【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

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50章

元魔王様と孤児救済の魔物狩り 4

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 ジルが子供達を引き連れて依頼ボードの前にやってくる。
現在見ているのはDランクの依頼ボード、では無く自分のランクよりも二つ高いBランクの依頼ボードである。

「この中で美味い魔物、もしくは食べてみたい魔物はいるか?」

 子供達に向けてジルが尋ねる。
今回の依頼は金銭を得るだけで無く、子供達の為に美味しい食料となる魔物も手に入れたい。

 ギルドにいた孤児が全員ジルに付いてきたので人数は二十人近くいる。
この依頼はそれなりの金銭の報酬とお腹一杯になるまで食べさせてやる事が条件だ。

 そう考えるとDランクの依頼では効率が悪い。
なので狙うのは美味しくて素材が高値で売れる高ランクの魔物だ。

「何でもいいんですか?」

「ああ、好きに選ぶといい。」

「食べた事は無いんですけど、この魔物はとても美味しいって聞いた事があります。」

「グレートバッファロー、Bランクの魔物か。」

 孤児の女の子が指差した依頼書を手に取って見る。
グレートバッファローは巨大な牛の魔物で、気性が荒く攻撃的らしい。
鉄の防具も簡単に凹ませる程の攻撃力を持っているらしいので、近接戦闘は危険だと注意書きがされている。

「この生息域は王都から近いのか?」

「馬車で1時間程で着くと思います。」

「ふむ、距離も手頃だしこれでいくか。」

 一先ずジルは依頼書をボードに戻す。
Dランクのジルではこの依頼を受ける事は出来無いのだ。
そして今度はDランクの依頼ボードの前に移動する。
探すのは勿論グレートバッファローの生息域に近い依頼場所となっている依頼書だ。

「お、それなりに近い場所のがあったな。」

 ジルは迷わず依頼書を取ってユメノの受付に持っていく。

「この依頼を頼む。」

「…清々しい程に全部丸聞こえだったんですけど。隠す気も無いんですね。」

 ユメノが依頼書を受け取りながらジルにジト目を向けている。
依頼ボードと受付は近いので、先程のやり取りは全て聞かれていた様だ。

「何を言っているのか分からんな。この依頼書を受けると言っているだぞ?まあ、依頼の途中に高ランクの魔物が乱入してきて戦闘になる可能性もあるけどな。」

 グレートバッファローを目的として向かう訳では無いが出逢えば狩ると宣言しておく。
前にセダンのギルドでもコカトリスを狩る時に用いた手段だ。

 本来であればランク差のある相手に挑み、無駄死にする様な愚行をギルド側が認める訳にはいかない。
しかしジルの実力を把握していたミラだからこそ許してくれた行為だ。

「実力がDランクでは無いのは先程のやり取りでも分かりましたが、危険な魔物相手に非戦闘員をこんなに連れていくのは心配ですね。」

「なら私達が付き添ってあげるわよ?」

 ユメノが悩んでいると突然声を掛けられた。
話しに加わってきたのは杖を持った魔法使いと思われる女性だ。
その後ろには剣士の女性と弓使いの女性もいる。

「誰だお前達?」

「この方々は王都を中心に活動されているAランクパーティー、美酒の宴の皆さんです。」

 そう言ってユメノが誇らしげに紹介してくれるがそんな名前は聞いた事も無い。

「あらら、知られていないみたいだね。」

「そこそこ有名になれた自信はあったっすけどショックっすね。」

 首を傾げているジルを見て後ろの二人が残念そうに呟く。

「悪いな、王都の冒険者では無いしあまり他の冒険者と関わる機会も無いのだ。」

 酒場にいる者達がこちらを見てざわざわと騒いでいる。
その反応を見るとそこそこ有名だと分かるので一応謝っておく。

「構わないわよ。それで同行についてはどうかしら?」

「お三方が付き添いなら安心ですね。」

「いや、我は遠慮してもらいたいんだが?」

「え?」

 ジルの言葉にユメノが驚きの表情を浮かべており、美酒の宴の面々も少し予想外の表情を浮かべている。
断られるとは思っていなかった様だ。

「な、何故ですか?お三方がいた方が遥かに安全ですよ?」

「そもそも我は安全面で不安など口にしていない。ユメノが勝手にそう思っただけだろう?」

「それはそうですけど…。」

 人数が多いからと言って無理している訳では無い。
この状況でも問題無いと自信を持って言える。

「この子達を全員連れても無事に帰って来られる自信があるのね?」

「ああ、だから我には構わなくていいぞ。」

 ジルの返答を聞いて魔法使いの女性が少し思案顔になる。

「うーん、だったらこれならどうかしら?危険な状況にならなければ手出しはしないわ。それに私達が介入せずに無事に帰って来られたら報酬も一切受け取らない。」

 提示された内容は美酒の宴には全く特にならない内容であった。
依頼に付いていっても無駄足に終わる可能性がある。

「ふむ、何故そんなに付いてきたいんだ?」

「単純にこの子達が心配なだけよ。私達もたまに面倒を見ているから。」

 そう言って孤児の子供達の頭を撫でている。
皆が嬉しそうな表情を浮かべているところを見ると真実なのだろう。

「仕方無い、邪魔をしないのなら許可しよう。」

「感謝するわ。」

 美酒の宴が加わり大所帯となったジル達は依頼書の場所を目指して馬車を走らせた。
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