最強パーティなのに最下級からなりあがる~怪盗ロゼル一族と神竜の鱗

此寺 美津己

文字の大きさ
32 / 38

31、深淵竜対踊る道化師

しおりを挟む
ぼくは、少し困惑している。

これは、ぼくたち「踊る道化師」については初陣である。
え?

「神竜の息吹」は?

あれは、ぼくが参加してなかったからなあ。
でもいいのか?
記念すべき初陣がこんな。


いじめみたいな構図で。


深淵竜ゾーアは、地面に降り立った。
身の丈は尻尾も入れれば、40メトルを超えるだろう。
鱗は黒く艶々と光り、その輝きは夜空に星が瞬くよう。

ラウレスの艶消しの黒も悪くないが、この磨き抜かれた黒もなかなかよい。

「行くぞっ! ゾーア!」

ぼくはカッコつけてキメポーズで叫んでみた。
恥ずかしいので、普段は絶対にやらないのだが、ここは迷宮ランゴバルド。

見られたら恥ずかしいドロシーは気絶中であるし、エミリアや「紅玉の瞳」はこんなやつはそれなりに慣れっこだろうと思う。

「ゆけ!ひっさつ!炎の矢ファイヤーアロー!!」

初歩の魔法の詠唱に、蜥蜴の顔に嘲笑が浮かぶ。
いわゆる人間ではないものが嘲笑を浮かべたとき、本当にわかるのか問題というのは、昔フィオリナとさんざ議論したが、わかるのだ。

相手がスライムだろうが、ゴーストだろうが。

そして、その嘲笑が、驚愕にかわり、恐怖にかわるのが、ぼくは結構好きさ。

炎の矢は。

ゾーアを全方向から取り囲んでいた。

「な、なんだ。この数は!!」

ゾーアは喚いた。

数は・・・・多分、そう一万はいってないと思う。
炎の矢なんて、何本って数えて作るもんじゃないよね?

ゾーア黒い翼を広げる。

その中にも星が瞬いていた。その星が急速に巨大化し・・・・

メテオストライク!!

飛び出したものは本当に星なのか。それとも単に灼熱の岩塊をそのように呼んだのかはわからない。

それは、ぼくたちめがけて殺到した。数は10個近い。

交わすにしても守るにしても。
失神中のドロシーや、ロゼル一族の下っ端たちの問題がある。

ぼくの生み出した炎の矢は、それを迎撃するために、消費し尽くされてしまった。
その間に、ゾーアは飛び立つ。

上空から、ブレスや今のメテオで攻撃をかけようというのだろう。
だが、空にはすでに、ロウ=リンドが待機していた。

左手を一閃。
生み出した赤い鎌は、ゾーアの翼を半ば両断する。

それでも上昇をやめないゾーアは、空間の断層・・・さっき、ラウレスの首を切った技だ・・・を繰り出す。

ロウの翼が裂けて、彼女は、バランスを失う。だが、もともと彼女の翼は、コートを変化させたものだ。
落ちる前に、速やかに翼を再生し、先ほどの鎌状の赤い光を続けて放つ。

ゾーアはブレスでそれを迎え撃った。

彼のブレスもまた「切断」に特化した効果があるようだった。
ロウの光は、ブレスに切断され、崩れて散っていく。

「リンド!!」

『紅玉の瞳』が叫んだ。いままでの感情を失った声ではない。力の限りの叫びだった。

「ボス!!」

ロウが手を振っている。バカ。戦いの最中だぞ。

ゾーアの尾がロウの細身の体を巻き込んだ。
空中で吹き飛ばすよりも圧殺することを選んだのだろう。だが。

一見、華奢にすら見えるロウはその圧迫に抵抗する。

体躯で数十倍の相手の締め付けに拮抗し、力負けしないのだ。吸血鬼ってのは・・・全く。

尾で巻かれながらも放った赤い三日月の光は、今度こそ、ゾーアの翼を完全に切り落とした。

バランスを失い地面に落下するゾーア。
着地点にはリウがいた。

例の古の魔王の鎧ではなくて、冒険者学校の制服のままだった。巨体の下敷きになる寸前に、くるりと体を回転させる。
いつ抜いたのか、ぼくにも見えない。

だが、ゾーアの尾は、半ばから両断されていた。

「なんなのだ。お前らは!
どこなのだ! ここは!」

ゾーアは荒れ狂う。だが、リウもロウもその牙と爪の圏外に逃れてしまっていた。

そこに七色の光の放流。

ギムリウスの攻撃である。ゾーアはその巨体を吹き飛ばされた。その」巨体は丸々一街区の建物をクッションにしてやっと止まった。

「ここは迷宮『ランゴバルド』。
ぼくら『踊る道化師』が作り出した。ランゴバルドに重なるように作った異世界『迷宮ランゴバルド』だよ。」

ぼくはわざわざ念話で答えてやった。

「いやでも」

暴れ回る巨体が、駄々をこねているようで、ちょっと可愛かった。

「冒険者が迷宮を作っちゃおかしいだろうっ!?」

「そうなの?」

ギムリウスが不安そうに聞くので、ぼくは胸を張って「問題ない」と答えたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

処理中です...