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第四章 演出家たち
第58話 次の計画
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一応、そこは、城主の執務室なんだろう。
だが、執務机は、あまり使われた様子がなく、ソファやテーブルも、使用のあとが無いまま、古びている。
天井には、ギムリウスの巣がつくってあっあし、壁は巨大な蜘蛛でも走り回ったかのよつに傷だらけだ。
「なんと言った?」
キール公爵は、あいかわらす、ぼくには冷たい。
「あまり、本気になるなよ。」
ドルク。この国に到着した時に世話になった『城』の幹部は、そう言って、キール閣下を牽制してくれた。
「どういう意味かな、ドルク。」
キール閣下は、同僚のドルクさんにまで、そんなふうに突っかかる。
「殺気がダダ漏れすぎだ。
これから。こいつとうまくやっていくにしても、隙を見て抹殺するにしても、どちらにも不要なものだぞ。」
「おまえは、こいつを信用するのか!」
「なにかの目的が、あって動いている。そしてその目的は、『城』で、立身出世すること以外にある。」
「『黒の御方』か『災厄の女神』に好条件で雇われることかもしれんぞ?」
キール閣下の笑った、その口元から牙が見えていた。
「それはない。だったらアデルを連れてとっとと、どちらかの陣営に転がり込んでいる。」
ギムリウスは、ぼくにしがみついたままだ。
子猫が親に甘えているようだったが、蜘蛛にそんな感情はあるのだろうか。
いや、もともとギムリウスは、軍神によって作られた拠点制圧ようの移動城塞だったはずだ。
親子の情愛などは、はなからないはずだった。
「えー、それではこれから我々がすべき行動についての会議をはじめたいと思います。」
「なんでおまえが仕切る!」
またキール閣下が食ってかかった。
「だいたいおまえは」
西域に5人しかいない「公爵級」だ。さぞ強いのだろうが、唇を氷で貼り付けられてしまっては、喋りにくいだろう。
うごご、とかうぐ、とかもがくキール閣下に、ぼくは温かいお茶を差し出した。
キール閣下は、何も言わずに(まあ、言えなのだが)受け取ったカップに、愚痴を突っ込んで氷を溶かしている。
「ありがとう、アルセンドリック侯爵閣下。」
ぼくは、停滞フィールドから解放されたばかりの美女に、例を言った。
おっかない先生みたいな風貌のアルセンドリック侯爵は、まるでこの部屋の主みたいにゆったりとソファに腰掛けて、奥義で口元を、覆っていた。
「あなたがなにを提案するかは、だいたい分かっているし、ロウがどう答えるかもわかるわ。」
レポートがやたらながったらしい、というのを責めるような口調で、アルセンドリック侯爵閣下は
「それから、わたしを、呼ぶ時はロウランでいいわ。おなじ冒険者同士、でしょう?」
執務室は、それほど広くはない。
参加メンバーは、ぼくとアデル。ロウとギムリウス、キール閣下とドルクさん。それにロウラン。だ。
「さて、まず必要なことは、アデルをここから逃がすことだと思います。」
「ふざせるな!」
キール閣下が、叫び出したが、ロウランが氷塊を手のひらに作り出して見せると、落ち着いてくれた。
「ぼくたちは、西域、中原に秩序を取り戻すために、リウとフィオリナを黙らせるだけの力をもつ存在を作り出さねばなりません。
それには、伝説となったあのパーティ“踊る道化師”を復活させるのが、もっとも確実で、手っ取り早い。」
ぼくは、しがみつくギムリウスの頭を撫でてやりながら、ロウを見た。彼女は、ロウランの手を取ろうとさっきから、あれこれ仕掛けているのだが、対してロウランは実に自然な動作で、ティーカップを手に取ったり、腕を組んだり、絶対に手を握らせない。
「幸いにも、ここには“踊る道化師”の元メンバーが2人もいます。それに、残念姫と駄魔王陛下の血をひくアデルも。それならば堂々と“踊る道化師”を名乗れるところですが。」
「“踊る道化師”は、噂だけ残して、消滅してしまったから、最終的にどんなメンバーが参加していたのか、俺もくわしくはない。」
ドルクさんが言った。
「だが、ご城主とご城代がメンバーだったのは間違いないな。だが、“踊る道化師”の後継者について正当性を主張できるものは、他にもいる。
他ならぬ“黒の御方”と“災厄の女神”だ。
そして、ご城主とご城代はみずからの意志で、“踊る道化師”を離れている。」
「さすがです。」
ドルクさん。脳筋だと思ったいたら。
「ほかのメンバーも参加させたほうがいい。」
「とは言ってもリアモンドさまは、人界を離れてしまっている。」
「アキルは、元の世界でまだやることがあるようだし、オルガは銀灰から動けないだろうと思うよ。」
ぼくは、言った。
「もうこのメンバーで構わないから、親父とオフクロを〆に行こうよ!」
一番の脳筋が、そんなことを言う。
「ダメだよ。そんなことしたら戦いになるだろ?」
「いいじゃん。勝てるぞ?」
アデルは、ぐるんと形をまわした。
「軍隊はじっちゃんに出してもらう。主力軍が、敵をひきつけておく間に、こっそり魔王の寝首をとる。
昔からのオーソドックスかつ有効な戦法だよ。」
「戦いになったらもうダメなんだよ。」
「なんでさ! わたしが負けるとでも? 」
「きみとフィオリナとリウ。誰が血を流してもぼくにとっては負けなんだよ。」
アデルは、床を蹴った。
「なに?」
もう一度蹴った。
「なに、そのムリゲー。」
「互角以上に、戦える力を持って交渉に挑むのは、基本中の基本だよ。」
ぼくは、みんなを見回した。
「新生“踊る道化師”の初期メンバーは、こうします。
クローディア大公国アデル姫。真祖ロウ=リンド。アルセンドリック侯爵ロウラン。ルーデウス伯爵。擬似竜ラウレス。」
「貴族の比率が高いな!
それにご城主はどうする。」
「メンバーには、加わっていただきますが、最初の任務からは外れてもらいます。」
「なんでよ、うぉる…ルウエン。」
ギムリウスが抗議した。
「この『城』のまもりの要がギムリウスだからだ。」
ぼくは、キッパリ言った。
「ロウがいなくても、なんとかなるが、ギムリウスがここを離れてしまっては、どうにもならない。
近日中には、リウとフィオリナの使者がここを訪れる。おそらくは、場合によっては単騎でここを落とせるだけの実力をもつものを選抜してくるだろう。ギムリウスはここに残ってもらわないとならない。」
「で、そのいなくてもなんとかなるわたしを連れて、新生“踊る道化師”はどこに、向かうんだ?」
ああ、やっぱりロウが不貞腐れた!
「まず、目的はアデルをここから逃がすことだ。リウとフィオリナから働きかけがあったときに、アデルがここにいたのでは、無理やりにでも連れ去られる危険がある。」
「わたしを? 無理やりどうするって?」
「きみがそうやすやすと、あいつらの手に落ちるとも思わないけどさ。戦いになるだろ?」
「大丈夫! 勝つよ!」
「きみに、血を流させてしまったらもう、負けなんだよ。」
アデルは、照れたようにそっぽをむいた。
いや、これはきみをいかに大事に思ってるかの告白ではない。
相手にもできるだけ、恨みを残してもらっては困るんだ。
「という事で、リウとフィオリナの使者が来た時に、アデルはここにいない方が刃傷沙汰になる危険もすくない。なのでぼくらはここから北の地に向かいたいと思います。」
「北? クローディア大公国か?」
「いえ、北方諸国ではなくて、ほんとに北。
目的は“踊る道化師”のメンバー補充。
北の庵に済むと言われる“銀雷の魔女”」ドロシーをスカウトします。」
だが、執務机は、あまり使われた様子がなく、ソファやテーブルも、使用のあとが無いまま、古びている。
天井には、ギムリウスの巣がつくってあっあし、壁は巨大な蜘蛛でも走り回ったかのよつに傷だらけだ。
「なんと言った?」
キール公爵は、あいかわらす、ぼくには冷たい。
「あまり、本気になるなよ。」
ドルク。この国に到着した時に世話になった『城』の幹部は、そう言って、キール閣下を牽制してくれた。
「どういう意味かな、ドルク。」
キール閣下は、同僚のドルクさんにまで、そんなふうに突っかかる。
「殺気がダダ漏れすぎだ。
これから。こいつとうまくやっていくにしても、隙を見て抹殺するにしても、どちらにも不要なものだぞ。」
「おまえは、こいつを信用するのか!」
「なにかの目的が、あって動いている。そしてその目的は、『城』で、立身出世すること以外にある。」
「『黒の御方』か『災厄の女神』に好条件で雇われることかもしれんぞ?」
キール閣下の笑った、その口元から牙が見えていた。
「それはない。だったらアデルを連れてとっとと、どちらかの陣営に転がり込んでいる。」
ギムリウスは、ぼくにしがみついたままだ。
子猫が親に甘えているようだったが、蜘蛛にそんな感情はあるのだろうか。
いや、もともとギムリウスは、軍神によって作られた拠点制圧ようの移動城塞だったはずだ。
親子の情愛などは、はなからないはずだった。
「えー、それではこれから我々がすべき行動についての会議をはじめたいと思います。」
「なんでおまえが仕切る!」
またキール閣下が食ってかかった。
「だいたいおまえは」
西域に5人しかいない「公爵級」だ。さぞ強いのだろうが、唇を氷で貼り付けられてしまっては、喋りにくいだろう。
うごご、とかうぐ、とかもがくキール閣下に、ぼくは温かいお茶を差し出した。
キール閣下は、何も言わずに(まあ、言えなのだが)受け取ったカップに、愚痴を突っ込んで氷を溶かしている。
「ありがとう、アルセンドリック侯爵閣下。」
ぼくは、停滞フィールドから解放されたばかりの美女に、例を言った。
おっかない先生みたいな風貌のアルセンドリック侯爵は、まるでこの部屋の主みたいにゆったりとソファに腰掛けて、奥義で口元を、覆っていた。
「あなたがなにを提案するかは、だいたい分かっているし、ロウがどう答えるかもわかるわ。」
レポートがやたらながったらしい、というのを責めるような口調で、アルセンドリック侯爵閣下は
「それから、わたしを、呼ぶ時はロウランでいいわ。おなじ冒険者同士、でしょう?」
執務室は、それほど広くはない。
参加メンバーは、ぼくとアデル。ロウとギムリウス、キール閣下とドルクさん。それにロウラン。だ。
「さて、まず必要なことは、アデルをここから逃がすことだと思います。」
「ふざせるな!」
キール閣下が、叫び出したが、ロウランが氷塊を手のひらに作り出して見せると、落ち着いてくれた。
「ぼくたちは、西域、中原に秩序を取り戻すために、リウとフィオリナを黙らせるだけの力をもつ存在を作り出さねばなりません。
それには、伝説となったあのパーティ“踊る道化師”を復活させるのが、もっとも確実で、手っ取り早い。」
ぼくは、しがみつくギムリウスの頭を撫でてやりながら、ロウを見た。彼女は、ロウランの手を取ろうとさっきから、あれこれ仕掛けているのだが、対してロウランは実に自然な動作で、ティーカップを手に取ったり、腕を組んだり、絶対に手を握らせない。
「幸いにも、ここには“踊る道化師”の元メンバーが2人もいます。それに、残念姫と駄魔王陛下の血をひくアデルも。それならば堂々と“踊る道化師”を名乗れるところですが。」
「“踊る道化師”は、噂だけ残して、消滅してしまったから、最終的にどんなメンバーが参加していたのか、俺もくわしくはない。」
ドルクさんが言った。
「だが、ご城主とご城代がメンバーだったのは間違いないな。だが、“踊る道化師”の後継者について正当性を主張できるものは、他にもいる。
他ならぬ“黒の御方”と“災厄の女神”だ。
そして、ご城主とご城代はみずからの意志で、“踊る道化師”を離れている。」
「さすがです。」
ドルクさん。脳筋だと思ったいたら。
「ほかのメンバーも参加させたほうがいい。」
「とは言ってもリアモンドさまは、人界を離れてしまっている。」
「アキルは、元の世界でまだやることがあるようだし、オルガは銀灰から動けないだろうと思うよ。」
ぼくは、言った。
「もうこのメンバーで構わないから、親父とオフクロを〆に行こうよ!」
一番の脳筋が、そんなことを言う。
「ダメだよ。そんなことしたら戦いになるだろ?」
「いいじゃん。勝てるぞ?」
アデルは、ぐるんと形をまわした。
「軍隊はじっちゃんに出してもらう。主力軍が、敵をひきつけておく間に、こっそり魔王の寝首をとる。
昔からのオーソドックスかつ有効な戦法だよ。」
「戦いになったらもうダメなんだよ。」
「なんでさ! わたしが負けるとでも? 」
「きみとフィオリナとリウ。誰が血を流してもぼくにとっては負けなんだよ。」
アデルは、床を蹴った。
「なに?」
もう一度蹴った。
「なに、そのムリゲー。」
「互角以上に、戦える力を持って交渉に挑むのは、基本中の基本だよ。」
ぼくは、みんなを見回した。
「新生“踊る道化師”の初期メンバーは、こうします。
クローディア大公国アデル姫。真祖ロウ=リンド。アルセンドリック侯爵ロウラン。ルーデウス伯爵。擬似竜ラウレス。」
「貴族の比率が高いな!
それにご城主はどうする。」
「メンバーには、加わっていただきますが、最初の任務からは外れてもらいます。」
「なんでよ、うぉる…ルウエン。」
ギムリウスが抗議した。
「この『城』のまもりの要がギムリウスだからだ。」
ぼくは、キッパリ言った。
「ロウがいなくても、なんとかなるが、ギムリウスがここを離れてしまっては、どうにもならない。
近日中には、リウとフィオリナの使者がここを訪れる。おそらくは、場合によっては単騎でここを落とせるだけの実力をもつものを選抜してくるだろう。ギムリウスはここに残ってもらわないとならない。」
「で、そのいなくてもなんとかなるわたしを連れて、新生“踊る道化師”はどこに、向かうんだ?」
ああ、やっぱりロウが不貞腐れた!
「まず、目的はアデルをここから逃がすことだ。リウとフィオリナから働きかけがあったときに、アデルがここにいたのでは、無理やりにでも連れ去られる危険がある。」
「わたしを? 無理やりどうするって?」
「きみがそうやすやすと、あいつらの手に落ちるとも思わないけどさ。戦いになるだろ?」
「大丈夫! 勝つよ!」
「きみに、血を流させてしまったらもう、負けなんだよ。」
アデルは、照れたようにそっぽをむいた。
いや、これはきみをいかに大事に思ってるかの告白ではない。
相手にもできるだけ、恨みを残してもらっては困るんだ。
「という事で、リウとフィオリナの使者が来た時に、アデルはここにいない方が刃傷沙汰になる危険もすくない。なのでぼくらはここから北の地に向かいたいと思います。」
「北? クローディア大公国か?」
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