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第九章

第388話

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お兄ちゃん、ここにいるダイバ新しいお兄ちゃんもシスコンだよ。

『ブラコン妹と相思相愛じゃないか』

そういえばそんな会話やりとりをした。あれは兄妹仲がいいことで揶揄われたときだ。その子の家は兄弟仲が悪くて、日々ケンカが日課だった。だから『兄弟に優しい兄』が信じられなかったらしい。

「お前ン家はおかしい!」

そう言われてお兄ちゃんは言い返した。

「仕方がないよ、僕たちは二人っきりの兄妹なんだから。僕はシスコンだからね。そして妹はブラコンなんだ。ブラコン妹と相思相愛じゃないか」

この頃、私は知らなかったんだ。私たち兄妹は……両親の子じゃなかったって。父は実父の弟で新婚だった。地震で両親を亡くした私たちを祖父母が引き取り、すでに子供ができないとわかっていた両親が引き取った。私はまだ一歳になっていなくて……。だから兄が私の面倒みてくれていた。幼いなりに『両親に嫌われたら追い出される』と思っていたらしい。そう話してくれたのは、私が成人してからだ。
だからといって、両親が私たちを嫌っていたわけではない。実の家族以上に仲が良く、周囲からも羨ましがられたくらいだ。兄も、小学校を卒業する頃には、自分たちは追い出されないと思えるようになったそうだ。それを聞いて父は男泣きした。「小学校生活を楽しく過ごさせてあげられなかった」と。
両親の愛情が深すぎて、兄も私が成人するまで口に出せなかったそうだ。

「仕方がないだろう? 俺にできなかった分をお前に向けてくるぞ」
「うっわー。めんどくさそー」
「面倒とは何だ! 父の深い愛だぞ」
「あなたのそういうところが面倒なのよ。ちょっとは自覚しなさい」
「いや、しかし……」
「二人にうっとうしい、って嫌われてもいいの?」
「それは嫌だ‼︎」
「じゃあ、我慢しなさい。ほら、みんなに酒を注いでちょうだい」

母の言葉に渋々従う父。そして『家族にかんぱ~い』と言って笑い合った。
いま思い返すと、父は私たちと血が繋がっているけど、母は血の繋がらない子供を二人も引き取った。しかも一人わたしは手のかかる赤ん坊。兄が私の面倒を見るために幼稚園を拒否し、それでも幼稚園に通うことになったら私を頑なに連れて行こうとしたのは有名な話だ。保育園でないと赤ん坊は入れないと知って、兄は保育園に一緒に連れて行くと駄々をこねた。両親も親戚も、地震で実の両親を失ったため妹から離れたくないからだと誤解していたようだ。
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