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押し倒されてしまったが、顔が良すぎて抵抗できない。

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「……んっ、ちょ、おやめくださいっ」
「なぜ?」

初めての口付けなのに、エリオットの厚い舌で無理矢理に唇をこじ開けられそうになり、私は慌てて胸を叩いて止めた。ファーストキスでディープキス!?急すぎるでしょ!?

「い、いきなりすぎますわ!」

婚姻前はキスもダメ、とまでお堅いことは言わない。けれど、展開が早すぎる。この間までプライベートじゃ手を繋ぐことすらなかったのよ!?舞踏会のダンスで密着したりはしたけど、腕を組んだりもしたけど、人目がない時は一定の距離があったじゃない!

「やっと両親達からもオーケーが出たんだ。もう待ちきれないんだよ」
「両陛下から?何の話ですか?」

目を爛々とぎらつかせるエリオットに怖気付きながらも、私は必死に厚い胸板を押し返す。ひとまず話をさせて欲しい。

「両陛下のご英断だよ。今なら、挙式は可能だろう、とね」
「は!?」

とんでもない発言に目玉が飛び出そうになった。なんて言ったコイツ!
だが、続いた更なる問題発言に、思わず顎が外れかけた。

「なぜなら……僕らの挙式は一ヶ月後に決まったからね!」
「いや、一年後の予定では!?」
「早めたのさ」

そんなことが可能なのか、と呆然としているが、公爵家も王家も、早める分には問題ないと乗り気だったらしい。最近アンナとの熱愛が話題だったかは、エリオットの気が変わる前にと思ったのかもしれない。披露宴は諸外国からの要人も招くから来年のままだが、挙式は国内の行事だから、と。……いや、無茶苦茶だ。

「どうしてそんなら無理を通したのです!?」
「だって、少なくとも君が二人は子を産んでからじゃないと、アンナを後宮に迎えることはできないし」
「……っ」

当然のように続けられたあまりにも心無い言葉に、息を呑んで凍りついた。アンナを早く手元に置きたいからなのかと思うと、胸が焼けるような嫉妬と、視界が真っ暗になるような悲しみに襲われる。
表情を失い、言葉もなく固まっている私に、エリオットはニヤリと笑って、私の耳元に唇を寄せた。

「それに、君はどんどん美しくなるからね。一年後の君だけではなく、今の君も味わわなくては勿体無い」
「……はぁ!?」

唐突に囁かれたいやらしいに、私は真っ赤になって飛び退いた。

「なななっ、なにを!なにを仰っておいでででで!?」
「はははっ、見た目に似合わぬウブな反応だなぁ。良い。非常にそそられる」
「ふふふふふざけないで下さいませっ!」
「ふざけてないさ、むしろ本気で口説いている」
「くどっっっ」

エリオットのせいで感情がジェットコースターで、脳みそがついていけない。
照れている私が愉快なのか、エリオットはさも意地悪そうにニヤつきながら私の肩を抱き寄せる。そして蕩けるように甘い声で、私の頬を撫で、吐息がかかるほど近くで囁いた。

「君、いつも誘うようにちらちらと胸の谷間を見せてくるから、我慢するのが大変だったんだよ。……早くナマで見てみたいって、ずっと思ってたんだ」
「ひぃっ」
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