閉じ込められた幼き聖女様《完結》

アーエル

文字の大きさ
2 / 6
前編

どいつもこいつもそいつもあいつもうるさああああい!!!

しおりを挟む

祈りを捧げてから振り向く。
縄に縛られた彼らは青ざめて俯いている。
なぜ青ざめているのか。
彼らは聖女の力をもつアリアを祖父母と共に馬車による事故にあわせた。
そして半死半生のアリアを屋敷に連れ帰り、この特殊な部屋に閉じ込めて放置した。
治療もされなかったアリアは弱って死んだ。
死んだアリアの魂はこの部屋に閉じ込められて、神の園へ還ることができなかった。
────── 男爵家に囚われた聖女の誕生だ。

「聖女の血は今を持って滅びた」
「滅びてないわ! 私が」

少女アリアが声を荒げる。

「残念ながら、君に聖女の資格はないよ」
「私はこの聖女の血を引く男爵家の娘よ! お父様の娘よ!」
「ああ、たしかに男爵家を不正に継いだ男の娘だ。だからと言って、

男爵は俯いたままずっと顔をあげずにいる。
私の言葉にも肩を揺らしただけで反論をしてこない。
それは事実だと認めたことだ。

「え……? それはどういうことなの?」
「あなた……あなたはこの男爵家の当主だって……」

二人から視線を向けられても俯いたまま動かない男爵。
それをみて責めるようにヒートアップしていく愛妻と愛娘。

「……さい。う、さい。うっさい。うるさい。うるさい、うるさい。うるさいうるさい! うるさいうるさい‼︎ うるさいうるさい!!! どいつもこいつもそいつもあいつもうるさああああい!」

男爵は血走る目を見開いて唾を撒き散らして喚く。
豹変した夫であり父である彼を、今まで口汚く罵っていた二人は表情をゆがめる。

「何が『聖女の家系』だ! 何が『女男爵』だ! 何が『次代の聖女様』だ! 私はこんな女優位の家だと知っていたら結婚なんかしなかった! 望んだ結婚じゃない! 私は男爵家を手に入れたかっただけだ!」

聖女様の血を絶やさないため。
そのために探していた配偶者。
それを『王家の覚えめでたい男爵家』というだけで入り婿になったのはこの愚か者だ。

「ふざけんな! 直系のみに継がれる特殊な男爵家なんて認めない! 認めてなるものか!」
「それを決めるのはあなたではない」
「殺してやった! 私があのムカつくジジイとババアを殺してやった! 何が『アリアが聖女様に選ばれた暁には男爵位を返上する』だあ! 私を何だと思っていやがる! だったらだけだ!!!」

狂ったように主張する男。
その様子に驚愕の表情で固まる妻子。
今まで気付かなかったのか?
それとも『贅沢な暮らしができるならどうでもよかった』のか。
ただ、彼らの末路に変わりはない。

「連れて行け」

縄を打たれた状態の彼らに抵抗などできない。
まるで道具のように抱えられながらも叫び続ける男。
その後ろを引きずられるように母娘は連れて行かれた。

アリアの妹は13歳。
そして……ここに囚われ続けていたアリアは5歳のまま。
怖かっただろう。
私欲にまみれた男たちに手を握られて。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

彼女が微笑むそのときには

橋本彩里(Ayari)
ファンタジー
ミラは物語のヒロインの聖女となるはずだったのだが、なぜか魔の森に捨てられ隣国では物語通り聖女が誕生していた。 十五歳の時にそのことを思い出したが、転生前はベッドの上の住人であったこともあり、無事生き延びているからいいじゃないと、健康体と自由であることを何よりも喜んだ。 それから一年後の十六歳になった満月の夜。 魔力のために冬の湖に一人で浸かっていたところ、死ぬなとルーカスに勘違いされ叱られる。 だが、ルーカスの目的はがめつい魔女と噂のあるミラを魔の森からギルドに連れ出すことだった。 謂れのない誤解を解き、ルーカス自身の傷や、彼の衰弱していた同伴者を自慢のポーションで治癒するのだが…… 四大元素の魔法と本来あるはずだった聖魔法を使えない、のちに最弱で最強と言われるミラの物語がここから始まる。 長編候補作品

ありふれた聖女のざまぁ

雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。 異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが… 「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」 「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

ある、義妹にすべてを奪われて魔獣の生贄になった令嬢のその後

オレンジ方解石
ファンタジー
 異母妹セリアに虐げられた挙げ句、婚約者のルイ王太子まで奪われて世を儚み、魔獣の生贄となったはずの侯爵令嬢レナエル。  ある夜、王宮にレナエルと魔獣が現れて…………。  

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

婚約破棄していただきます

章槻雅希
ファンタジー
貴族たちの通う王立学院の模擬夜会(授業の一環)で第二王子ザームエルは婚約破棄を宣言する。それを婚約者であるトルデリーゼは嬉々として受け入れた。10年に及ぶ一族の計画が実を結んだのだ。 『小説家になろう』・『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。

逆行転生って胎児から!?

章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。 そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。 そう、胎児にまで。 別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。 長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。

処理中です...