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第10話:メルナ村
ロナを仲間に加え、下山しようとした俺達だったが、テンロウから『もうじき完全に日が沈む。山に慣れて居ないのであれば無理して下山するのは危険じゃ。一晩泊まって行くといい。』と言われ、せっかくだからと好意に甘えて一泊する事にした。
改めてシーラとロナ両方を紹介し合い、山狼族にも挨拶をする。
焚き火を囲み、みんなで色々と語り合った。
俺とシーラがこの山に来た理由や、ロナの隠れ方があまりにもバレバレな事など、本当に色々と。
その中でも一番長く話す事になったのは俺の実力についてだった。どこでそんな力を身に付けたのか?とか、どこぞの国の王族やその末裔なんじゃないか?とか。
テキトーに誤魔化しておいたが如何せん隠しきるのにも疲れてきた。
もう面倒臭いから、俺ちゃん実は竜でしたぁ~!みたいな感じでネタバレしてやろうかなって思ったくらい。
そんなこんなで俺達は楽しい夜を過ごしたのであった。
朝になり俺達3人は、テンロウと山狼族に挨拶を済ませ、大狼山を下山し始めた。
ロナはぎこちないながらも必死に歩幅を合わせて着いて来ている。
そのロナを見てるとつい思ってしまう事があった。
久々の一族団欒だったのに、本当に着いてきて良かったんだろうかと。
仲直りしたんだし、そのまま山に残る事も出来ただろう。
わざわざ危険を犯してまで俺たちに着いて来なくても、テンロウから戦い方を学んでから旅立つという手もあったのだ。
何となく家族を引き離してしまったような気がして、罪悪感に襲われていたのだった。
少しの間、悩み考えていたアレンだったが。
いや、彼女の決断を尊重すると決めたんだ。やっぱり残らなくて大丈夫だったのか?なんて、今更聞くのは野暮ってもんだろう。
ロナが成長した姿を、いつかテンロウと山狼族に見せることを目標に、一先ず頑張ってみようかと思う。
それが預かった者としてのやるべき事ってやつなんだろう。
よし!何かやる気出てきたぞ!!自己満かもしれないけど満たされてるな!俺!
そんな事を考えている間に、視界下部にメルナ村が入ってきた。
麓の森を少し進んだ先にあるから、あと1時間半もすれば着くだろう。
─────メルナ村
「「あーーー!!疲れたぁー!!」」
メルナ村の入り口に辿り着いた瞬間、俺とシーラの声が、完璧なタイミングで見事にハモった。
太陽はすっかり真上に昇っている。
気温的には31℃ってところだろう。
人間の身体って結構不便というか、苦労するというか。疲労がすぐ溜まるな。
ちょっとだけ人間を見直したアレンであった。
肩で息をしていた俺だったが横に目をやると、ロナは全く疲れた様子もなく、むしろ目をキラキラさせて村の様子を観察していた。
「ロナ、お前平気なのか?」
「うむ! わっちは山育ちなのだ! このくらい、なんともないぞ!」
「流石山育ちだな。俺たちの方がよっぽど疲労困憊だぜ...」
シーラも呆れたように息をつく。
「はぁはぁ...本当にそうよ。ロナ、あなたって体力あるのね。私もちょっと疲れすぎたわ...山を回り込んで進むルートにすれば良かったかしら」
「えーっと、どこかの公爵家のお嬢様が遠回りは嫌だって言ってたような記憶が......」
「うるさいわね! それより、早く依頼者を探すわよ!」
相変わらずの雌火竜ツッコミを聞きながら、俺たちは村の中心へと足を踏み入れた。メルナ村は、古くからある村で、決して大きくはないが、活気があってそこそこ人は多い。
広場には露店が出ており、買い物を楽しんでいる人が大勢居た。
「とりあえず、村長の家を探すか。あのー、すみません!この村の村長の家の場所って分かりますか?」
露店のおばちゃんに声をかけると、おばちゃんはニコニコしながら答えてくれた。
「あら!あんた達、冒険者かい? 村長さんの家なら、あの大きな木の裏手だよ! にしても丁度いいタイミングで来てくれたもんだよ! 最近ゴブリンの被害が酷いもんでさぁ。やっと希望が見い出せたってもんだねぇ」
おばちゃんに礼を言って俺達は村長の家に向かった。
「露店のおばちゃんが言ってた大きな木の裏手にある家ってここだよな?」
俺が確認するかのようにそう言うと、緊張した面持ちで、シーラが扉をノックする。
「こんにちは、冒険者ギルドから参りました」
ノックに応えて出てきたのは、少し白髪の混じった、人の良さそうな村長だった。しかし、その目には深い疲労と悲しみが滲んでいる。
「おお、来てくださったか! ありがとう!さあ、どうぞ中へ」
俺たちは村長に招き入れられ、家の中へ入った。
家の中は静まり返っており、どこか物々しい雰囲気を感じた。
「ゴブリンの巣の殲滅という依頼書を見てきました、冒険者のアレンです」
俺が挨拶をすると、シーラとロナも後に続いて挨拶を済ます。
「改めて、依頼の内容を詳しく教えていただけませんか?」
俺が村長に尋ねると、村長は震える声で話し始めた。
「実はな…村から東の方に、大きな森があるじゃろう? その奥に、いつの頃からか洞窟ができておってな。どうやら、そこにゴブリンが巣を作ったらしい。それからしばらくゴブリンどもは家畜を狙って度々この村を襲撃して来てたんじゃが....ここ最近、家畜の被害が全くなくなったのじゃ。その代わりというべきか、ゴブリンどもの狙いは人へと向けられるようになった。特に女性と、幼い子どもだけをさらっていくように」
「まさか...食べるため?」
シーラが恐る恐る尋ねると、村長は悔しそうに拳を握りしめた。
「そうじゃ! 男は肉が硬くて不味いのか、なぶり殺しにされ。やつらは村の女性や子ども達をさらっていったんじゃ!!」
村長の口から出た話は、あまりにも残酷だった。
「...そして、五日前の夜。私の娘と、その娘の幼い子ども、つまり私の孫も連れ去られてしまったんじゃ...」
村長は嗚咽を漏らし、頭を下げた。
「どうか、どうか頼む! 一刻も早く、ゴブリンを殲滅し、もし生きている者がいたら、助け出してやってほしい...!」
強く握りしめていた村長の拳からは、爪がくい込んでいるのか血が滴り落ちている。
村の者だけではなく、愛する家族もさらわれ、それでも助けに行く事が出来ない自分の非力さが、悔しくてたまらないんだろうな。
家族愛というものに俺たち竜族は縁がない。
それでも、身近に居る親しい者を守れない悔しさというものは、何となくわかる気がした。
「承知しました。もう、一刻の猶予もないですね」
俺はそう言うと、立ち上がった。シーラも力強く頷く。
「私たちに任せてください。すぐに討伐に向かいます!」
俺たちは村長に洞窟の場所を確認し、すぐさま村を出た。
シーラは顔から表情が消え、怒りに燃えている。
しばらく森を進んでいると、横を歩いていたロナが突然何かに反応する。
「...っ! この先なのだ。 血の匂いがするのだ!」
ロナはそう言うと、まるで獲物を追う狼のように、細い獣道を走り出した。
「おい、ロナ! 待て!」
「さすが山狼族ね! アレン、私たちも急ぐわよ!」
俺たちはロナの後を追って走り出した。
木々が途切れ、岩肌に空いた大きな口のような洞窟が見えた瞬間。
「きゃぁあ!!!」
「ヴォォォォオオオオオ゛!!!」
洞窟の奥から、女性の短い悲鳴と、獣のようなけたたましい叫び声が響き渡ってきた。
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