長瀬萬請負 其の四 〜嘗ての友〜

岡倉弘毅

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勝子

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 夕方過ぎ、悦子から聞いていた姉、勝子の仕事場に向かった。

 髪を帽子に押し込んで、物陰に潜んで、勝子らしき婦人が出てくるのを待った。

 悦子から、勝子とはよく似ていると聞いていたので、すんなりと見つけることはできた。

 幸いひとりきりで出て来たので、少し離れた場所で名乗り、悦子と相馬有朋の件で。と申し出た。

「申し訳ありませんが、会社の人に見られると困りますので」

 尤もである。

 勝子の言う通り、離れた場所にあるカフェに別々に入り、一番奥の目立たぬ席に着いた。

「大変申し訳ありません」

 隼人は名刺を差し出し、自分の身分を示した。

 勝子も悦子同様、可愛らしい感じの美人であった。が、やはり年齢の差が雰囲気に現れていた。

 勝子は落ち着きがあり、良い意味で年を重ねた、悦子にはない魅力があった。

「どういったご用件でしょう?」

「本来、依頼を姉様とは言え、他の人に漏らすのはご法度なのですが、困ったことになりまして……」

「駆け落ちの件ですか?」

 勝子の声は冷たかった。

「それは……」

「妹が出て行った後で、私が読ませるように書いておいたのでしょうが、片づけておかないから……つい、読んでしまいました。

 結局、裏切られたのでしょう? あんな軽薄な男、別れろと言ったのに、子供まで……」

 隼人は胸を撫で下ろした。

 妊娠を隠しているのでは……と考え、探りを入れる必要性を感じていたからである。

「それでも、別れてくれたなら私は満足です。生まれてくる子供も、妹と共に私が支えていきますし、もし、妹に縁談が持ち上がった時の為に、私の子供として戸籍にと考えてもおりますから」

 どうやら、悦子の考えは大変な思い違いのようである。勝子は決して、悦子に嫉妬して結婚を妨げているのではないらしい。

「それが、裏切ったわけではなく……妹さんはまだ、妊娠初期ですよね? そんな人に申し上げるのは危険かと思いまして……。

 実は相馬有朋と名乗る男は、殺されました」

 勝子は視線だけを隼人に向けた。

「名乗る男?」

「はい。

 実は相馬有朋と名乗る男が、結婚詐欺を働いておりまして……。

 何人かのご婦人の依頼を受けて探しました処、四日前に殺されていたことが判明しまして。

 ただ、妹さんに対しては本気であったらしく……」

「騙されていた方が良かった。どうせ取られるような財産はないのですからね」
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