最強パーティなのに最下級からなりあがる~怪盗ロゼル一族と神竜の鱗

此寺 美津己

文字の大きさ
20 / 38

19、その日に起きたこと その3

しおりを挟む
時計、という便利なものが普及した西域では、時間ごとに鐘を鳴らして時を遂げる方式は廃れて、久しいそうだ。
中には、携帯用の懐中時計や腕時計といった便利なアイテムを所持しているものもいる。

黒蜥蜴もそういったアイテムを保持していたのだろうか。

真夜中になると同時に、ランゴバルド博物館の屋上には、怪盗黒蜥蜴の哄笑が響き渡ったのだ。

「クアッっははっは!
我が名は怪盗黒蜥蜴。

ランゴバルドの至宝『神竜の鱗』は、わたしがいただく!」

それはいいけど(いやよくはないが)そんなところに浮かんでたら危ないぞ。

我が故郷、グランダのような田舎町と違って、ランゴバルド上空は全て、飛行禁止区域である。
建物の高さより、高いところを飛ぶものは全て、停滞フィールドに引っ掛けられ、動きを止められたところを、石火矢で狙い撃ちされる。

誰何は、地上に落ちてからで良い。

というのが、西域一等国の考えだそうだ。

そういう意味では、ランゴバルド国立博物館は、かなり高層に作られているので。
その屋上の、またさらに上空というのは、本当にぎりぎりの高さの可能性大である。

そのとき。


ピリリリリッ

笛が鳴った。
何者かが、「神竜の鱗」の置いてある部屋へ侵入しようとしたのだ。

「クワァッハッハッハ!」

かまわず高笑いを続ける黒蜥蜴。

まさか、どうしたらいいのか分からずにとりあえず笑ってるんじゃないだそうな。

手順では、

黒蜥蜴侵入します→笛鳴ります→黒蜥蜴屋上に逃げます→捕まえます

だった。
と言うことは?

「おーい、黒蜥蜴!」

「何かな? 冒険者の少年。」

「おまえの仲間が先に侵入したとかいうことは?」

「は? わたしは知らんぞ。」

まずいな。
黒蜥蜴以外の賊がこのタイミングで仕掛けてきたのか?

「エミリア! ドロシー! 予定外だが、3階に降りてみよう。最初の計画だと、『暁の戦士』が取り逃した黒蜥蜴を屋上で捕まえるはずだったが、おかしなことになっている。」


「そうだね! まず黒蜥蜴を3階で取り逃さないうちに捕まえたら、変だものね。」

それも少し違うぞ、ドロシー。

ぼくらは、屋上から7階に降りた。そこからの階段の場所は四箇所ある。
それぞれ手分けして、降りることにした。

くれぐれも無理はするなよ!
賊を見たら物陰に隠れてやり過ごせ。

「わかった!」ドロシー。
「弱そうだったら、仕掛けるからね。」エミリア。
「わたしもそうする!」黒蜥蜴。

うん!なぜか黒蜥蜴もメンバーに入っているね。

ドロシーに、慌てて降りて階段踏み外すと危ないから、気をつけるように念を押す。

西と中央の階段へドロシーとエミリアが走り去るのを確認して、ぼくは黒蜥蜴の方を振り返った。

「ラウレス!」

「何を言ってる。わたしは怪盗黒蜥蜴・・・・」

「現実逃避するな! おまえは、黒龍ラウレス。いま人間相手に五連敗中の古竜だ。」

「・・・うう、今夜だけは怪盗黒蜥蜴でいさせて・・・」

「ざあんねんながら、それも却下だ。」




エミリアは、階段を降りかけたところで、足を止めた。
なんだかよくわからない状況では、ある。

神竜の鱗は、価値はあるが、換金は難しい。何かのアイテムとして利用できるのかもしれないが、今までに数が少なすぎて、伝説レベルで遡っても果たしてどういう効用があるのかさっぱりわからない。

だが、大事なのは。

おそらく彼女だけが握っている情報。
神竜の鱗は、ルトの手中にある。
重要なのはそのことだ。そのことだけだ。

階段を降りるのをやめて、エミリアは引き返す。





ドロシーは、いちばんに、あの神竜の鱗がおかれた小部屋にたどり着いた。
階段は無人。

巡回の警備員にもすれ違わなかった。
この階に配置されたはずの、警備員にも。

部屋は、それほどひどくは荒らされていはいない。
ただ、『暁の戦士』は全員が昏倒していた。

そして。
台座のうえの水晶が砕かれ、そこにあったはずの「神竜の鱗」はなくなっていた。

「賊じゃ。」
ニフフ副館長がよろよろと身を起こした。

額を切られ、顔が半分血で染まっている。
出血はひどいように見えるが、傷は浅い。

ドロシーは冷静な自分に驚いた。

「どんなやつです? どっちに逃げました?」

「わからん。まるで疾風のごとき、集団じゃった。
冒険者たちは瞬時に倒され、わしもこの有り様じゃ。

気がついたときには、神竜の鱗はもうなく・・・・」

「わたしたちは、屋上にいました。」
ドロシーは、ニフフの顔に持っていた白布を押し当てた。傷はもう塞がって、出血も止まっている。
「打ち合わせの笛の音がしたのですが、あまりにも早かったので、降りてきたのです。
みんな別々の階段で。

もし、賊が、予想通り、屋上から逃げ出そうとしたなら誰かが接触しているはずです。」

本当はさっそくに怪盗黒蜥蜴と遭遇していたのだが、それは黙っていることにした。
不可解な部分が多すぎる。

「そ、そうか。」
ニフフは、空になった台座を見つめ、もう一度、がっくり膝を落とした。
「ま、まさか本当に、賊がやってくるとは・・・」

「集団とおっしゃいましたが、何人ほど?
背格好や、話している言葉など、何かご記憶にあれば。」

「わからぬ。動きがあまりにも早く、手練れの冒険者も反応すらできなかったほどだ。」

「なんの反応もできずに?」

「ああ、あっという間に倒されてしまった。」

ドロシーは、ゆっくりと、不自然にならぬようにニフフから距離をとった。

「・・・わたしたちは合図の笛の音を聞いたのです。」

ニフフの目が大きく見開かれた。

「もし、『暁の戦士』が反応もできずに倒されたのなら、笛を吹いたのは誰でしょう?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

処理中です...