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第九章
第390話
しおりを挟む「元々ミルクは俺の手伝いだったからな」
「よく子供にさせてたね」
「いや、普通はポットのお湯を再沸騰させて作らないからな。魔法瓶でお湯を冷まして使ってたんだ。子供の俺が触れなければ、赤ん坊のミルクなんて作れないだろ」
兄が触れる温度なら私が飲んでも火傷はしない。そのため、実の両親は兄に任せていたようだ。
「俺が作ったミルクを俺が抱っこして飲ませると、お前は俺をじっと見ながら一生懸命飲むんだ。可愛かったんだぞ~」
思いっきり餌付けである。
「そうか、私のブラコンはお兄ちゃんの餌付けからだったんだ」
「ん? このカナッペ食うか?」
兄はそう言ってクリームチーズのカナッペを私の口に持ってくる。もちろん、好物を拒否する私ではない。口を開けて待っていると意地悪もせずに入れてくれる。パクッとしてからモグモグ、モグモグ。
そんな私を兄は嬉しそうに微笑んで見ている。イケメンで有名な兄だが、病的なシスコンのため恋人などいたことはない。私も恋人がいたためしはない。完全なる相思相愛だった。
「お兄ちゃんって元々シスコンだったんだ」
「そりゃあそうだろ。だって…………」
「「妹を可愛く思わない兄はいないぞ」」
二人のお兄ちゃんの声が重なった。口にだしていたようだ。お兄ちゃんと重なるセリフに思わず笑みがこぼれる。
「ダイバ、シスコンの自覚ある?」
「なんだ、急に? しかし、うーん……俺よりアゴールの方がシスコン拗らせているだろ」
「アゴールのもシスコン? フィムと扱いが一緒だよ」
「仕方がないだろ。アイツは末っ子だったからな。年下の女の子はシエラくらいしか知らないぞ」
「でも、抱っことか多いよ」
「それはミリィやエリーのせいだ。エミリアを膝に乗せて甘やかしているからな。女の子はそうやって甘やかすんだと思っているようだぞ」
「……じゃあ、この先も?」
「今のままだな」
ダイバの言葉には苦笑するしかない。ミリィさんより一緒にいる時間が短いエリーさんは、最近特に私を膝に乗せたがる。アゴールが私を露骨に甘やかすようになったからでもある。
「アゴールにとって、私、おっきな子供?」
「あー、うん。……そのうち変わるだろうが、しばらくはそうなるな」
今のうちに思いっきり甘えておけ。
そう言ったダイバは私を抱きしめながら頭を撫でてきた。その仕草は亡き兄にそっくりだ。夢で見た兄を参考にしたのだろうか。だからシスコンまで受け継いじゃったんだ。
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