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第二部
05. カーニナからのプレゼント
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「いっ……いいいいいいいらないわ、姉さん!プレゼントなんて、こんなの……!」
「ダメよ。狼族の男性は番と出逢うと舞い上がってしまって他の事になんてちっとも気が付かないんですもの。だからこうして準備してしまえば嫌でも気が付くでしょう?」
「で……でもだからってこんな………!」
「あら、やっぱりこれだとセヴィには少し丈が長いかしら?それともこっちの方が可愛いかしら……うーん、それともあれの方が………あぁ、迷うわね」
「姉さん!!」
❊❊❊❊❊ ✽ ❊❊❊❊❊
ブライドがオーナーを務めるブランシュールは、町の中でも一番の高級衣装店だ。
そんなブランシュールのオーナー宛に軍の第一部隊の隊長であるクードから一通の手紙が届いたのは二十日ほど前。
一体軍から衣装店にどのような用件だろうかと首を傾げながら手紙を開いて、そしてブライドは少なからずショックを受けた。
愛する番の妹がクードの番で、更にはその妹君がちょっとした勘違いとカーニナが里帰り出来ずにいた為に、つい最近まで姉は亡くなったのだと思い込んでいたと知ったからだ。
ブライドはそこでようやく、そういえば少し前に第一部隊長が番を得たらしいと話題になったなと思い出した。
今はセヴィの誤解も解けているが、出来る事ならば一度姉君に会わせてやりたい、と言って来たクードに、ブライドはすぐにカーニナにクードからの手紙を見せた。
一も二も無く「会うわ」と頷いたカーニナと、最初は店を閉めて自宅の方へ来てもらうつもりでいたブライドだったが、カーニナが何か思いついたように「お店の方が良い」と言い出した。
最愛の妻からの要望に否を唱える事などするはずもないし、何よりこの国の軍人の、最近番を得たばかりの第一部隊長が訪れたとあれば結構な宣伝効果が期待出来る──などという商人らしいちょっとした打算もありつつ、ブライドはその日のうちにクードに返事を出した。
そうして何度か手紙をやり取りして、クードの休日に合わせて店を『貸切』という事にして、この日クードには正面から店に入って貰ったのだ。
手紙での『まずは二人切りでゆっくり話をさせてやりたい』というクードからの言葉に、カーニナが「セヴィは良い方の番になれたのね」なんてぽそりと呟いたものだから、その日の晩は久しぶりに少しばかりしつこくしてしまったけれど、おかげでカーニナの可愛い姿を堪能できたし愛の言葉もたくさん貰えたから、僅かに芽生えた嫉妬心はすぐになりを潜めた。
八年近く会っていなかった妹との再会できっと今日はカーニナも興奮しているだろうから、今晩もまた──
などという思考は一切感じさせずにクードと別室で雑談に勤しんでいたブライドは、カーニナとセヴィが部屋から出た事に気付いてクードと共に二人の後を追う。
そして一階の店舗部分へ下りた二人は、そこで姉妹のすったもんだを目撃した。
ドレスコーナーの中でも純白のドレスが並ぶ一角で、カーニナがあれでもないこれでもないとセヴィにドレスをあてて、それにセヴィが全力で拒否を示しているようだが、カーニナは一切セヴィの否の言葉に耳を貸していないようだった。
「あっ!クードさまっ!!」
クードとブライドの姿に気付いたらしいセヴィが助かったとでも言うようにパッと顔を輝かせる。
「クードさまっ姉さんを止めてくださいっ!」
涙目でそう訴えられて、クードは戸惑ったように隣に立っているブライドを見る。
止めろと言われても、一体何が起きているのか、クードにはそこからして皆目見当がついていないのだ。
「こらセヴィ。じっとしていて頂戴」
クードの方へ身体の向きを変えたセヴィをやんわりと自分の方へ向かせ直したカーニナに、セヴィがまたねーさーーんと弱り切った声を上げている。
「すみません、クード様。本日店の方へお越しいただいたのは、こういう訳もございまして……」
「いや、どういう訳なんだか、さっぱり分からないんだが……」
小声での会話ではあったものの、ブライドとクードの声はしっかりとカーニナに届いていたらしい。
カーニナはふぅと溜息を落として「ほらね?」とセヴィに向けて小さく頭を振って見せると、セヴィの身体にあてていたドレスをラックに戻してからクードに視線を向ける。
「クード様。セヴィの姉として、一つお願いがございます」
「──何だ?」
真っすぐに、ともすれば睨んでいるような視線を向けて来たカーニナに、クードは知らず姿勢を正す。
「セヴィと、きちんと御披露目を行って頂きたいのです」
「………披露目」
「ダメよ。狼族の男性は番と出逢うと舞い上がってしまって他の事になんてちっとも気が付かないんですもの。だからこうして準備してしまえば嫌でも気が付くでしょう?」
「で……でもだからってこんな………!」
「あら、やっぱりこれだとセヴィには少し丈が長いかしら?それともこっちの方が可愛いかしら……うーん、それともあれの方が………あぁ、迷うわね」
「姉さん!!」
❊❊❊❊❊ ✽ ❊❊❊❊❊
ブライドがオーナーを務めるブランシュールは、町の中でも一番の高級衣装店だ。
そんなブランシュールのオーナー宛に軍の第一部隊の隊長であるクードから一通の手紙が届いたのは二十日ほど前。
一体軍から衣装店にどのような用件だろうかと首を傾げながら手紙を開いて、そしてブライドは少なからずショックを受けた。
愛する番の妹がクードの番で、更にはその妹君がちょっとした勘違いとカーニナが里帰り出来ずにいた為に、つい最近まで姉は亡くなったのだと思い込んでいたと知ったからだ。
ブライドはそこでようやく、そういえば少し前に第一部隊長が番を得たらしいと話題になったなと思い出した。
今はセヴィの誤解も解けているが、出来る事ならば一度姉君に会わせてやりたい、と言って来たクードに、ブライドはすぐにカーニナにクードからの手紙を見せた。
一も二も無く「会うわ」と頷いたカーニナと、最初は店を閉めて自宅の方へ来てもらうつもりでいたブライドだったが、カーニナが何か思いついたように「お店の方が良い」と言い出した。
最愛の妻からの要望に否を唱える事などするはずもないし、何よりこの国の軍人の、最近番を得たばかりの第一部隊長が訪れたとあれば結構な宣伝効果が期待出来る──などという商人らしいちょっとした打算もありつつ、ブライドはその日のうちにクードに返事を出した。
そうして何度か手紙をやり取りして、クードの休日に合わせて店を『貸切』という事にして、この日クードには正面から店に入って貰ったのだ。
手紙での『まずは二人切りでゆっくり話をさせてやりたい』というクードからの言葉に、カーニナが「セヴィは良い方の番になれたのね」なんてぽそりと呟いたものだから、その日の晩は久しぶりに少しばかりしつこくしてしまったけれど、おかげでカーニナの可愛い姿を堪能できたし愛の言葉もたくさん貰えたから、僅かに芽生えた嫉妬心はすぐになりを潜めた。
八年近く会っていなかった妹との再会できっと今日はカーニナも興奮しているだろうから、今晩もまた──
などという思考は一切感じさせずにクードと別室で雑談に勤しんでいたブライドは、カーニナとセヴィが部屋から出た事に気付いてクードと共に二人の後を追う。
そして一階の店舗部分へ下りた二人は、そこで姉妹のすったもんだを目撃した。
ドレスコーナーの中でも純白のドレスが並ぶ一角で、カーニナがあれでもないこれでもないとセヴィにドレスをあてて、それにセヴィが全力で拒否を示しているようだが、カーニナは一切セヴィの否の言葉に耳を貸していないようだった。
「あっ!クードさまっ!!」
クードとブライドの姿に気付いたらしいセヴィが助かったとでも言うようにパッと顔を輝かせる。
「クードさまっ姉さんを止めてくださいっ!」
涙目でそう訴えられて、クードは戸惑ったように隣に立っているブライドを見る。
止めろと言われても、一体何が起きているのか、クードにはそこからして皆目見当がついていないのだ。
「こらセヴィ。じっとしていて頂戴」
クードの方へ身体の向きを変えたセヴィをやんわりと自分の方へ向かせ直したカーニナに、セヴィがまたねーさーーんと弱り切った声を上げている。
「すみません、クード様。本日店の方へお越しいただいたのは、こういう訳もございまして……」
「いや、どういう訳なんだか、さっぱり分からないんだが……」
小声での会話ではあったものの、ブライドとクードの声はしっかりとカーニナに届いていたらしい。
カーニナはふぅと溜息を落として「ほらね?」とセヴィに向けて小さく頭を振って見せると、セヴィの身体にあてていたドレスをラックに戻してからクードに視線を向ける。
「クード様。セヴィの姉として、一つお願いがございます」
「──何だ?」
真っすぐに、ともすれば睨んでいるような視線を向けて来たカーニナに、クードは知らず姿勢を正す。
「セヴィと、きちんと御披露目を行って頂きたいのです」
「………披露目」
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