白と黒の世界に彩りを

巫羽雨(ふわあめ)

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誕生 そして楽しい旅を

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白と黒が生まれた。
恐れるもの、喜ぶもの、二つがいた。
誰かが言った。あれは天使と悪魔だと。
誰かが言った。あれは私たちと同類だと。
産んだものは恐れを抱いた。
育てるものは希望を抱いた。
産んだものは行方を晦ました。

育てるものは、
白をイベリス。黒をカトレア。
そう名付けた。
白は力を持ち、黒は知識を持った。
白と黒はいつも一緒だった。
離れることは片時もなかった。
白が剣を抱いた。黒が言霊を抱いた。
育てるものは白と黒に言い聞かせた。
決して他の色を混ぜてはいけない。
白と黒のためだけに使うこと。
白と黒は頷き、育てるものにハグをした。

育てるものはいなくなった。
いつの日か眠りについた。
寿命なのだろうか。
白と黒が生まれたときから、
育てるものの姿の時止まっていた。
何度季節を共にしたのだろう。
白と黒は数えるのをやめた。

白と黒は旅に出た。
赤いレンガで囲まれたお屋敷を見つけた。
妖精さん妖精さん。声が聞こえた。
私のお家は何処ですか?
彼女は泣いていた。
蝶々さん蝶々さんバイバイ。
バイバイ。レンガの奥の幻妻さん。

遠くへ遠くへ来た。
白い無機質なお屋敷を見つけた。
大人になって…。大人になれなかった。
女の子が叫んだ。
男の子は手を伸ばした。
女性は落ちて行った。
男性は泣きながらそれをただ見ていた。
バイバイ。お姉さん。お兄さん。
キラキラと輝く夢を。

赤くなったお屋敷を抜けると
大きな桜が咲いていた。
桜の木下にイベリスと同じ白がいた。
白は泣いていた。
白は青に手を伸ばして消えて行った。
白は他の色を混ぜてしまった。
だから消えちゃった。
バイバイ。それがあの子の幸せ。

白と黒は沢山旅をした。
剣は使わなかったけど、言霊は沢山使った。
剣は必要なのかな?
白は考えた。
黒は必要だと答えた。
何処かの鳥が言ってた。
バチバチってなってキラキラってなるって。
白はなんのことかは理解できなかったけど、
剣を持っておくことにした。

少し歩くとオレンジが空を包んでいく。
ピンクの甘い香りがした。
白と黒は香りについて行った。
オレンジに揺れるピンクがいた。
こんばんは。
ピンクは姫城苺と言うらしい。
学舎から家へ帰るところだそうだ。
近づくとピンクの香りに混ざって
赤の匂いがした。
ふわふわと笑う苺。
白と黒は赤を見ようとした。
けれど赤はあまりにも黒かった。
黒は一緒を見つけた。
同じ黒。
一緒だね。
暗く黒い。
人を無邪気に無意識に…。
似て異なる黒。
バイバイ。バイバイ一緒の子。
また甘い香りがしたらいいな。

それからまた遠くへ行った。
そこは何にも無い場所だった
上を見ると星も無い。
ただ小さく月が漂っていた。
黒が赤を飲み込む。
黒は混ざらなかった。
小さな灯りが黒を照らす。
白い月が闇夜を照らして。

黒と白は決して交わることはない。
この世にはグレーなどは存在しない。
悪か正義かそれだけだ。
誰が正義で悪かなんて誰も知らない。
だから多数決で決めた。
黒が悪で白が正義。

そして夜は明ける。
まだ黒の残る蒼空にオレンジ色の太陽が登る。
眩しく照らして影が光にとけていく。
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