召喚獣に勝るものはなし《完結》

アーエル

文字の大きさ
4 / 13

4



「違います、お父様! 私ではなくフェリアとエバンスの」
「お前は自分で『エバンスと婚前交渉をした』と話した。それは国王陛下の耳にまで届いていたんだ! フェリアではない、の二人だ!!!」

そして書類ケースから取り出されたのは、魔導具で撮影されたと思しき写真の数々だった。
セリーナも、そして実家で同じ写真をみているエバンスにもその写真の場面に心当たりがあった。
ペインティングを取ろうとして、逃げようとするエバンスの足の上にセリーナが座っている姿だ。
肩に手を置いたその姿は、誰がどう見ても『行為の最中』にしか見えない。

「わかるか! こんなものが昨日一昨日のお茶会やサロンで広められ、今朝もあちこちで出回っていたんだぞ!」

セリーナはやっとフェリアが『恥ずかしい』といって寮からでてこなかった理由がわかった。
噂を聞いたか写真をみたであろうフェリアは、自分が逃げ出した後にセリーナとエバンスが関係を持ったと信じたのだろう。

「違います、これは」
「お前がフェリアとエバンスをくっつけて甘い汁を吸おうとしていたことは気付いていた。しかし、それももう徒労に終わった」
「待ってください、お父様」
「いまさら意味がないんだよ」

父親の言葉にセリーナは声が出ない。
父がセリーナの魂胆を知っていたこと。
それなのにとまで言われた。

「王命だ。セリーナ、お前はエバンスと婚姻をさせることとなった」
「ま、って……ください。私は来年、ルドルフ様と」
「こんなことをしておいて」
「私はエバンスと疚しい関係ではありません!」
「そんなことは関係ない! お前たちが言い訳のできない写真しょうこを残された以上、たとえお前のいうことが事実だとしても信じてもらえるか!」
「い、や。いやよ……。ルドルフ様と一緒になるって、私たち、来年には一緒に」

セリーナは首を左右に振って拒否をするが……これは王命である。
自分の幸せを夢見て、妹に自分の欲望を押し付けた。
その結果がセリーナ自身に返ってきただけである。

「ルドルフ、いやソルバイト子爵家とは婚約の解消で締結した。慰謝料はコウロベッガー侯爵家が支払うセリーナの支度金をそのまま支払う」
「いやよ! 私はエバンスなんかと結婚なんかしない! 私はルドルフ様と」
「妹に望まぬ結婚を押し付けて、自分だけが幸せになれると思っているのか!」
「フェリアだって貴族よ! 家のために、に犠牲になるのは当然よ!!!」
「お前の主張が正しいというなら……セリーナ、お前も貴族の娘だ。サンドビエッター侯爵家当主リエンダが命ずる。我が家のためにになって奉仕しろ。セリーナ、今までご苦労だった。以降はサンドビエッター家とは縁が切れ、二度と結ばれることはない」
「いや、いやです!」

セリーナは泣き喚くが、その身はすでに指一本動かすことはできない。
先ほどの命令でサンドビエッター家と縁が切れてしまったのだ。
『言霊』とよばれる、古くからある神聖な魔法。

ここにいるのはセリーナ・サンドビエッターだ。
これから先、コウロベッガー家から迎えがきて、馬車に乗せられて……寝室から二度と出られない。
立場によっては、使用人たちの快楽用に……
そこでセリーナは気付いたのだろう、先ほどの命令を。
エバンス個人の妾でも公娼でもない。
ということは、家族だけでなく、使用人だけでなく、お客様の相手だけでなく……
『いかがわしい夜宴』にだされて……不特定多数の慰み者とされることを。

「いやぁぁぁぁぁぁ!」
「セリーナ、お前がフェリアにを望んだんだ。フェリアに望んだ未来をその身に受けよ。それが王命だ」

扉をノックされた。
それはセリーナのの時間が来たことを意味する。

そしてセリーナはコウロベッガー家へ連れていかれて、嫁という名の公娼になった。

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

《完結》悪役聖女

ヴァンドール
ファンタジー
聖女になり、王妃となるため十年間も教育を受けて来たのに蓋を開ければ妹が聖女の力を持っていて私はには聖女の力が無かった。そのため祖国を追放されて隣国へと旅立ったがそこで……

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。 しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。 それを指示したのは、妹であるエライザであった。 姉が幸せになることを憎んだのだ。 容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、 顔が醜いことから蔑まされてきた自分。 やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。 しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。 幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。 もう二度と死なない。 そう、心に決めて。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

落ちこぼれ公爵令息の真実

三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。 設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。 投稿している他の作品との関連はありません。 カクヨムにも公開しています。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。