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第九章
第376話
「っていうか。ほかにも隠れてるんでしょ。怒られる前にでてきなさい」
《 でたら怒らない? 》
「でなかったら怒る……ピピンとリリンが」
さっきまでのリリンのストレス発散を見たせいだろう。会議室内で隠れていた妖精たちが次々にでてきた。
「おいおい、今日はどうしたんだ」
《 話したいことがあるの 》
《 相談したいことがあるの 》
《 でもレイドンがこれば意味がわかる 》
《 レイドンがわかる 》
《 レイドンが詳しい 》
《 でも悪い奴がいるのー 》
「そいつはどうした」
ダイバの言葉に全員が首をフルフルと左右に振った。
《 さっきまでいた 》
《 でもいなくなった 》
妖精たちの言葉に半数の人が引っかかった。さっきまでいたのにいなくなった。それは……と、ピピンとリリンに目を向ける。
「ピピン、リリン。さっきの連中が?」
そう聞いただけで上下に揺れる。その姿にダイバだけでなく会議室にいる妖精以外全員が理解と納得をした。
「やりすぎだと思ったが……正当な理由があったのか」
「そういえば、排除する前に報告しろっていったよね、ダイバが」
「そういえばいったな、エミリアが」
「……私、いってない」
「『ピピンやリリンに預けたら面白そうだから』といってました」
「…………いったっけ?」
「はい、いいました」
ヘインジルが断言して、同意するように周りが頷く。
「えーん、メッシュぅぅぅ。みんなが責めるよぉぉぉ」
唯一頷かなかったメッシュに泣きつくと、苦笑しながら頭を撫でられた。
「もう、皆さん……ピピンとリリンに遊ばれたいのですか」
あちこちで「うげっ」という声があがった。ピピンとリリンは、ぴょんぴょんっと机の上を飛び回っては時々立ち止まって顔を見上げて左右に揺れる。そして、またぴょんぴょんっと離れていく。
「あれ?」
私は気付いた。ピピンとリリンは「だ・れ・に・し・よ・う・か・な~」と歌いながら飛び回っているのだ。ただ妖精たちは神を嫌っている。そのため続く歌詞は「地の騰蛇のいうとおり」だ。そして歌が終わったときに立ち止まって顔を見上げている。……時間潰しに遊ばれているだけだが、これはこれで怖いものがあるのだろう。顔を見上げられた職員はピピンやリリンが離れると安堵の息を吐く。
この緊張感は、レイドンが到着するまで続いた。
「それでよく生きてたな」
レイドンの置かれた現状を妖精たちの補足があるものの、彼は隠さずにすべてを話しきった。
《 僕たち頑張った! 》
《 全部日誌に書いた 》
《 ちゃんと報告もした 》
「あー、ごめん。昨日帰ったばかりで報告届いていない」
《 うん、だから報告にきた 》
《 でもレイドンから聞いた方がいいと思った 》
「たしかにこれはそうだな」
私たちが聞かされた内容に私とダイバは顔を見合わせた。『ほかの町から道具を納入するための支出費を認めてほしい』と言われたレイドンだったが、道具は商人ギルドを通すようにと至極当然な返答をした。
それを脅しか害して職員の配置を変えようとしたのか、彼の周りで『何か起きたか?』という細々とした出来事が起きた。
《 僕たちが被害が出ないようにした 》
「ええ。守られている気がしたので、何か起きたらお菓子をおいていました」
それをお礼だと理解した妖精たちはレイドンを守ってきたのだった。
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