつもうるさああああい!!!
しおりを挟む祈りを捧げてから振り向く。
縄に縛られた彼らは青ざめて俯いている。
なぜ青ざめているのか。
彼らは聖女の力をもつアリアを祖父母と共に馬車による事故にあわせた。
そして半死半生のアリアを屋敷に連れ帰り、この特殊な部屋に閉じ込めて放置した。
治療もされなかったアリアは弱って死んだ。
死んだアリアの魂はこの部屋に閉じ込められて、神の園へ還ることができなかった。
────── 男爵家に囚われた聖女の誕生だ。
「聖女の血は今を持って滅びた」
「滅びてないわ! 私が」
少女の妹が声を荒げる。
「残念ながら、君に聖女の資格はないよ」
「私はこの聖女の血を引く男爵家の娘よ! お父様の娘よ!」
「ああ、たしかに男爵家を不正に継いだ男の娘だ。だからと言って、男爵家の正当な血統ではない」
男爵は俯いたままずっと顔をあげずにいる。
私の言葉にも肩を揺らしただけで反論をしてこない。
それは事実だと認めたことだ。
「え……? それはどういうことなの?」
「あなた……あなたはこの男爵家の当主だって……」
二人から視線を向けられても俯いたまま動かない男爵。
それをみて責めるようにヒートアップしていく愛妻と愛娘。
「……さい。う、さい。うっさい。うるさい。うるさい、うるさい。うるさいうるさい! うるさいうるさい‼︎ うるさいうるさい!!! どいつもこいつもそいつもあいつもうるさああああい!」
男爵は血走る目を見開いて唾を撒き散らして喚く。
豹変した夫であり父である彼を、今まで口汚く罵っていた二人は表情をゆがめる。
「何が『聖女の家系』だ! 何が『女男爵』だ! 何が『次代の聖女様』だ! 私はこんな女優位の家だと知っていたら結婚なんかしなかった! 望んだ結婚じゃない! 私は男爵家を手に入れたかっただけだ!」
聖女様の血を絶やさないため。
そのために探していた配偶者。
それを『王家の覚えめでたい男爵家』というだけで入り婿になったのはこの愚か者だ。
「ふざけんな! 直系のみに継がれる特殊な男爵家なんて認めない! 認めてなるものか!」
「それを決めるのはあなたではない」
「殺してやった! 私があのムカつくジジイとババアを殺してやった! 何が『アリアが聖女様に選ばれた暁には男爵位を返上する』だあ! 私を何だと思っていやがる! だったらアリアが聖女に選ばれなくすればいいだけだ!!!」
狂ったように主張する男。
その様子に驚愕の表情で固まる妻子。
今まで気付かなかったのか?
それとも『贅沢な暮らしができるならどうでもよかった』のか。
ただ、彼らの末路に変わりはない。
「連れて行け」
縄を打たれた状態の彼らに抵抗などできない。
まるで道具のように抱えられながらも叫び続ける男。
その後ろを引きずられるように母娘は連れて行かれた。
アリアの妹は13歳。
そして……ここに囚われ続けていたアリアは5歳のまま。
怖かっただろう。
私欲にまみれた男たちに手を握られて。
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