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第九章
第439話
「魔導具、嘘つかな~い」
そう、出入りには魔導具でチェックされる。それでノーマンを含めて三十人……もっといるかもしれない人たちが乗合馬車で出て行った記録が残されている。ノーマンたちは仕事を辞めて出て行った。二度と帰ってこないつもりだろう。
「仕事を辞してまでついて行った理由はなんだ?」
誘われたのはノーマンだけではない。誘われたときの言葉を、シーズルやヘインジルからダイバは聞いていた。
「すべてを捨てて、私を守る騎士として付いてきてほしい」
シーズルは竜人であり、家族を大切にする。それに恋人がいる彼はアウミの言葉を退けた。ヘインジルは商人で戦闘に向かない。何より妻子を愛している彼はすべてを捨てていく気にはならなかった。のちにノーマンが説得に来たが、二人とも意思を変えることはなかった。
「あれって、シーズルはバラクルに住んでいたからフルーツガーリックの匂いが身についていたってこと?」
「それがヘインジルにも移っていたんだな」
「よかったね、操られなくって」
「ああ、まったくだ」
ダンジョン都市を去ったアウミたちは、王都などに入っていないらしい。
「今のアウミなら入れるはずなんだけど……」
「エミリア経由で保護されるまで、ソアラたちと共同生活していたことになってるからな」
「でもさ」
私がそういうとみんなの視線が私に集中した。
「アウミたちが慌てていなくなったのは、なんでかな?」
どこから攻略しても、話は結局そこに向かう。
「もし、アウミの中の存在とやらがアゴールの赤ちゃんに憑いたとしたら」
その場合、逃げ出せなかった可能性は高い。
「じゃあ、フルーツガーリックにいつ気付いた?」
この世界の暦でいくと植えるのは秋で収穫は六月頃。半年過ぎた頃で、ちょうどアゴールの妊娠がわかる直前。
「もしかすると、エミリアからでた魅了の女神が、フルーツガーリックの効果を知ってて、収穫後に無防備になる可能性のあるアゴールを守るために香りを纏った。そう考えたら、収穫後にアゴールの中で赤ちゃんを守っていたことも、アウミたちが逃げ出したのも理由がわかる」
「そして私はまだ妊娠していない。……アウミたちが狙ったのは『無垢なる魂』。だけどここには新たな生命が芽生える環境にはないわ」
「外周部にはわんさかいるけどな」
「それだって神の罰だから」
「それに都市に入れないと意味がない」
私が移り住んで以降、住人で妊娠したのは三人。ヘインジル夫妻、ダイバ・アゴール夫妻、そしてミリィとルーバー夫妻だけだ。
ここは冒険者たちの町、圧倒的に女性は少なく、夫婦やカップルの冒険者も数少ない。
「アゴールに近寄れず、ミリィさんの妊娠前。それにアウミはミリィさんの店にはいかない。私の店に近く、妖精たちが集まる場所。そして妖精と同調術なしでも会話ができる」
「エミリアちゃんからもらったフルーツガーリックも置いてあるわね。ルーバーが乾燥させてから使いたいって店内で飾っているから」
「店はオープンだから、周囲に匂いが広がってるね」
「「それは近寄らないな」」
アルマンさんとコルデさんが声を揃える。
ルーバーの料理人魂が、奇しくもミリィさんとお腹の子供を守る結果となっていた。
「ルーバーの機転がなく、アウミたちに気付かれていたら、ターゲットはミリィさんになってたね」
「ああ、エルフ族がダンジョンに入っている隙に狙われていたな」
もしそうなっていたら、私は手加減をしていない。ううん、私たちは手加減をしなかっただろう。
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