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ラブレター破いた、
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カバンの中、渡せずじまいの手紙。今日もあの子の下駄箱に手紙を入れるだけの簡単な行動ができなかった。ダメだ、また書き直そう。いざ、下駄箱に入れようとすると、ちゃんと気持ちが伝わらない気がする。ぼくはあの子と話したこともないんだ。一方的な好意を伝えることは簡単じゃない。これで何度目の書き直しだろうか。
まず、ぼくを知ってもらおうと思って、自己紹介を兼ねた手紙を書いた。でも、いきなり、自分語りされても気持ち悪い気がして破り捨てた。もっと簡潔な方が伝わると思って、場所と日時と会いたいとだけ書いた。でも、これは果たし状みたいで不気味だと思って破り捨てた。具体性が必要なんだと思って、好きになった理由を書いてみたが、具体的すぎてストーカーみたいで気持ち悪いと思って破り捨てた。ぼくはあの子と話したこともないんだ。何度も破り捨てた。破り捨てれば、破り捨てるほどにあの子への想いが強くなる気がした。これはぼくだけの感覚かもしれないが、恋心とは神聖であり、夢想であり、変態である。
ラブレターを書くのはこれが初めてではない。小学生の時、ぼくはクラスで人気の女の子を好きになってしまった。告白する勇気がなくて、それに当時携帯電話なんて持ってないから家に電話する勇気もなく、手紙を書くことにしたのだ。手紙なら言えないことも言える気がして。しかし、面と向かって好きですと言う以上にそれは難しいことだった。告白なら好きの二文字が言えたらいいが、ラブレターとなるとそうはいかない。想いを文字に託さねばならないのだ。その時も何度も破り捨てた。そして、最後まで渡せなかった。さらに言うと、ぼくはその子と話すことすらできなかったのだ。
ぼくはどうやら惚れっぽくて、ぼくから遠くにいる人を好きになる傾向にあるようだ。幼い頃から人見知りが酷く、授業で当てられても赤面して、立ち尽くすのが常な人間だった。好きになる子は正反対で溌剌とした子ばかりだった。
そして、今回もそうだ。あの子は隣のクラスの人気もの。あの子はよく休み時間に廊下で何人かと談笑している。ぼくはジロジロ見てたら気持ち悪いだろうと思い、一見他所を見ているが、実は視野の端に彼女が入る位置を見るようにしている。我ながらかえって変態チックだ。ぼくは幸い、と言っていいのか分からないが、幸いにも友達が少ないので、休み時間はぼーっと廊下の向こうを見ているふりをずっとできるわけだ。彼女を視野の端で捉えながら、ラブレターの文面を悶々と考える日々。
今回の恋も何も起きることなく終わるだろう思っていたある日のことだ。
ぼくは帰宅部で、彼女は陸上部だ。彼女が部活のある日を狙っていつも下駄箱に入れようとしていた。その日も下駄箱に手紙を入れる寸前で、いつも通り躊躇していた。すると、後ろから「ねえ」と声をかけられた。その声が間違いなくあの子だった。心臓が口から飛び出るほど驚いたぼくは振り返ることができなかった。立ち去りたいが、足が言うことを聞かず、棒のように立ち尽くす。
また「ねえ」とあの子が呼びかける。ぼくはようやく振り返ることに成功したが、振り返ることが正解かどうかはわからなかった。もちろん、そこにはあの子がいた。そして、あの子の友達数名もいた。
「なにしてるん?」とあの子は言った。
逃げよう!逃げる?今更逃げてどうする?今逃げたら明日から学校に行ける気がしない。ここで逃げたら絶対変な噂たつやつだ。しかし、だからといってどうする?あの子だけならまだしも、あの子の友達数名を前にして、告白するのか?それができたらとっくにしている。
「何持ってるん?」とあの子は言った。
しまった。テンパって手紙を隠しそびれた!
「あ、え、あ……」手紙とあの子を交互に見ながらぼくは言葉に詰まった。あの子と目が合ってとっさに俯く。あの子の友達数名が好奇の目でぼくを見ている。やっぱり逃げよう!いや、逃げるな!逃げる!逃げるな!
ぼくは逃げた。必死に駆けた。必死に書いたラブレターを破いて。あの子が「待って!」と言ったのが聞こえたけど、逃げた。
そして、翌日、学校を休んだ。あの子の目の前で破いて捨てたラブレター。結局渡せなかったな。笑うしかない。次の日も、その次の日も休んだ。両親は共働きだから、日中はぼく一人。でも、学校で大勢の中の一人よりは気楽でいい。もう行かなくていいかなと思い始めたある日の夕方。インターホンがなった。どうせセールスだろうと思ったが、ドアモニに映るのはどう見てもあの子だった。なぜ?と思ってが、考えるのやめた。彼女の手にはぼくが破いたラブレター。休んでることはおそらく知れてる。居留守はできない。つまり逃げ場はない。ぼくは玄関に向かう。この恋がどうなるかはわからない。でも、これだけはわかる。今、ぼくの中で何かが始まろうとしている。
まず、ぼくを知ってもらおうと思って、自己紹介を兼ねた手紙を書いた。でも、いきなり、自分語りされても気持ち悪い気がして破り捨てた。もっと簡潔な方が伝わると思って、場所と日時と会いたいとだけ書いた。でも、これは果たし状みたいで不気味だと思って破り捨てた。具体性が必要なんだと思って、好きになった理由を書いてみたが、具体的すぎてストーカーみたいで気持ち悪いと思って破り捨てた。ぼくはあの子と話したこともないんだ。何度も破り捨てた。破り捨てれば、破り捨てるほどにあの子への想いが強くなる気がした。これはぼくだけの感覚かもしれないが、恋心とは神聖であり、夢想であり、変態である。
ラブレターを書くのはこれが初めてではない。小学生の時、ぼくはクラスで人気の女の子を好きになってしまった。告白する勇気がなくて、それに当時携帯電話なんて持ってないから家に電話する勇気もなく、手紙を書くことにしたのだ。手紙なら言えないことも言える気がして。しかし、面と向かって好きですと言う以上にそれは難しいことだった。告白なら好きの二文字が言えたらいいが、ラブレターとなるとそうはいかない。想いを文字に託さねばならないのだ。その時も何度も破り捨てた。そして、最後まで渡せなかった。さらに言うと、ぼくはその子と話すことすらできなかったのだ。
ぼくはどうやら惚れっぽくて、ぼくから遠くにいる人を好きになる傾向にあるようだ。幼い頃から人見知りが酷く、授業で当てられても赤面して、立ち尽くすのが常な人間だった。好きになる子は正反対で溌剌とした子ばかりだった。
そして、今回もそうだ。あの子は隣のクラスの人気もの。あの子はよく休み時間に廊下で何人かと談笑している。ぼくはジロジロ見てたら気持ち悪いだろうと思い、一見他所を見ているが、実は視野の端に彼女が入る位置を見るようにしている。我ながらかえって変態チックだ。ぼくは幸い、と言っていいのか分からないが、幸いにも友達が少ないので、休み時間はぼーっと廊下の向こうを見ているふりをずっとできるわけだ。彼女を視野の端で捉えながら、ラブレターの文面を悶々と考える日々。
今回の恋も何も起きることなく終わるだろう思っていたある日のことだ。
ぼくは帰宅部で、彼女は陸上部だ。彼女が部活のある日を狙っていつも下駄箱に入れようとしていた。その日も下駄箱に手紙を入れる寸前で、いつも通り躊躇していた。すると、後ろから「ねえ」と声をかけられた。その声が間違いなくあの子だった。心臓が口から飛び出るほど驚いたぼくは振り返ることができなかった。立ち去りたいが、足が言うことを聞かず、棒のように立ち尽くす。
また「ねえ」とあの子が呼びかける。ぼくはようやく振り返ることに成功したが、振り返ることが正解かどうかはわからなかった。もちろん、そこにはあの子がいた。そして、あの子の友達数名もいた。
「なにしてるん?」とあの子は言った。
逃げよう!逃げる?今更逃げてどうする?今逃げたら明日から学校に行ける気がしない。ここで逃げたら絶対変な噂たつやつだ。しかし、だからといってどうする?あの子だけならまだしも、あの子の友達数名を前にして、告白するのか?それができたらとっくにしている。
「何持ってるん?」とあの子は言った。
しまった。テンパって手紙を隠しそびれた!
「あ、え、あ……」手紙とあの子を交互に見ながらぼくは言葉に詰まった。あの子と目が合ってとっさに俯く。あの子の友達数名が好奇の目でぼくを見ている。やっぱり逃げよう!いや、逃げるな!逃げる!逃げるな!
ぼくは逃げた。必死に駆けた。必死に書いたラブレターを破いて。あの子が「待って!」と言ったのが聞こえたけど、逃げた。
そして、翌日、学校を休んだ。あの子の目の前で破いて捨てたラブレター。結局渡せなかったな。笑うしかない。次の日も、その次の日も休んだ。両親は共働きだから、日中はぼく一人。でも、学校で大勢の中の一人よりは気楽でいい。もう行かなくていいかなと思い始めたある日の夕方。インターホンがなった。どうせセールスだろうと思ったが、ドアモニに映るのはどう見てもあの子だった。なぜ?と思ってが、考えるのやめた。彼女の手にはぼくが破いたラブレター。休んでることはおそらく知れてる。居留守はできない。つまり逃げ場はない。ぼくは玄関に向かう。この恋がどうなるかはわからない。でも、これだけはわかる。今、ぼくの中で何かが始まろうとしている。
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