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銀髪の義弟が出来ました。絶対こいつも攻略キャラです。
しかし人生とは非情なものである。
その後も切なる願いとは裏腹に、私は着々とフラグを乱立させていった。
「は?引き取る?」
もじもじしている父の言葉に、私はあんぐりと口を開け…………すぐに閉じた。淑女なので。
「あぁ、十五年前に出入りの庭師と駆け落ちした末妹を、私が探していたのは知っているだろう?」
「はい、父上の書斎に飾ってある、綺麗な女の子ですよね?」
知っている。我が家の家族の肖像画の横に堂々と飾ってある、美少女だ。家族五人の絵と女の子一人の絵が同じサイズなので、書斎の中でもわりと目立っている。
「あぁ、……それが、流行病で昨冬に亡くなってたらしいんだ」
「それは……」
父の悲しげな顔に、私は言葉に詰まって俯く。どこかで元気にしているのと、死んでいるのとでは気分が違う。一度も会ったことはないが、私の叔母が知らぬ間に天の国の人になっていたということに、私も思うところはあった。つまり普通に可哀想だなと思ったのだ。平民じゃあ受けられる医療の質も低いだろうからなぁ。
だが、感傷的な気分もそこそこに、父が続けた言葉に呆気に取られた。
「その忘れ形見がね、孤児院にいると聞いて会いに行ったんだ。そうしたら、もうほんとうに妹にそっくりで、泣けてしまってねぇ。……そのまま引き取ってきた。いま馬車の中で待ってる」
「は?」
いやだがさすがに唐突すぎん?
テヘペロ顔しているが、お父様の独断により我が家は急展開よ?
唖然として言葉もない私の左右から、二つの大きなため息が聞こえた。
「行動早いですね、父上。母上の了承へとったのですか?」
うんざり顔の兄がジト目で父を睨んでいる。まだ十二歳のくせに、眼鏡の縁をクイッとやってて、クールなインテリ感を出しながらだ。うざいが似合う。きょうだいの中でも正統派美形だからなぁ兄様。
「父上がシスコンじゃないかって、陰ではかなり心配しておりましたよ」
ぶっちゃけた発言で兄を支援するのは、無垢な天使のような顔をしてわりと口が悪い弟だ。反抗期丸出しのトゲトゲツンツンな態度で、父をいつも嘆かせている。天使みたいな容姿だから余計に攻撃力が強いのだ。
「息子たちよ、君たちは本当にハッキリ言うね。もう少し私のこの悲しみとかを察して、なんというかこう」
思いやりがない寄り添いが足りないと嘆く父に、男二人は白けた目を向けている。男は男に厳しいのだ。
「僕らは家を捨てた叔母上より、政略結婚で嫁いで意地の悪いお婆様にいじめられながらも僕らを育ててくれて、今もしっかり家を守って奮闘している母上が大事です。叔母上のことは残念ですし心中お察ししますが、父上はもう少し母上を大切にして下さい。態度と言葉で」
「…………はい」
だがまぁ私も本心では、それは思う。父にはやはり母を第一で動いて欲しい。それが夫婦ってもんだろ。
「歳の離れた妹を昔から溺愛していたから、嫁ぐ前に駆け落ちしてくれてちょっと安心したって言ってました」
「えっそうなの!?それは誤解だよ!僕が女性として愛しているのはエリザベスだけだよ!」
慌てて弁明する父は、子供達の前ではわりと愛妻家というか、かなり強火の妻オタだ。妻からもらったプレゼントは劣化しないようにと、国宝級の宝物にかけるような高度な魔法を重ねがけして金庫に保管している。本人が国宝に魔法かけてる人だから出来る荒技だ。千年後に買った我が家の跡地からは、母と父の愛の軌跡が発掘されてしまうのだろう。
「それは母上に直接言ってください」
「そんな恥ずかしい……!」
「子供たちの前で宣言しといて何言ってるんですか」
私はアホなことを考えながらぼんやり父と兄弟の攻防を眺めていたが、話が進まないので嫌々ながら首を挟んだ。間違えた口を挟んだ。嫌だよまだギロチンされたくないよ。
「……あの!兄上!父上!話が脱線していますっ!馬車でその子が待っているのでしょう!?今更孤児院に返すわけにもいかないので!父上は早く、母上に説明に行ってください!」
耐えかねたように私が言うと、父は「……そうだね」と言って緊張した面持ちで母のところに向かった。
子供相手に馬鹿なこと言ってないで、さっさとこの家の女主人の了承を取ってきてほしい。
まぁ、優しい母上がノーと言うとは思えないけども。
引き取るのは父上でも育てるのは母上だからな。
さっさと筋を通せ、父よ。
「私は馬車に行ってきます」
腹を括って、私は宣言した。
この流れ、前世のネット小説とかでよく見たパターンなのだ。引き取られた娘に、幼き悪役令嬢が嫌がらせをするところから色々始まったりする。こう言うのは、やはり初対面の時の印象が大切だろう。
「僕も行くよ」
「姉様、もちろん僕も行く!」
「では三人で参りましょう。その子もきっと、さぞや心細く緊張しているでしょうから」
慌てて同意を示した兄と弟の無駄にきらきらしい顔面を引き連れて、私は意を決して玄関に向かった。
そして。
「……うわぁ、美形」
馬車から降りてきた子を見て呟いた。
ふと横を振り向いて、私は思わず両眉を上げる。うそぉん。
「キャラ被りじゃん」
現れたのは、銀髪の天使とでも言おうか。
さすが従兄弟というべきか、弟と色素が対のような、これまたとんでもない美『少年』だった。そう、つまり、この子はヒロインじゃない。この子……。
「……また攻略対象じゃん、こんな顔」
その場に崩れ落ちてしまいたい気持ちを堪え、私は優しく「いらっしゃい」と微笑んだ。
心細そうにしていた少年がほっと安堵の息を吐き、花開くような笑みを返してくれた。うん、美形。圧倒的な美形。これは確実に攻略対象ですな!
「いやぁ、さすがに私身の回りに攻略対象多すぎない?」
私は少年を歓待する笑顔を浮かべつつ、心で泣いた。
「もしや私、一人で全ルートの悪役令嬢やるの!?」
その後も切なる願いとは裏腹に、私は着々とフラグを乱立させていった。
「は?引き取る?」
もじもじしている父の言葉に、私はあんぐりと口を開け…………すぐに閉じた。淑女なので。
「あぁ、十五年前に出入りの庭師と駆け落ちした末妹を、私が探していたのは知っているだろう?」
「はい、父上の書斎に飾ってある、綺麗な女の子ですよね?」
知っている。我が家の家族の肖像画の横に堂々と飾ってある、美少女だ。家族五人の絵と女の子一人の絵が同じサイズなので、書斎の中でもわりと目立っている。
「あぁ、……それが、流行病で昨冬に亡くなってたらしいんだ」
「それは……」
父の悲しげな顔に、私は言葉に詰まって俯く。どこかで元気にしているのと、死んでいるのとでは気分が違う。一度も会ったことはないが、私の叔母が知らぬ間に天の国の人になっていたということに、私も思うところはあった。つまり普通に可哀想だなと思ったのだ。平民じゃあ受けられる医療の質も低いだろうからなぁ。
だが、感傷的な気分もそこそこに、父が続けた言葉に呆気に取られた。
「その忘れ形見がね、孤児院にいると聞いて会いに行ったんだ。そうしたら、もうほんとうに妹にそっくりで、泣けてしまってねぇ。……そのまま引き取ってきた。いま馬車の中で待ってる」
「は?」
いやだがさすがに唐突すぎん?
テヘペロ顔しているが、お父様の独断により我が家は急展開よ?
唖然として言葉もない私の左右から、二つの大きなため息が聞こえた。
「行動早いですね、父上。母上の了承へとったのですか?」
うんざり顔の兄がジト目で父を睨んでいる。まだ十二歳のくせに、眼鏡の縁をクイッとやってて、クールなインテリ感を出しながらだ。うざいが似合う。きょうだいの中でも正統派美形だからなぁ兄様。
「父上がシスコンじゃないかって、陰ではかなり心配しておりましたよ」
ぶっちゃけた発言で兄を支援するのは、無垢な天使のような顔をしてわりと口が悪い弟だ。反抗期丸出しのトゲトゲツンツンな態度で、父をいつも嘆かせている。天使みたいな容姿だから余計に攻撃力が強いのだ。
「息子たちよ、君たちは本当にハッキリ言うね。もう少し私のこの悲しみとかを察して、なんというかこう」
思いやりがない寄り添いが足りないと嘆く父に、男二人は白けた目を向けている。男は男に厳しいのだ。
「僕らは家を捨てた叔母上より、政略結婚で嫁いで意地の悪いお婆様にいじめられながらも僕らを育ててくれて、今もしっかり家を守って奮闘している母上が大事です。叔母上のことは残念ですし心中お察ししますが、父上はもう少し母上を大切にして下さい。態度と言葉で」
「…………はい」
だがまぁ私も本心では、それは思う。父にはやはり母を第一で動いて欲しい。それが夫婦ってもんだろ。
「歳の離れた妹を昔から溺愛していたから、嫁ぐ前に駆け落ちしてくれてちょっと安心したって言ってました」
「えっそうなの!?それは誤解だよ!僕が女性として愛しているのはエリザベスだけだよ!」
慌てて弁明する父は、子供達の前ではわりと愛妻家というか、かなり強火の妻オタだ。妻からもらったプレゼントは劣化しないようにと、国宝級の宝物にかけるような高度な魔法を重ねがけして金庫に保管している。本人が国宝に魔法かけてる人だから出来る荒技だ。千年後に買った我が家の跡地からは、母と父の愛の軌跡が発掘されてしまうのだろう。
「それは母上に直接言ってください」
「そんな恥ずかしい……!」
「子供たちの前で宣言しといて何言ってるんですか」
私はアホなことを考えながらぼんやり父と兄弟の攻防を眺めていたが、話が進まないので嫌々ながら首を挟んだ。間違えた口を挟んだ。嫌だよまだギロチンされたくないよ。
「……あの!兄上!父上!話が脱線していますっ!馬車でその子が待っているのでしょう!?今更孤児院に返すわけにもいかないので!父上は早く、母上に説明に行ってください!」
耐えかねたように私が言うと、父は「……そうだね」と言って緊張した面持ちで母のところに向かった。
子供相手に馬鹿なこと言ってないで、さっさとこの家の女主人の了承を取ってきてほしい。
まぁ、優しい母上がノーと言うとは思えないけども。
引き取るのは父上でも育てるのは母上だからな。
さっさと筋を通せ、父よ。
「私は馬車に行ってきます」
腹を括って、私は宣言した。
この流れ、前世のネット小説とかでよく見たパターンなのだ。引き取られた娘に、幼き悪役令嬢が嫌がらせをするところから色々始まったりする。こう言うのは、やはり初対面の時の印象が大切だろう。
「僕も行くよ」
「姉様、もちろん僕も行く!」
「では三人で参りましょう。その子もきっと、さぞや心細く緊張しているでしょうから」
慌てて同意を示した兄と弟の無駄にきらきらしい顔面を引き連れて、私は意を決して玄関に向かった。
そして。
「……うわぁ、美形」
馬車から降りてきた子を見て呟いた。
ふと横を振り向いて、私は思わず両眉を上げる。うそぉん。
「キャラ被りじゃん」
現れたのは、銀髪の天使とでも言おうか。
さすが従兄弟というべきか、弟と色素が対のような、これまたとんでもない美『少年』だった。そう、つまり、この子はヒロインじゃない。この子……。
「……また攻略対象じゃん、こんな顔」
その場に崩れ落ちてしまいたい気持ちを堪え、私は優しく「いらっしゃい」と微笑んだ。
心細そうにしていた少年がほっと安堵の息を吐き、花開くような笑みを返してくれた。うん、美形。圧倒的な美形。これは確実に攻略対象ですな!
「いやぁ、さすがに私身の回りに攻略対象多すぎない?」
私は少年を歓待する笑顔を浮かべつつ、心で泣いた。
「もしや私、一人で全ルートの悪役令嬢やるの!?」
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