Another World

Kishiru

文字の大きさ
上 下
2 / 39
第一章

灯影

しおりを挟む
柔らかな大地の上に立たされた私は、もうすぐこの世から消えようとしています。
薄暗い中で、わずかな風にも、ゆらゆら揺れる。
暗い中で、闇をつくった影も揺れる。
人々に囲まれ、私は来るべき時を待っています。
ほら、私をおくるレクイエムが始まりました。
消えゆく私を見守る人々は、皆、笑顔を浮かべています。
不思議な事に、私は自分が消える事を分かっているのに、暖かい気持ちでした。
レクイエムが終わると、私はそよぐ風にのって消え去りました。
間際に声が響きます。


「ハッピーバースデー!」


私は、蝋燭としての生を終え、あなたの心に小さな希望として宿るのです。
しおりを挟む

処理中です...