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第142話 古竜の絶技
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苦痛の絶叫をあげるバークレイから、飛び離れ、ザックは床に降り立った。
「出来れば、降伏をおすすめしたいのだが、それはないよなあ・・・ならば、さて、どうやったら、あんたに、というかこの迷宮にあんたが負けたと認めせるか?」
「我は、不死身だ! 」
再び、ザックに向かって、巨大な尾が迫った。
これを跳躍してかわし、空中で身をひねり、壁に着地したザックは、今度は反対側の壁へと跳んだ。
同時に、風魔法を発動。自分の周囲に空気の流れを、制御し、不規則な軌道を作る。
そのまま、壁に降り立つと、また、壁面を駆け上がった。 もちろん、バークレイも黙って見ているわけではない。
彼が動くたびに、床や壁が破壊されていく。
しかし、それは逆に、ザックにとっては足場となるものだった。
「おまえは、古竜だろうっ!」
バークレイの口から放たれた武具のブレスを、白銀のブレスで相殺し、避けつつ、ザックは叫んだ。
「その通り、この世界でもっとも強く、古き知性だ!」
「だからなぜ、サイノスごときの配下にいる。」
叫びながら、ザックは再び、空中へ駆け上った。 バークレイの攻撃をかわしつつ、壁面を走る。
そして、再び、壁面を蹴って、跳び上がる。
いかなる、軽業師にも不可能だろう。
この程度は、魔法になる補助も必要ない。ザックは、神獣、フェンリルなのだから。
「ならば、なぜ、古竜が人間の魔導師の手下になっているのだ!」
バークレイの背中の上を走り、背中に爪をたてて、そのまま引き裂いた。
竜鱗の防御なにするものぞ。
ザックの爪は、フェンリルのそれだ。
人間がドラゴンスレイヤーと呼ぶ名剣のように、物理的な切断に加えて、魔力を流し込むことができる。
バークレイもまた、咆吼する。
「世界の声がそう、お望みゆえだっ!」
バークレイの背の上にいたザックには、何が起こったか、わからなかった。 いや、見ていたところで、わかったかどうか。なぜなら、突然、視界が真っ白になったかと思うと、凄まじい衝撃とともに、吹き飛ばされていたからである。
“な、なんだ...”
それが、自分が発した声だと気づいたとき、ザックは、自分に起こった異変を知った。
身体が動かぬ。
叩きつけられた衝撃だけではない。
右前脚がちぎれている。
わかったのは、それだけだった。
ほかの部分は、まるでザックという個体から切り離されたように感覚がなかった。
かろうじて動いた首を曲げると、自慢の毛皮もズタズタに引き裂かれ、血まみれの己の体が見えた。
傷は深い。だが、この程度ならば、常時展開している、治癒術式で十分なはずだ。だが、痛みを訴える右前脚以外は、まったく再生が始まらない。
何が起こったのか理解したザックは、つぶやいた。
“ジウル・ボルテックの魔力撃に近いものか。”
おのれを吹き飛ばして、壁に叩きつけたバークレイの衝撃波をザックは、そう解釈した。
相手の体内の魔力をかき乱す。
相手の魔力が強いほど、それは存在そのものを否定する効果があるはずだ。
そこまでの予備知識があったからこそ、ザックはこの事態にもなんとか対応する。
壊れた魔力の根源。その欠片を拾い集め、修復にかかる。
たとえ、不死身ではなくなったにせよ、神獣フェンリルはしぶといのだ。
「ほう」
バークレイの思念波には、素直に感嘆したような響きがあった。
すぐの追撃が来なかったのは、パークレイもまた、全力を奮った己の技に、全力を費やし、身動きがとれなかっただけだ。
「我が『無空波』。放ってなお立ち上がるものがいるとは。」
アキルがいたら「そうそう、無空波ってそういうもんだよね!」と言っただろうが、彼女は、ランゴバルドで補習に追われていた。
「出来れば、降伏をおすすめしたいのだが、それはないよなあ・・・ならば、さて、どうやったら、あんたに、というかこの迷宮にあんたが負けたと認めせるか?」
「我は、不死身だ! 」
再び、ザックに向かって、巨大な尾が迫った。
これを跳躍してかわし、空中で身をひねり、壁に着地したザックは、今度は反対側の壁へと跳んだ。
同時に、風魔法を発動。自分の周囲に空気の流れを、制御し、不規則な軌道を作る。
そのまま、壁に降り立つと、また、壁面を駆け上がった。 もちろん、バークレイも黙って見ているわけではない。
彼が動くたびに、床や壁が破壊されていく。
しかし、それは逆に、ザックにとっては足場となるものだった。
「おまえは、古竜だろうっ!」
バークレイの口から放たれた武具のブレスを、白銀のブレスで相殺し、避けつつ、ザックは叫んだ。
「その通り、この世界でもっとも強く、古き知性だ!」
「だからなぜ、サイノスごときの配下にいる。」
叫びながら、ザックは再び、空中へ駆け上った。 バークレイの攻撃をかわしつつ、壁面を走る。
そして、再び、壁面を蹴って、跳び上がる。
いかなる、軽業師にも不可能だろう。
この程度は、魔法になる補助も必要ない。ザックは、神獣、フェンリルなのだから。
「ならば、なぜ、古竜が人間の魔導師の手下になっているのだ!」
バークレイの背中の上を走り、背中に爪をたてて、そのまま引き裂いた。
竜鱗の防御なにするものぞ。
ザックの爪は、フェンリルのそれだ。
人間がドラゴンスレイヤーと呼ぶ名剣のように、物理的な切断に加えて、魔力を流し込むことができる。
バークレイもまた、咆吼する。
「世界の声がそう、お望みゆえだっ!」
バークレイの背の上にいたザックには、何が起こったか、わからなかった。 いや、見ていたところで、わかったかどうか。なぜなら、突然、視界が真っ白になったかと思うと、凄まじい衝撃とともに、吹き飛ばされていたからである。
“な、なんだ...”
それが、自分が発した声だと気づいたとき、ザックは、自分に起こった異変を知った。
身体が動かぬ。
叩きつけられた衝撃だけではない。
右前脚がちぎれている。
わかったのは、それだけだった。
ほかの部分は、まるでザックという個体から切り離されたように感覚がなかった。
かろうじて動いた首を曲げると、自慢の毛皮もズタズタに引き裂かれ、血まみれの己の体が見えた。
傷は深い。だが、この程度ならば、常時展開している、治癒術式で十分なはずだ。だが、痛みを訴える右前脚以外は、まったく再生が始まらない。
何が起こったのか理解したザックは、つぶやいた。
“ジウル・ボルテックの魔力撃に近いものか。”
おのれを吹き飛ばして、壁に叩きつけたバークレイの衝撃波をザックは、そう解釈した。
相手の体内の魔力をかき乱す。
相手の魔力が強いほど、それは存在そのものを否定する効果があるはずだ。
そこまでの予備知識があったからこそ、ザックはこの事態にもなんとか対応する。
壊れた魔力の根源。その欠片を拾い集め、修復にかかる。
たとえ、不死身ではなくなったにせよ、神獣フェンリルはしぶといのだ。
「ほう」
バークレイの思念波には、素直に感嘆したような響きがあった。
すぐの追撃が来なかったのは、パークレイもまた、全力を奮った己の技に、全力を費やし、身動きがとれなかっただけだ。
「我が『無空波』。放ってなお立ち上がるものがいるとは。」
アキルがいたら「そうそう、無空波ってそういうもんだよね!」と言っただろうが、彼女は、ランゴバルドで補習に追われていた。
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