私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第十一章

第589話


「バリィ、ローズ。これより2人の公開処刑を開始する」

顔が腫れ、ひとりの髪は焼け焦げてチリチリに。もうひとりは手足が砕かれた様子で両脇を抱えられて舞台に引き摺り出される。同時に地響きのように歓声が上がった。

《 異常ね 》
「チッ、クズどもが」
《 口が悪いよ 》
「……オツムの出来が大変大変た~いへんお悪い皆さまがお集まりなさって。まあ、はしたないお言葉を大きなお声で……お恥ずかしいですこと」
《 ……わざとらしい 》
「ん、じゃあ。ちょっくら派手にぶち壊してくらあ」
《 こら、言葉遣い! 》
「この見掛けでは誰も私だと気付かない~!」

私はこの国……サヴァーナ国の下町の少年の姿をしている。ついでに認識阻害の魔導具付きだ。壊れても良いように収納ボックスのひとつ、ウエストポーチにまとめて10個入れてある。
ぽ~んっと空を駆けて降り立ったのは歓声が止まない舞台の上。
闖入客にそれまで騒いでいた声が一瞬で止んだ。

「あ~、絶景ぜっけ~かな、絶景ぜっけ~かな」

手をひさしのように額にあてて舞台上から周囲を見回す。

「い~ち、に~い。お、あそこに集団が3・4・5っと。あ、めんど~だからまとめてたくさん!」
「なっ、なんだ貴様は!」

舞台の下に現れたのはコロコロ転がしてみたくなる丸い男。

「いっや~ん、下から覗かないでよ。えっちぃ~」
「なっ、なっ、なっ……」
「って、ほ~らズボン。だから下から覗いても見えないの。ごめんあ・そ・ば・せ~」

立てた人差し指を言葉に合わせて左右に振る。途端に爆発したように笑いが起きた。同時に地面が大きく揺れる。騰蛇……笑い転げてるの?
ただ、ここでさらに大きな騒ぎが起きた。

「およよ……?」
「「「キャアアアアアアアア!!!」」」
「「「ウワアアアアアアアア!!!」」」

揺れに慣れていない群衆が一斉に騒ぎ出した。逃げ出した理由は地面が揺れて怖かったわけではない。

「崩れるぞ!!!」
「逃げろおおお!!!」
「わざわざご説明、どうも」

崩れるのは、この悪趣味な喜劇のために設営されて私が立っている舞台ではない。後ろに建っているこの国のお城、そしてその背後にそびえ立つ山の斜面だった。
いま舞台にいるのは、私と処刑される予定だった2人だけ。死刑執行人や兵士たちはすでに職場と任務を放棄して走って逃げている最中だ。

「さ、私たちも逃げよっか」

何が起きているかわからないという表情を見せている2人。

「だって、誰かが言ったでしょ『逃げろ』って。つまり私たちを『ここから逃げろ』って逃がしてくれたんだよ」
《 んなわけないでしょ。あれは自分たちが逃げるための合図よ 》
「だから、私たちも逃げていいって合図でしょ」
《 あー、もう! ほら、あんたたちも一緒にきなさい! 》

暗の妖精クラちゃんの重力魔法でフワッと身体が浮く。数秒後、山から流れ出た土砂が城を押し潰して、さっきまでいた舞台を押し流していく。土砂が足の下を勢いよく雪崩れ落ち、逃げる人たちに追いつき飲み込んでいく。

「なんで魔法を使わないの? あそこの人たちって冒険者でしょ」
《 あそこの商人は結界を張ったね 》
《 でも置いただけだから流された……あっ! テントに逃げ込んだ! 》
「あれなら救出まで我慢できるかな~?」

テントは壊れても出入りに問題はない。そしてテントを状態回復の魔法で直したり、新しいテントと前のテントを交換して登録し直せば、テントの中は前のままで使えるのだ。大抵は修復してそのまま使うらしい。

「よ~し! その2人を預けて帰ろっか」
《 さんせ~い! 》
「ま……て」

ん? 『待て』? ……じゃない『待って』か?
振り向くと怯えた2人がで私たちをみていた。

「なに?」
「仲間……タス……」
《 仲間? どこにいるのよ 》
「あそ…………え?」
「アアアアア……!」

2人が振り向いた先にあった山は……城ごと崩れていた。

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