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第二部
03. 再会
店の入り口をくぐると、正面に銀灰色の髪の狼族の男性が立っていた。
背が高くて立派な体躯の雄々しいクードと違って、背は高いけれど細身でスラリとした気品溢れるその男性が、クードとセヴィに向けて優雅に礼をする。
「本日はお越しくださいましてありがとうございます。お待ちしておりました」
「無理を言ってすまなかったな」
「とんでもございません。第一隊長にお越し頂けたとなれば我々には利しかございませんので」
「……どうだかな」
肩を竦めて苦笑を零したクードに、セヴィは約束ってこの方とだったのねと思いつつも小さく首を傾げる。
「第一、隊長……?」
「ん?──あぁ、そうか。我が国の軍はいくつかの隊に分かれていてな。俺は第一部隊の隊長だ」
「……そうだったんですね……隊長さんがたくさんいるなんて、ちっとも知りませんでした」
そう言って恥ずかしそうに頬を染めたセヴィに、クードは気にするなとくしゃりと頭を撫でる。
「あぁ、確かに……。似ておりますね」
黙ってクードとセヴィのやり取りを見ていたらしい目の前の男性にそう微笑まれて、セヴィはまた首を傾げた。
そんなセヴィににこりと柔らかな笑みを返して、男性はこちらへどうぞとクードとセヴィを店の二階へと案内する。
何やら立派な部屋に通されて、少々お待ちくださいとテーブルにお茶とお菓子が並べられる。
セヴィがふかふかすぎるソファに居心地悪そうにもぞもぞと身じろいでいると、クードにひょいと抱き上げられて膝の上に乗せられてしまった。
「あの、さっきの方が戻ってきたら、これはちょっと……」
「問題ない、彼も番のいる狼だ」
「でも……」
扉の方を気にしているセヴィに、クードはその柔らかな頬に掠めるようなキスをした。
「クードさまっ……!?」
真っ赤になったセヴィがこんなところで!とぽかぽかとクードの胸を叩いて、そしてふとその手を止める。
「あの……今日はどうしてこのお店に……?何だかドレスとか、高そうなお洋服ばかりでしたけど……」
「安心しろ。服を買いに来たわけではない」
また何か買うつもりなのかしら、とでも思っていそうな、不安そうな表情で見上げて来るセヴィの頬を撫でながらクードがそう言うと、セヴィは明らかにホッとした様に肩の力を抜いた。
「じゃあ一体どんなご用で……」
セヴィが続けたその時、ノック音に続いて静かに部屋の扉が開いた。
「お待たせいたしました」
そう言いながら入って来たのは先ほどの男性。
そして男性が後ろを振り返って扉を大きく開けたのを見て、セヴィはえ?と瞬いた。
「今日この店を訪ねたのは、セヴィを彼女に会わせるためだ」
クードがそう囁いたのと、男性の後ろからその女性が姿を現したのは、同時だった。
「────!!」
セヴィは息を飲んで、呆然とその女性を見つめる。
女性の方もセヴィを見つめて、そうしてくしゃりと泣き笑いのような表情を見せた。
セヴィと同じクリーム色の髪と垂れ耳に、瞳はセヴィのブルーグレーとは違うブラウン。
記憶より背が低い気がするのは、セヴィが成長したからだろうか──
「セヴィ……!」
女性が駆け寄って来て、そうしてクードの膝からふらりと下りたセヴィを抱き締める。
「セヴィ、本当にセヴィだわ。あぁ、綺麗になって……」
「………姉さん………?」
ぎゅうぎゅうと抱き締められて、まだ呆然としたままセヴィが呟く。
「そうよ。ごめんなさいね、ちっとも帰れなくて──。ね、よく顔を見せて」
温かい手にふわりと頬を包まれて、セヴィは懐かしいその顔をようやくきちんと見ることが出来た。
「……っ姉さん……!カーニナ姉さんだわ……姉さんっ、姉さんっ!」
姉さん、しか言えなくなってしまったかのようなセヴィに、その女性──セヴィの一番上の姉であるカーニナもぽろぽろと涙を零しながら微笑んで、そうして二人はしっかりと抱き合った。
背が高くて立派な体躯の雄々しいクードと違って、背は高いけれど細身でスラリとした気品溢れるその男性が、クードとセヴィに向けて優雅に礼をする。
「本日はお越しくださいましてありがとうございます。お待ちしておりました」
「無理を言ってすまなかったな」
「とんでもございません。第一隊長にお越し頂けたとなれば我々には利しかございませんので」
「……どうだかな」
肩を竦めて苦笑を零したクードに、セヴィは約束ってこの方とだったのねと思いつつも小さく首を傾げる。
「第一、隊長……?」
「ん?──あぁ、そうか。我が国の軍はいくつかの隊に分かれていてな。俺は第一部隊の隊長だ」
「……そうだったんですね……隊長さんがたくさんいるなんて、ちっとも知りませんでした」
そう言って恥ずかしそうに頬を染めたセヴィに、クードは気にするなとくしゃりと頭を撫でる。
「あぁ、確かに……。似ておりますね」
黙ってクードとセヴィのやり取りを見ていたらしい目の前の男性にそう微笑まれて、セヴィはまた首を傾げた。
そんなセヴィににこりと柔らかな笑みを返して、男性はこちらへどうぞとクードとセヴィを店の二階へと案内する。
何やら立派な部屋に通されて、少々お待ちくださいとテーブルにお茶とお菓子が並べられる。
セヴィがふかふかすぎるソファに居心地悪そうにもぞもぞと身じろいでいると、クードにひょいと抱き上げられて膝の上に乗せられてしまった。
「あの、さっきの方が戻ってきたら、これはちょっと……」
「問題ない、彼も番のいる狼だ」
「でも……」
扉の方を気にしているセヴィに、クードはその柔らかな頬に掠めるようなキスをした。
「クードさまっ……!?」
真っ赤になったセヴィがこんなところで!とぽかぽかとクードの胸を叩いて、そしてふとその手を止める。
「あの……今日はどうしてこのお店に……?何だかドレスとか、高そうなお洋服ばかりでしたけど……」
「安心しろ。服を買いに来たわけではない」
また何か買うつもりなのかしら、とでも思っていそうな、不安そうな表情で見上げて来るセヴィの頬を撫でながらクードがそう言うと、セヴィは明らかにホッとした様に肩の力を抜いた。
「じゃあ一体どんなご用で……」
セヴィが続けたその時、ノック音に続いて静かに部屋の扉が開いた。
「お待たせいたしました」
そう言いながら入って来たのは先ほどの男性。
そして男性が後ろを振り返って扉を大きく開けたのを見て、セヴィはえ?と瞬いた。
「今日この店を訪ねたのは、セヴィを彼女に会わせるためだ」
クードがそう囁いたのと、男性の後ろからその女性が姿を現したのは、同時だった。
「────!!」
セヴィは息を飲んで、呆然とその女性を見つめる。
女性の方もセヴィを見つめて、そうしてくしゃりと泣き笑いのような表情を見せた。
セヴィと同じクリーム色の髪と垂れ耳に、瞳はセヴィのブルーグレーとは違うブラウン。
記憶より背が低い気がするのは、セヴィが成長したからだろうか──
「セヴィ……!」
女性が駆け寄って来て、そうしてクードの膝からふらりと下りたセヴィを抱き締める。
「セヴィ、本当にセヴィだわ。あぁ、綺麗になって……」
「………姉さん………?」
ぎゅうぎゅうと抱き締められて、まだ呆然としたままセヴィが呟く。
「そうよ。ごめんなさいね、ちっとも帰れなくて──。ね、よく顔を見せて」
温かい手にふわりと頬を包まれて、セヴィは懐かしいその顔をようやくきちんと見ることが出来た。
「……っ姉さん……!カーニナ姉さんだわ……姉さんっ、姉さんっ!」
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