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第一部
17. 蜜月期間ってどれくらい?
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「シェーラ」
「はぁーい、ここに」
クードが低く呼ぶと、どうやら近くに待機していたらしいシェーラがひょこりと姿を現した。
失礼しますね~とストールのようなものを頭から被せられて、セヴィはシェーラに腕を引かれる。
「あ、あの……??」
「すまないが何かあったようだ。セヴィは部屋に戻っていてくれ」
「は、い……」
先ほどまでの甘やかな雰囲気が嘘のようにピリピリとした空気を発しているクードに、セヴィはこくんと唾を飲み込んで、小さく頷く。
「あちらから戻りましょう」
シェーラに言われるがまま、屋敷の裏手──使用人用と思われる入り口を通って部屋に戻ったセヴィは、そこでやっとストールを取ることが出来た。
「髪が乱れてしまいましたね、すみません」
優しく髪を直してくれるシェーラに、それは良いのだけど……とセヴィは首を傾げる。
「どうしてストールを?」
「あぁ、それはですね。番を得た狼さんは大変に嫉妬深くなってしまうので」
「嫉妬?」
「んー……例えば、先ほどの隊員さんたちにセヴィ様のお顔を見られたりしたら、クード様ってば隊員さんたちを八つ裂きにしちゃうかも!という程度には」
「や……八つ裂き……なんて……」
「まぁ、多少の誇張はあるにしても、本当にそういう事件は起こっているらしいですよ~。といっても蜜月期間が終われば落ち着いてくるそうですけどね」
ストールをたたみながら説明してくれていたシェーラから出たその単語に、セヴィはそうだわ、と顔を上げる。
「さっきクードさまが今は『休みの期間』だって言っていて……それって『蜜月期間』だから、なのよね……?」
「あー……えぇ、まぁ。そうですねぇ」
「じゃあ、その『蜜月期間』がいつ終わるのかって、分かるものなのかしら……?」
「私は狼族ではないからよくは分かりませんけれど、少しずつ落ち着いていくものだと聞いておりますよ」
「カーサさん」
「お飲み物をお持ちしました」
どうぞ、とグラスに入れられた水がテーブルに置かれる。
カーサにありがとうございますと礼を言って、セヴィはよく冷えた水を一口飲む。
柑橘系のフルーツが絞られているのか、爽やかな香りが広がってセヴィの頬が緩んだ。
もう一口飲んでほぅっと息をついてからグラスをテーブルに戻すと、セヴィはカーサを見上げる。
「落ち着いていく、って……?」
「番に対する衝動のようなものが、ですね」
衝動……と呟いて、セヴィは最初の頃のアレコレを思い出してしまって、何故だかカーッと熱を持ってしまった頬を誤魔化すようにもう一度グラスを手に取ると、意味もなくくるくると手の中でグラスを回す。
「そ、そうなのね……あの、それじゃあ……蜜月期間って、どれくらい続くものなのかしら?」
「三月から四月ほどが一般的のようですよ」
カーサの返事に、セヴィはやっぱりそうなのね、と首を傾げる。
「じゃあ、あと五日って、何かしら……」
「えっ?」
ぽつんと呟いたセヴィの言葉に、シェーラが驚いたような声を上げた。
「あのね。クードさまが『五日経ったら家に帰って良い』って言っていたの。それって、クードさまの蜜月期間が終わるって事かしら?」
私がここに来て、まだ一月と少しよね?と顔を上げたセヴィに、シェーラが困ったような、曖昧な笑みを浮かべてカーサを見る。
と、部屋の外──廊下から大きな、怒鳴るような声が聞こえて来て、セヴィはびくりと身体を震わせた。
「な、なに……??」
聞き間違えでなければ今のはレナードさんの声だわ、と思いながらドアへと駆け寄って、そっと開けてみる。
「だから、俺が出た方が早いだろう」
「それはそうでしょうけれど!今ご自身がどんな状態かをお考え下さい!」
「……何も、問題はない」
「問題ないわけがありません!クード様自らお出になるなど、今この状態で、認める事は出来ません!」
「レナード、勘違いをするな。俺はお前の許可など求めていない」
「クード様!!」
悲痛とまで言えるくらいのレナードの叫びを、クードは振り切ったようだった。
「心配するな。とっとと片付けて、すぐに戻って来る」
クードのその言葉に対するレナードの返答は、もう聞こえなかった。
代わりにいくつかの足音が屋敷から出て行って、そして重い扉の閉まる音が響いた。
セヴィはぱっとドアから離れると、部屋の窓へと移動する。
クードを先頭に数人の狼たちが──恐らくはクードが隊長を務めている部隊の隊員たちが、屋敷の外へと出て行くところだった。
「……クードさま、お出かけになるの……?」
「国境絡みで何かあったのでしょうけれど………馬鹿な事を……」
眉間に皺を寄せて苦しそうに呟いたカーサに、セヴィはクードによくない事が起こっているような気がして、きゅっと胸元を握りしめた。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
いちゃいちゃを期待して下さっていた皆さま、大変申し訳ございません……_|\〇_
「はぁーい、ここに」
クードが低く呼ぶと、どうやら近くに待機していたらしいシェーラがひょこりと姿を現した。
失礼しますね~とストールのようなものを頭から被せられて、セヴィはシェーラに腕を引かれる。
「あ、あの……??」
「すまないが何かあったようだ。セヴィは部屋に戻っていてくれ」
「は、い……」
先ほどまでの甘やかな雰囲気が嘘のようにピリピリとした空気を発しているクードに、セヴィはこくんと唾を飲み込んで、小さく頷く。
「あちらから戻りましょう」
シェーラに言われるがまま、屋敷の裏手──使用人用と思われる入り口を通って部屋に戻ったセヴィは、そこでやっとストールを取ることが出来た。
「髪が乱れてしまいましたね、すみません」
優しく髪を直してくれるシェーラに、それは良いのだけど……とセヴィは首を傾げる。
「どうしてストールを?」
「あぁ、それはですね。番を得た狼さんは大変に嫉妬深くなってしまうので」
「嫉妬?」
「んー……例えば、先ほどの隊員さんたちにセヴィ様のお顔を見られたりしたら、クード様ってば隊員さんたちを八つ裂きにしちゃうかも!という程度には」
「や……八つ裂き……なんて……」
「まぁ、多少の誇張はあるにしても、本当にそういう事件は起こっているらしいですよ~。といっても蜜月期間が終われば落ち着いてくるそうですけどね」
ストールをたたみながら説明してくれていたシェーラから出たその単語に、セヴィはそうだわ、と顔を上げる。
「さっきクードさまが今は『休みの期間』だって言っていて……それって『蜜月期間』だから、なのよね……?」
「あー……えぇ、まぁ。そうですねぇ」
「じゃあ、その『蜜月期間』がいつ終わるのかって、分かるものなのかしら……?」
「私は狼族ではないからよくは分かりませんけれど、少しずつ落ち着いていくものだと聞いておりますよ」
「カーサさん」
「お飲み物をお持ちしました」
どうぞ、とグラスに入れられた水がテーブルに置かれる。
カーサにありがとうございますと礼を言って、セヴィはよく冷えた水を一口飲む。
柑橘系のフルーツが絞られているのか、爽やかな香りが広がってセヴィの頬が緩んだ。
もう一口飲んでほぅっと息をついてからグラスをテーブルに戻すと、セヴィはカーサを見上げる。
「落ち着いていく、って……?」
「番に対する衝動のようなものが、ですね」
衝動……と呟いて、セヴィは最初の頃のアレコレを思い出してしまって、何故だかカーッと熱を持ってしまった頬を誤魔化すようにもう一度グラスを手に取ると、意味もなくくるくると手の中でグラスを回す。
「そ、そうなのね……あの、それじゃあ……蜜月期間って、どれくらい続くものなのかしら?」
「三月から四月ほどが一般的のようですよ」
カーサの返事に、セヴィはやっぱりそうなのね、と首を傾げる。
「じゃあ、あと五日って、何かしら……」
「えっ?」
ぽつんと呟いたセヴィの言葉に、シェーラが驚いたような声を上げた。
「あのね。クードさまが『五日経ったら家に帰って良い』って言っていたの。それって、クードさまの蜜月期間が終わるって事かしら?」
私がここに来て、まだ一月と少しよね?と顔を上げたセヴィに、シェーラが困ったような、曖昧な笑みを浮かべてカーサを見る。
と、部屋の外──廊下から大きな、怒鳴るような声が聞こえて来て、セヴィはびくりと身体を震わせた。
「な、なに……??」
聞き間違えでなければ今のはレナードさんの声だわ、と思いながらドアへと駆け寄って、そっと開けてみる。
「だから、俺が出た方が早いだろう」
「それはそうでしょうけれど!今ご自身がどんな状態かをお考え下さい!」
「……何も、問題はない」
「問題ないわけがありません!クード様自らお出になるなど、今この状態で、認める事は出来ません!」
「レナード、勘違いをするな。俺はお前の許可など求めていない」
「クード様!!」
悲痛とまで言えるくらいのレナードの叫びを、クードは振り切ったようだった。
「心配するな。とっとと片付けて、すぐに戻って来る」
クードのその言葉に対するレナードの返答は、もう聞こえなかった。
代わりにいくつかの足音が屋敷から出て行って、そして重い扉の閉まる音が響いた。
セヴィはぱっとドアから離れると、部屋の窓へと移動する。
クードを先頭に数人の狼たちが──恐らくはクードが隊長を務めている部隊の隊員たちが、屋敷の外へと出て行くところだった。
「……クードさま、お出かけになるの……?」
「国境絡みで何かあったのでしょうけれど………馬鹿な事を……」
眉間に皺を寄せて苦しそうに呟いたカーサに、セヴィはクードによくない事が起こっているような気がして、きゅっと胸元を握りしめた。
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いちゃいちゃを期待して下さっていた皆さま、大変申し訳ございません……_|\〇_
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