【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

文字の大きさ
152 / 1,122
16章

元魔王様とシキの契約者 10

しおりを挟む
 ミラの説明を聞くと演習場にいた者達の反応も納得である。

「成る程、有名人がきた故の反応か。」

「ジルさん、早速始めましょう。」

 ブリジットが遠くの方から声を掛けてくる。
早く始めたくてウズウズしている様子だ。

「ではいってくる。」

 ミラに言い残してブリジットの方に歩いていく。

「有名人はジルさんもなんですけどね。」

 ミラが小さな声で呟いた言葉はジルには届いていなかった。
ブリジットがそれなりに大きな声で呼んだ事により、演習場にいたギルドの試験官達や一部の冒険者がジルに気付いた。

 そして気が付いた者達は少し震えながらジルを見て怯えていた。
実際にランク選定試験に居合わせた者達がその実力を目の当たりにしてトラウマとなっているのだ。

「風の姫騎士は分かるけど、誰だあの男?」

「弱そうな見た目してるけど、騎士様と戦うみたいだぞ。」

「おいおい、相手になるのか?」

 演習場で訓練していた冒険者達がジルとブリジットの方を見て色々言っている。
ジルの事を知らずに見た目だけで判断して侮っているのがよく分かる。

「お前らは知らない様だな。あの冒険者は只者じゃ無い、試験官クラッシャーだ。」

 ジルにやられた事がある試験官の一人が呟く。
その言葉に同意する様に周りの試験官達が頷いている。

「試験官クラッシャーってなんですか?」

 ジルを知らない冒険者の一人が試験官に尋ねる。
不穏な響きに警戒している者もいる。

「あいつは全ての試験官を相手にランク選定試験を行なった大型新人でな。ボロボロにされた我々は試験官クラッシャーと呼んでいる。」

 試験官達の間で勝手にあだ名を付けられているが、ランク選定試験の時の戦闘がそれ程のトラウマとなっているのだ。
そしてそれを聞いた冒険者達が本当にそんなに凄いのかと疑問に思いながらジルとブリジットの方に視線を向ける。
これから戦うみたいなのでそれが真実なのかはっきりする。

「早速始めたいのですが、準備は宜しいですか?」

 腰に下げていた剣を抜きながらブリジットが尋ねてくる。
武器は細剣、別名レイピアと呼ばれる剣だ。
斬る事よりも刺突に特化した武器である。

「ああ、我はいつでも問題無いぞ。」

 自然体で構えたジルが応える。
腰にはジルの主力武器とも言える銀月を携えているがまだ鞘の中だ。

 食後の運動という体なので、最初から全力でとばさなくても文句は言われないだろう。
シキやライムは二人の戦いに巻き込まれない様にミラのところまで避難している。

「では、参ります!」

 ブリジットは開始を宣言すると同時に地面を蹴る。
その動きは予想よりも遥かに速い。
そこらの冒険者達とは比べ物にならないだろう。

 周りで見ている冒険者や試験官もブリジットの素早い動きに驚いている。
有名であり二つ名を知っていたとしても実際の戦闘を見た事のある者は少ないのかもしれない。

「ふっ!」

 ジルとの距離を詰めて細剣による連続の刺突を放ってくる。
その動きを冷静に見切って回避していく。
一つ一つの攻撃は速いが反応出来無い程ではない。

「さすがの実力ですね。これくらいでは本気も引き出せませんか。」

 ジルは回避に徹しているだけで、まだ武器も抜いていない。
本気を出していないのは明らかである。

「準備運動だ、ブリジットも本気では無いのだろう?」

「無論です!」

 にこりと笑いながらジルの言葉を肯定する。
そして急激にブリジットの動きが加速していく。
細剣による刺突攻撃やジルの回避行動に反応する一挙手一投足全ての速度が加速しているのである。

「スキルによる強化か。」

 戦いながら万能鑑定でブリジットを視る。
ブリジットは風の鎧と言うスキルを所持していた。
これは身体に風を纏い、攻防を強化するスキルである。

「ご名答です。」

 加速した攻撃は凄まじく、さすがに回避が難しくなってきた。
そしてついに攻撃を受けてしまいそうになったので、銀月を抜いて細剣を弾き返す。

「やっと武器を抜いて下さいましたね。美しい剣です。」

 キラキラと輝く美しい刀身を間近で見てブリジットが誉めてくれる。
ダナンは良い仕事をしてくれたのでその意見には同意である。

「美しいだけでは無いけどな。」

 銀月を振るって初めて攻撃に転じる。
ブリジットに負けず劣らずの速い攻撃だ。
ジルの高い実力はブリジットの風の鎧を使用した状態にも迫る速さだ。

 しかし攻撃は細剣で受けられてしまった。
互いの武器が激しくぶつかり合い、甲高い金属音が演習場に響き渡る。

「速く鋭い一撃ですね。」

 細剣で銀月を受け止めたブリジットが言う。
刺突に特化した細い剣なので、受け止めたりすれば普通は折れてしまう。

 しかし銀月を受け止めた細剣にはヒビ一つ入っていない。
風の鎧に加えて魔装も使っており、防御力を飛躍的に高めたのだ。
そして銀月と切り結べる細剣自体もかなりの業物の様だ。

「そのスキルも厄介だな。」

「ふふふ、お褒めに預かり光栄です。」

 風の鎧のスキルは行動の加速だけで無く、纏った風が敵の攻撃を受け止め、威力や速度の減衰もしている。
銀月で斬り付けた時に若干の抵抗感を感じたのだが、それはスキルによる効果だった。
それによりジルの攻撃が綺麗に防がれてしまったのだ。

「ファイアアロー!」

「っ!?」

 至近距離で斬り結んでいる状態を利用して、ジルは無詠唱の火魔法を使用した。
周りに無数の火矢が浮かび現れており、至近距離で受ければ初級火魔法と言えどかなりのダメージを受けてしまう。
それを見たブリジットは堪らずジルから距離を取った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...