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第七章
第215話
「エミリア。新製品は自分で売るなら商人ギルドで金額を相談すればいい」
「でも、新製品は登録が必要だと職人ギルドで言われたんだけど」
「エミリアさん、それは誰に言われました?」
「え、とぉ……?」
《 ジュゼットだよ 》
すっかり忘れていた名前を光の妖精が教えてくれた。涙石を軽く撫でてお礼を伝える。
「ジュゼットって職員」
「ジュゼット? ああ、これで職人ギルドと安全管理課との癒着が立証されましたね」
「癒着?」
「はい。この男は、不当な扱いや言いがかりをつけて高額な登録料をせしめているんです。そのため、職人ギルドから新製品は登録が必要だと騙して安全管理課に向かわせる仲間がいるとまで判明していたのですが、その相手が誰かまでわからなかったんです」
アゴールが虫ケラを見るような忌避するような……いわゆる『汚らわしいものを見るような目』を男に向けていた。目を泳がせているがなんとか言い逃れをしようと思っているのだろう。
そして、何かに気付いたようにニヤリと笑った。
「そ、そうだ……証拠! 俺がこの女を恐喝した証拠を見せろ! ないだろ、あるわけがない! 俺はいまこの女から新商品を見せられていただけ……」
「証拠ならあるよ」
私の断言に、テーブルに近付き私の新作に手を伸ばそうとした男の動きが止まった。こんな男に私の商品を無償で使わせる気はなかったのだが、涙石から飛び出した妖精たちが涙石へ持ち帰ってくれたのだ。目の前で消えた( ように見えたであろう )ことに驚いたのと、証拠があると断言をした私の言葉で思考と動作の回路が停止したようだ。
「ああ、エミリアさんがお持ちのアミュレットに記録機能がついていましたね。では、その証拠をいただけますか?」
「いいよ」
「エミリア、これ使え」
アゴールに承諾すると、ダイバが記録用の魔石に模した魔導具を出してくれた。不正がないように、という配慮だろう。それを受け取り、目の前で記録を魔導具にコピーする。手にしていれば、記録をコピーすることができるのだ。それもコピペするように、選択すれば一瞬で。
「はい、どうぞ。昨日の職人ギルドの場面も一緒に入れておいたよ。職人ギルドが先でここのは後ろね。時系列にしておいた」
「ありがとうございます。これで証拠は十分ですね」
口をパクパクさせていた男だったが、声は届かない。
「ねえ、ダイバ」
「どうした?」
「なんで、この応接室って『防音機能』がついていないの? ダイバとアゴールが駆けつけたのが聞こえていたよ」
「妖精に引っ張ってこられたんだよ」
「風に乗せてくれただけです。ダイバはバランスと根性が歪んでいるため、真っ直ぐに立っていられないだけです」
「あのなぁ……」
「私は真っ直ぐ立っていられましたよ。それで、ここの防音機能ですが、不正が疑われているので一時的に停止されています」
「じゃあ、私に「人を殺してレシピを奪った」と言いがかりをつけたり、「レシピを寄越さなかったら犯罪者に仕立ててやる」って脅したのって」
「はい。全員が聞いたので証言も可能です」
「「死にたくなければ」って言ったのも?」
「はい。その後に続いた「もうけの全額を自分に寄越せ」と強迫した時は、私とダイバも聞いています」
私とアゴールの会話に男は青ざめて床に座り込んだ。
「お待たせしました。その職員がそうですか?」
扉が開くと警備隊の制服を着た男性たちが三人入ってきた。
「ああ、証拠はこちらの方からいただきました。職人ギルドの方はどうなりましたか」
「はい。今日は公休日ということで、自宅にいたところを取り押さえました。エミリアさんですね。警備部第七班隊長ゴウギョと申します」
「エミリアさん。警備部第七班は主に業務上の不正を取り締まる部署です」
「この度はご協力、誠にありがとうございました」
ゴウギョは頭を下げると、アゴールに受けた痛みで悲鳴をあげて暴れ回る男に「煩い!」と一喝と胸部に一撃して黙らせると三人で運びだしていった。
「あれは……」
「間違いなく逃げようとして暴れていたと思っただろうな」
「自業自得だ」
アゴールの言葉に私たちは全員が納得した。
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