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婚約は断れませんでした。そんな気はしていました。
「僕と婚約してくれてありがとう」
「…………は?」
王太子様とのお茶会で、なんかしらんナチュラルに庭に誘われて二人きりになり、「あーやべー、なんかフラグの気配がするー!」と思って冷や汗をかいていたら、謎のお礼を言われた。
「で、殿下がなぜお礼を!?」
混乱して慌てる私に、王太子は苦笑しチラリと周囲を見渡した。護衛騎士と侍女たちが立っているが、小声なら聞こえないだろう距離だ。
「……私は、立場が弱いからね」
「え?」
「私の母は、もう天の国にいらっしゃるからね」
そういえば、先代王妃は数年前に亡くなっていた、と思い当たり、私は神妙な顔で王太子の顔を見た。
「僕は、隣国の王女である母と、父上のもとに生まれた第一王子で、何の微瑕もない正当な血筋だ。とは言え、ちょっと後ろ盾が弱いんだよ。……でも君の家が婚約者として後見を名乗り出てくれたおかげで、陛下は安心して僕を王太子に指名できたんだよ。だから、ありがとう」
「は、はぁ……」
てことは、立太子より前から婚約が調っていたのでは?
父上、私の希望通りに、素敵な王子様見つけてきたからねぇ~とか言ってたくせに!
「そ、それは……ようございました……?」
何と言えば良いかわからず適当な返事をする私に、王太子はクスッと吹き出す。気さくな笑みで私を見て「うん、良かったよ」と目を細めた。
「君も、気性が荒そう……じゃなくて、気が強そうだって噂を聞いていたけれど、どうやら優しくて良い子みたいだし」
気性が荒いを気が強いって言い換えたな?どっちも貴族令嬢に対しては結構悪口だぞ?
内心でいろいろと葛藤しすぎて、微妙な表情になりつつも、私はとりあえず「ありがとうございます」と言った。御礼言っときゃいいだろ、たぶん。
全然王太子様に媚びもせず、おもねることもせず、ただ微妙な顔をしているだけの私を観察して、王太子様はなぜかしら楽しげに言った。
「君とは仲良くできそうだ」
「えっ!?」
驚愕の発言に脳内がクルクルとフル回転で空回る。
婚約しないと言うのは、どうやら政治的に無理そうだし、それなら王太子との仲は良い方がよい。嫌われるのは良くないフラグだろう。後々に敵認定されにくくなるたろうから。
そこまで考えて、どう返事するのが最適か迷い、そして。
「…………ありがとうございます」
とりあえず御礼を言った。やばいな。とりあえず「すみません」って言うパターンに似てる。私超日本人だな。
現実逃避気味に、私はそう思った。
動揺を隠せず、庭の花の蜜でも吸って落ち着こうかと辺りを回したところで、我が家の分家出身で馴染みの顔の近衛騎士と目があった。挙動不審な私を胡散臭そうに、というか、頭が痛そうな顔で眺めている。
「…………殿下、どうやらご令嬢は、お疲れのご様子です。テーブルに戻られて、ジュースでもお飲みになっては」
「おや、気付かなくて申し訳なかった。どうなさいますか?」
「い、頂きますわ」
あなた何やってるんですか、と言わんばかりの視線を騎士から浴びながら、私はそっと俯いて目を逸らす。危うかった、王太子の前で花をむしって蜜を吸うなんて暴挙に出なくて済んだ。狂人扱いされるところだった。
「ところで、君の兄上はたいそう優秀だと聞く。学園では同学年になるから、よろしく伝えておいてくれるかい?」
「あ、はい」
帰り際にサラリと告げられた一言に、学園の存在を思い出して憂鬱になる。
そっかー、学園かぁー、十四歳で入学だから意外ともうすぐなのかー。やばいな。
「では、また会える日を楽しみにしているよ」
「はい、私も楽しみにしております。それでは御前失礼いたしますわ」
心にもないことを言ってニッコリと淑女の微笑みを浮かべる。そして完璧なカーテシーを決めてみせた。
ほぅ……
なんてため息がどこからともなく聞こえる。
完璧令嬢の名は伊達じゃないらしい
とかって失礼な呟きも聞こえたけれど、聞かなかったことしてあげる。どうやら私の身内の安堵の声だったからね。
「では殿下、ご機嫌よう」
終わり良ければ全て良しって言うでしょ。最後だけ決めれば良いのよ!
ま、殿下は何とも言えない顔をしていたけどね。色々ダダ漏れした後だからなぁ、仕方ないよね。
「……にしても、わりと時間ないなぁ」
帰宅して自室で部屋着に着替えて、やっと一人になれたら、思わず呟きが漏れた。
あと二、三年でなんとかフラグを折っておかなきゃならないのか。でも何がフラグなのか全然分かんないんだよなぁ……。
「はぁああ……しんどー!!マジで創作者、私に設定盛りすぎっ!」
自室で枕に顔を押し付けて叫ぶ。叫んで解消するくらいしかストレス発散の方法がない。
「あーもー!」
とりあえずこの状況、悪役令嬢確定、……だよねぇ!?
セカンドライフ、多分かなりハードモードじゃん!
はぁ、つらッ!
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よろしくおねがいします。