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疑問
しおりを挟む「…願いはないか?」
「…最近譫言のようにずっとこればかりだな」
「俺、気味が悪くなってきた…」
魔女が牢に繋がれてから2ヶ月。
当然拷問も続いているし、食事の回数は更に減った。いつ死んでもおかしくない様な扱いなのに魔女は何があってもひたすらに同じ言葉を繰り返す。
「様子は如何だ」
「団長!如何だも何もないですよ…」
「毎日、毎日…同じ言葉を言うだけです…」
「…私が変わる。水でも飲んで来い」
「…はい」
「行ってきます」
二人は魔女を一瞥し、しかし何も言わずに駆け足で地下牢を後にする。
「…願いはないか」
「もう、俺が誰かも分からないか?」
「…」
「魔女。お前は何故生きている。拷問であれだけの血を流し、飯をろくに取らず、ほとんど寝やしない」
「…その質問に答えれば…」
「いや、これは願いではない」
「…」
毎日同じことの繰り返しだが、時折こうして会話が出来る。
…果たしてこれを会話と呼んでも良いのかは分からないが、譫言のようなセリフ以外にも言葉が出てくるようになったのだ。
「…アイツの…アイツの妹はもう死んでいたのだな」
「…」
「魔女。お前はそれも見えていたのか?」
「…いや」
「そうか」
男には疑問があった。
何故、魔女はあの時大人しく捕まったのか。どうして頑なに人々の願いを叶えようとするのか。
ただ、その理由を聞く事はない。
聞く必要もない。
ーー
ーーー
ーーーー
ーーーーー
「起きろ」
「…」
頬はこけ、全体的に骨張って、当初の見る影もない。
どれだけ拷問しようとも変わらぬ態度。
「…何をした」
「王はお前を殺すなと仰っている。お前は延々にここで苦しみ続ける」
「…」
膿が溜まっていたところだけ簡単に治療し、出血死させない為に止血剤を投与。拷問中に頭に湧いた蛆虫が飛んでこないよう頭から水を浴びせて、折れて動かせなくなった指が壊死しないように包帯が巻かれている。
「飯も食え。お前を死なせない為に処置を施したのに餓死されては敵わん」
「…其方は私に苦痛を味わわせたいのではなかったか」
「これは王の命令だ」
「…願いを言う気はないか」
「何度も言わせるな」
「…」
ただ、人々の邪な願いを叶える魔女の目的は何なのかを考えることは出来る。
「王が呼んでいる」
「…」
「行くぞ」
こんな時でさえも魔女は大人しく言う事を聞く。これから魔女に与えられる拷問はきっと更に酷いものだろう。
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